ハイシャー
16年ぶりに歯医者へ通っている。
高校3年以来だ。
16年ぶりとなると歯医者とはどんなところか記憶がほぼない。
久々に見た歯医者の椅子はほぼロボットのコクピットの操縦席だ。
あの椅子に座らされ、治療を待たされると少し恥ずかしい。
まもなく出動のロボット操縦士。管制塔からの指令を待つ木﨑。
あるいは出動と出動の間、昼休憩をコクピットでとるタイプの操縦士。
お疲れ様でーす。あれ?木﨑さんは?
あ、今日はコクピットで休んではるんじゃないかな?
まいどー!中央軒です。出前もってまいりましたー!
あ、すいません。コクピットの方ですわ。
了解です!失礼しましたー。
みたいな事を考えてると、治療が始まる。
歯を綺麗にクリーニングし、椅子のリクライニングが戻り、口をゆすぐ。
昼休憩の終わりだ。
まだ、出動の要請はない。
窓の外に広がるオフィス街にこのロボットが繰り出すことはない。
先日、型をとったマウスピースが出来上がる。
試着してみる。
ぴったりだ。
どんな戦いであろうと、あらゆる衝撃に耐えられる準備が出来た。
しかし、街に出動することはない。
博士(医師)の指示で操縦席からおろされる。
街は平和なようだ。
研究室(歯医者)を出ると
街の人々の顔には
白い歯がこぼれていた。
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