見出し画像

自分の強みをどう伸ばすか:凡人のための戦略的自己成長論

私のことをエリートと勘違いする方がいますが、九州の片田舎の公立中学校で内申点がオール3、高校で英検2級に落ち、大学のTOEICは400点というザ・凡人です。

アメリカのトップスクールや国際機関を目指すことになったのは大人になってからで、戦略的にならざるをえない状況でした。ライバルはみな中学生の頃から偏差値表のトップにいるような人たちや帰国子女ばかりでした。

戦略的な成長とは、自分の全ての能力を伸ばせない中で、どこかを優先的に伸ばすという問題です。例えば周りが英語をがんばる中で、自分は中国語にかけるというような話です。

この記事は、私の半生から学んだ戦略的自己成長におけるいくつかの原則と戦略です。私と同じように、己の平凡さから何かを諦めそうなあなたに届けばと思って書いております。


やりたいことが見つかったとき、手が届く場所にいるには #4
このシリーズでは、さまざまな国と仕事を転々としてきた経験をもとに、上記テーマを主観的に語っています




原則1. 競合よりも相対的に優位でさえあればよい


強みや弱みというのは相対的なものです。あなたのExcelスキルが世界で一番でなくとも、あなたのチームでは一番かもしれません。あなたのマーケットの外にいる、見えぬ強豪を心配する必要はありません。

私のコンサルティングスキルはコンサル業界においては平凡ですが、JICAで仕事をしたときは独自に途上国の分析やプレゼン作りで評価されました。

重要なのは、あなたの競合が誰であるかを正しく認識することです。就職や転職であれば、あなたの競合はすでにその業界にいる優秀な方々ではなく、その企業に転職しようとしている人たちです。彼らより少し秀でているものをアピールできればよいのです。

あなたの強みが世界で一番である必要はありません。

原則2. 強みの価値は需給で決まる


強みの価値は労働市場における需給メカニズムで決まります。

例えば、MBAは役に立たないと揶揄されることもありますが、トップスクールのMBAホルダーの市場価値は非常に高いです。市場価値が高いとは、企業が高い給料を出してでも採用したがるということです。

海外のビジネススクールに入るには、立派な学力や語学力、職務経験、組織で評価された証拠(推薦状)などが必要になります。このような実力が企業には魅力的な一方で、現在の日本にはそのような人材が少ないのです。

重要なのは、市場で求められる能力を伸ばさなければ価値がないということです。もちろん道徳や倫理的な話ではなく、経済的な価値の話です。もしあなたがこれから進路を選ぶ状況にあるなら、市場で評価されそうな選択肢はどれでしょうか。

ここについては"Where to Play, How to Win?"という戦略論の視点から表現したエッセイもよろしければご覧ください。

原則3. 弱みよりも強みを伸ばす方が簡単


好きこそ物の上手なれ」という言葉は真であると感じます。苦手なことの克服には努力を伴いますが、得意なことを伸ばすのは楽しいです。マッキンゼーでも強みを伸ばすことが推奨されていました。

私はExcelが好きで、作業に没頭できるので夜中までやっても苦ではありません。それを続けていたら、Excelの扱いにおいてはコンサルティングファームの中でも一目おかれるようになっていました。

もし弱みが原因で強みを発揮できないのであれば、その弱みは克服すべきです。例えば私は論理的な議論が好きですが、海外の仕事でそれを発揮するには苦手な英語を克服する必要がありました。

私は大学生になってから真剣に英語を勉強しはじめ、海外でも英語でやっていけると感じるようになったのは35歳、社会人留学中のときでした。10年以上を英語の勉強に費やしました。苦手の克服には本当に時間がかかります。

原則4. 経験と実績だけがファクト


最後は転職などにおいて重要な原則です。

あなたと一緒に仕事をしたことがない人は、あなたの強みをあなたの経験と実績でしか評価できません。あなたの能力や性格は直接的には評価されません。

評価されないというのは「どうでもいい」という意味ではありません。企業に評価する術がないのです。現在の日本では採用時に能力をテストできる企業は少なく、経験だけを確認します。

たとえばExcelでモデルを作った経験があるかを聞いても、モデル作りに何分かかるかを実際に測る企業は稀です。
※一部の外資系企業はこのようなテストを行います

第三者にとっては経験と実績のみがファクトです。あなたは強みを経験と実績で証明する必要があります。将来、他者に強みを伝えるためには、それを証明できるような経験と実績を作ることを意識することが大切です。

これから就職活動を迎える学生がもしこれを読まれていたら一つTipsをお伝えします。エントリーシートに何を自分の強みとして書くか迷ったら、まずは具体的に話せるエピソードを挙げてみてください。そしてそのエピソードからどのような能力を強みとして説明できるか考えてみてください。

例えば合宿の幹事をこなした話であれば計画性の高さを強みとアピールできるかもしれません。逆に、強みを先に決めて、その根拠を探しても説得力のある説明は作りづらいです。



ここからは、これらの原則に私個人の経験則を足して、私のような平凡スペックがとりうるいくつかの戦略を講じてみます。

戦略1. ユニークネスを磨く


「ナンバーワンよりオンリーワン」は個性や人間性の話でなく、強みの源泉となる経験についても大切な考え方です。

一つの分野を極めて一番を目指す方法もありますが、その分野で一番になれるのは一人だけです。しかし、複数の領域で経験を重ねれば、その掛け算の数だけオンリーワンは存在できます。あなたと同じ経験の組み合わせを持つ人が他にいなければ、あなたの存在は唯一無二です。

