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M-1グランプリ2021を全組しっかり振り返る【前篇】

2.3週間ほど前、
7年前東京で一人暮らしを始めた時から使っていたテレビが壊れました。
ああテレビも壊れるんだなあと思いつつ放置していたのですが『さすがにM-1はオンタイムで観ないかん』と無事友達の家で見ることが出来ました。

もともとお笑いは好きなほうですが
今回ほど予選から真剣に観たのは初めてなので
来年に向けても含め感想を書きたいと思います。

オンタイムでは日本酒を飲みながらで後半はアルコールに浸食された部分もあったので、公式YouTubeの動画を何度も見た上で一応書いております。
動画前の千鳥のブレインスリープの面白くない広告も50回は見ました。
※お笑い好きではあるものの、自分で漫才やコントをやったことはない身なので内容は大目に見てください。


書いてて大学卒業時の論文より長くなりそうだったので
今回は決勝一次の5組目真空ジェシカまでとします。


蓋を開けるとハイレベルかつ実力拮抗の2021年

決勝メンバーが発表され、いざ決勝当日直前までは
「史上最もカオスな」「地下ライブのメンバー」「ランジャタイがえみちゃんに殺されるんじゃないか」など心配の声・波乱を予想する声が多かったと思います。

いわゆる『漫才』度の強い安定感のある漫才をする見取り図、しっかり売れっ子になって実力も認められたニューヨークなど昨年上位のコンビが準決勝で敗退しています。

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ちょっと文字小さいですが、2021年と同じ7人の審査員で審査している直近4年の決勝の点数をまとめています。
※順位は最終決戦の順位ではなく決勝一次の順位です。

標準偏差は同年各コンビ間の点数のばらつきを表す指標と思ってください。

2021年は近4年で最低点が最も高く、標準偏差が最も小さい(コンビ間の点数の差が最も小さい)年でした。
平均点はわずかに2019年の方が高いですが、ミルクボーイが過去最高点の傑作ネタだったことが大きいですし、2019年は過去最高にレベルが高かった年とも言われているので、2021年はハイレベルかつ実力拮抗の年だったと言えると思います。


面白いのは標準偏差が年々小さくなっている点。
準決勝⇒決勝での審査の眼のレベルがどんどんあがっている結果だと思います。つまり、今年のメンバーは特に選りすぐりのお笑いエリートが残った年なのです。


少しややこしいデータの話はこの辺りにして
各コンビのネタの感想に移ります。


①モグライダー

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どこか世界線を間違えたKing Gnuみを感じるのは僕だけでしょうか。
冗談は置いておいて、最高のトップバッターだったと思います。

有能感あふれる芝さん(38歳)と
ぽんこつ感あふれるともしげさん(39歳)
意外とめちゃくちゃおっさんやないか。

ネタは美川憲一さんの「さそり座の女」の歌い出しの歌詞に疑問を感じたともしげさんが、美川憲一さんをさそり座の女として気持ちよく歌わせてあげたいというネタ。

「美川憲一さんって気の毒ですよね」という斜め上の掴みから美川憲一さんが歌う前に、あてずっぽうで星座と性別を聞いてきたやつがいるんじゃないかという視点が納得感があり面白い。
トップバッターの緊張感がある中、ここまでだけでも見てる側としては「あ、この二人面白い」と少し安心できる訳です。

そこからポンコツのともしげさんが、歌い出し前に美川憲一さんの星座と性別をあてるべく、有能な芝さんに支えられツッコまれながら奮闘する様を見守る訳です。書いててやや意味がわからなくなってきました。


ともしげさんのポンコツ感が一般的に認知されるほど、ともしげさんを応援したくなり、ドジっぷりに笑えてしまう型のはず。
TVの露出が増え、ともしげさんのキャラが浸透してきた来年にもっと跳ねる可能性が高いコンビだと思います。


3回戦は玉置浩二さんの田園のネタを披露していましたが決勝のネタの方が圧倒的に面白かった。
3回戦のネタとはやや異なり、ともしげさんが着実に成長して、美川憲一さんの星座と性別をあてる様は爽快感ある感動すら覚えました。
途中本当にともしげさんがミスっている気がするのですがどこまでネタを固め合わせているのか気になります。

掴みを含めた入りで場の緊張感を解き
あ、ボケの人ポンコツなんだと認知させ
みんながもどかしいながらともしげさんを応援する謎の雰囲気を作り、最後はハッピーに終わる。
トップバッターとして過去最高点なのもうなずけます。


来年でてきたら今度は何の歌のネタなんだというワクワク感からも入りから大きな笑いが獲れるコンビだと思います。
来年が楽しみです。

②ランジャタイ

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ノーコメントでと行きたいとこですが、ちょっとだけ。
良くも悪くも決勝戦前、最も注目を集めたコンビ。
当日オンタイムで観た際は正直わけわからなさすぎたので一応後日素面の状態でちゃんと観ました。

