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草ぶねのようにまちを歩く

「君の膵臓を食べたい」に登場する主人公の男子高校生は何度も、
“僕は草ぶね”
と心のなかでつぶやく。
天真爛漫なヒロインに振り回されてばっかりの自分を揶揄しての表現かもしれないが、僕には、それが楽しそうに思えた。
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去年の11月に、3泊4日で玉野市は宇野に行っていた。
宇野に行くということだけ決めて宿をとり、それ以外はノープラン。
行き当たりばったりの一人旅だった。

僕が頼りにしていたのは、宇野で出会うであろう多くの地元の方々だった。
結果的に、これは大成功だった。

1つのお店に違うお店の商品が置いてあったり、
お店の人が、「あの〇〇というお店がおすすめだよ」と紹介してくれたり。
目的地を定めていなくとも、出会う人たちからのアドバイスを頼りに、まちを探索できるのは楽しかった。
観光MAPやネットで調べるのもいいのだけど、会話しながら紹介してもらうほうがなんか気になる度合いが増す。
やっぱり、オフィシャルで掲載するとなると、かしこまった紹介をせざるを得ないし、Webサイトや記事でもなるべく有益な情報を無駄なく発信することに重きが置かれるし。
でも、そこにのらないような、店主の人柄やお店の癖、紹介主とのエピソードがまち歩きには必要なスパイスで、それがあるおかげで、「行ってみよう!」となる気がする。

これは、まちで生業をしている方々同士がつながっている利点のひとつなんだろう。
不思議なのは、地元の人のおすすめは、どんな場所であっても行ってみたくなること。
そして、紹介先に行った時には、「〇〇というお店の〇〇さんに教えてもらって〜」と話しかけることもできるし、旅人とお店・まちとの心理的な距離がグッと縮まるのだ。

まちに住む人々がお互いのことを知っていると、外から来た人がまちを巡るきっかけができる。

会話での紹介以外にも、お互いのお店に、お互いの商品やパンフレットが置いてあってもいい。
もし、観光客にまち歩きをしてもらいたいとなったのなら、
各店に、他のお店のものを置けるような居候スペースをつくってもいいと思う。
もちろん、こうした取り組みは、市役所や観光案内所でもできることなんだけど、各個人店で実施することに大きな意義があるような気がする。
予期していない出会いや発見は、外から訪れる者にとってワクワクするものだし、これぞ旅の醍醐味だと思うからだ。

全然別角度の話なんだけど、まちの中に自分のことを知っていて紹介してくれる存在がたくさんいるってのも嬉しい気がする。
「ちゃんと居場所あるなあ」
って。

改めて振り返ると、今回の旅は草ぶね極まりないものだった、笑
また機を見て、流れてみようと思う。



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