私はよく講演や講義に招いていただきますが、それは私のバックグランドがユニークだからです。イラクで防弾チョッキを着て、ベトナムでラーメン屋を作り、アメリカの国際機関で仕事をした日本人は後にも先にも私だけでしょう。

薄っぺらい私の話よりも、グローバルファンドの馬渕俊介さんが東大の入学式で送られた祝辞が大変参考になります。馬渕さんは非の打ち所のないエリート経歴ですが、考え方、生き方は私のような凡人にも大変参考になります。

余談ですが、実は私は彼との出会いからコンサル業界に入ることになりまして、以降、彼をロールモデルの一人とさせていただいております。

戦略2. 特定の領域でトップを目指す


範囲を特定の国の特定の産業の特定のトピックというように狭めれば、その領域で世界一になるというのは意外と難しくありません。企業戦略論でいえばニッチ戦略です。

例えば、途上国開発の業界でも、イラクの電力セクターにおける政府関係者の力関係について語れる人は世界に数人しかいません。

大学で論文を書いた経験のある方ならこの感覚はわかると思います。非常に狭い領域でも、世界最先端の研究をすることは学生にもできます。

こうした強みはそれ一つ取れば小さなものですが、それらをいくつか束ねることで専門性という強みに育ってゆきます。

戦略3. リスクを取る


出世街道を歩む人たちにはできないが私たち凡人にできることは、レールを外れるということです。別の表現をすると、リスクを取るということです。

私は新卒で入ったコンサルティングファームを3年で退職し、JICAの外部専門家としてイラクに赴任しました。終身雇用からは程遠く、命のリスクもありました。

しかし、このイラクでの経験が途上国での業務実績となり、途上国開発にかける情熱の証明になったからこそ、アメリカの有名大学4校から合格を頂き、留学のための奨学金を2つもの財団から頂くことができました。

戦略4. 一つに全振りする


企業戦略の一つに差別化戦略という考え方があります。全ての面で競合に勝とうとするのではなく、特定の面のみで勝つという戦略です。例えばスマホという製品群において、カメラの画質が悪くとも、バッテリーが一番長持ちするという理由で一定の消費者に選ばれることはできます。

個人の強みにもこの戦略は有効です。何事にもバランスの取れた優秀な人たちに対して凡人が勝るには、何か一つに資源を特化することは有効です。ゲームの世界で特定のパラメータに全てのポイントを使い切ることを「全振り」といいますが、まさにその発想です。

実は私はこの点で失敗しました。私はこれまで英語以外にもフランス語、ドイツ語、アラビア語、中国語、タイ語を勉強したことがあります。フランス語にいたっては社会人になってフランスに語学留学までしています。しかし、語学が苦手な私に、実際に仕事で使えるレベルになったのは英語だけです。中途半端に勉強した時間をもっと英語に費やすべきでした。

成長戦略における資源配分についてはこちらでも考察していますのでよかったらご参照ください。

戦略5. 極端なことをする


どうせ何かするのであれば極端なことを目指し、経験と実績にインパクトを残しましょう。

私が赴任先にイラクを選んだのは、仕事と生活の難易度が極端に高そうであったからです。赴任終了後には国際機関への就職か、留学をしたいと考えていました。そのときに国際開発への思いと経験をアピールするには、イラクはこれ以上ない選択肢に思えました。

極端なことをやってよかったと思うことがもう一つあります。それは自信がついたということです。私のように数年で仕事を変えると、一つの業界での経験が中途半端なものになりがちです。しかし、その業界での「極致」を経験すれば、たとえ時間的には短くとも、その領域で一番深いところを経験したような自信になります。

戦略6. 背水の陣を敷く


何事も余裕をもって準備を進められる優秀な方もいますが、追い込まれないと火が付かない人の方が多いのではないでしょうか。その弱さを利用する戦略です。

アメリカの有名校に社会人留学する方々の多くは、仕事をしながら留学の準備もするような超人です。しかし私にそのような器用さはなく、また働きながらではとても勉強時間が足りなかったため、仕事を先に辞めて留学準備に専念しました。合格できる保証もない中、30歳を過ぎて無職というのはつらいですが、逆に必死に勉強できました。

Strategy is Choice


ここで挙げた戦略には互いに矛盾するように聞こえるものあるかと思いますが、そもそも戦略とは選択です。攻めると守りに隙ができるように、全ての戦略を同時には実現できません。どれが最適かはあなたが選択する必要があります。

選択基準の一つの考え方として、直感は正しいことが多いです。あなたに刺さるものがあれば、それがあなたに合う戦略なのかもしれません。何が刺さったかコメントにてご共有いただけると嬉しいです。

私の経験から絞り出して書いてみましたが、どなたかの役に立てば幸いです。

気に入っていただけたら気軽に♡をクリックください。あとで読み返しやすくなりますし、より多くの方々にも読んでもらいやすくなります。

この記事が参加している募集

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

サポートから感想をいただくのが一番の励みになります。ありがとうございます。