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居残り続けて悪党はヒーローになる

名作映画であり、古典落語の名演目でもある。タイトルは違うが、主人公の名は、佐平次。この男がとにかくカッコよくみえてくるのだ。そう、初めからカッコいいのではなく、どんどんカッコよくみえてくる。

ワタシは、映画「幕末太陽傳」を先に観た。この映画は、落語「居残り佐平次」をベースに佐平次が登場し、「品川心中」「三枚起請」「お見立て」などの演目を随所に散りばめられたオリジナルストーリーである。
佐平次を演じるのは、フランキー堺である。(正直、名前ぐらいしか知りませんが渋いオトコだ。)

この映画は、名作として有名で、今観てもストーリー展開にまったく「古さ」を感じさせない。たまに、ステキな映画だけど、時代を感じてしまうようなことがある。現代のスピード感に合わない妙にもっちゃりした展開とか、生活様式が昭和すぎて嘘くさく感じたりする。20年ぐらい前のギャグみたいなCGを観たときの興ざめ感があったりする。
「幕末太陽傳」には、一切その空気を漂わせない。1957年上映だから、62年前の映画なのに。
ストーリー展開は、とてもよいテンポで流れていく。幕末時代の物語なのが、余計に古くならないという効果もある。現在では幕末を再現できないというか、62年前だからこそ、まだ着物の所作や廓の風習などをかろうじて知っている方々が、随所に居たのではないかと思う。細部に本物感がある。

「古さ」を感じさせないでいうと、「男はつらいよ」もそうだ。
偶然なのか、どちらの監督も落語がスキなようだ。


佐平次は、特によい行いをするわけではない。
演目にもある「居残り」とは、当時の遊郭において代金を支払えなかった場合に軟禁されることを言います。遊び方としては下の下。佐平次は、お金を持たずに、飲んで食べて遊ぶ。確信犯で軟禁されるのです。その後、持ち前の陽気さと器量で、みんなに取り入って表玄関から無事出ていく。
文字にすると詐欺師ですね。

佐平次の魅力は、ものすごくお調子者で機転が利くこと。その魅力を発揮して、周りを笑顔にし、商売もうまくいく、そして人気者になっていく。
落語にも映画にも共通するのが、軽快なリズム。
お調子者の軽快なリズムが、悪業をすべて中和して、どんどん佐平次をスキになって、カッコよくみえてくる。

ライブで初めて聴けたのは、隅田川馬石師の「居残り佐平次」でした。
ワタシの中では、佐平次はもうフランキー堺だ。軽快なリズムで、お膳を持って遊郭を走り回るフランキー堺演じる佐平次が、ヒーローにみえました。

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フランキー堺さんは、もう亡くなられたけど、映像と落語の國の佐平次として、今も笑ってくれている。

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