なんと、素面でみるとボケの国崎さんが何をやっているかわりと理解はできた。

ただ、言葉と動きに集中して見ないと本当にやりたいことがわからないので、近年M-1でも審査員からよく出る「わかりやすさ」という点ではしんどい。「ランジャタイはそういうコンビじゃない、感じるものだ」という意見もあると思いますが、今の型ではこれ以上行けないように感じます。

モグライダーや、錦鯉、インディアンスは
まともなツッコミが、めちゃくちゃ面白いボケを連れてきて、その面白さを最大限引き出し伝えてるコンビ。
ランジャタイは、ツッコミが変わるとどうなんだろうと思うところがあります。


③ゆにばーす

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3度目のファイナリスト。
今回の中でも観ていて安心感のあるコンビでした。

ディベート(言い合い)の議題を決めるまでも面白く
そこからお互いが正論をぶつけながら、結局ボケのはらがねじ伏せる。
かまいたちの得意パターンに近いです。

男女の友情はあるのかという
男女コンビであるゆにばーすにしかできないお題。
ただちょっと気持ち悪さのある(すみません)川瀬名人が「おっぱい触らせろ」などやや際どいセクハラまがいの議論になっているので、そこは観ていて100%心から笑えない部分がどこかにあったと思います。
真面目かって感じがするかもしれませんが、面白いながらどうしてもモヤっと感が付きまとってしまう。


あとは川瀬名人が言い合いにややガチすぎる点。
かまいたちは、サイコパス山内を濱家が爽やかに懸命に負かしに行く構図。
もしかまいたちと同じネタをやっても二人のキャラが違うので受ける印象は大きく変わるはず。なんか正しいことを言っている山内を、負かそうと頑張るまともな濱家を応援できるし笑えて来る構図を普段の番組から作り上げてきたかまいたちは巧い。

去年かな?の敗者復活でやっていたマッチングアプリで川瀬名人がマッチした相手がはらちゃんというネタベースの方がいいかなあと思いました。

個人的には結構好きなんですが、来年決勝にいそうかとなると疑問です。


④ハライチ

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今回の敗者復活枠。テレビではもうしっかり売れたコンビです。
敗者復活でこのコンビが上がることについては、ネタ時間オーバー問題を含め色んな意見があると思いますが、敗者復活のネタは良かったと思います。

決勝のネタはうーん。
静の岩井さんがキレて暴れ狂う動で笑いを獲るのが軸でしたが、しつこすぎる。。。
もはや岩井さんはテレビ番組で動の面も見せていてそれも認知されつつあるのでそのギャップも効ききらなかったかなと思います。

決勝のネタが本当にやりたいネタだったと岩井さんは話していたみたいですが、ちょっと自分のやりたいが強すぎて、ベテランの最後の年のネタのチョイスとしてはクレバーな判断ではなかったかな。

岩井さんは、M-1のスポンサーであるサントリーのカフェベースのCMに出演していますが、敗者復活であがったのも色々邪推してしまう。


⑤真空ジェシカ

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めちゃくちゃ好きですこのコンビ。
今年初めて知りましたが、学生時代に学生お笑い界ではエリート的存在だったみたい。
惜しくも最終決戦には残れませんでしたが、笑いの量は最終3組にも劣っていない。
ネタは川北さんの大喜利の強さを活かした、左脳的にもうまいセンスあるボケを手数多く掘り込む型。たぶん文字だけで見ても面白い。頭のいい人がつくるネタ。ボケの川北さんが慶応卒なのもうなずけます。


「駅伝古豪の駒澤」「江夏のジャイロボール」「二進法」「キムタクのハンバーガーの持ち方」「ハンドサイン」など知っていなくても面白いけど背景がわかる人にはより面白い。
駒澤の襷の伏線の回収もあり、ただボケの羅列ではなくストーリーもある。

漫才の伏線については色んな意見があると思います、自分は、あからさまに張って荒く回収してよく見せる伏線は好きじゃないですが、長くなるので別の記事で書きます。

この大喜利的なボケの手数の多さが最大の強みですが
大喜利的なボケは逆に言うと見る人のセンスを問う、見る人のセンスに依存するところも大きいので、老若男女誰が見ても面白い最大公約数的な笑いではない面があると思います。
お母さんお父さんに面白いよって100%の自信を持って薦められない感覚。
Twittererにはぶっ刺さりそうな感覚。
キーワードである「わかりやすさ」の点においてややしんどい。 



とはいえ、天才感がありミステリアスな川北さんがもっと知られてくれば「次この人なにしてくんだ」というワクワク感に繋がり、もっとウケると思います。

掴みも秀逸。

川北さん「どうも、COUNTDOWN TVの眼鏡のやつでーす」
ガクさん「言うとしたらボク~」
の掴みで川北さんが自分じゃないと知ってがっかりしてる細かい芸も面白過ぎる。(一回目気づかなかった)

知らない人のために眼鏡のやつ置いておきますね。

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ちなみに今年の三回戦の掴みは
「オトナ帝国の逆襲の眼鏡のやつ」
引っ張ってくるところが秀逸すぎる。

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6組目のオズワルドからは続編で。
読んでくれた人ありがとうございます。
おやすみなさい。

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