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2022年 作ったモノたち (AR、アトラクション、小説、etc)

Interactive / AR Engineerのkiyoです。
普段はTwitterのモーメント等で制作物をまとめていたんですが、モーメントが使えなくなったのでこちらにまとめます。

自分の備忘録がメインですが、AR制作で知ってくれている人から「普段は何やってるんですか?」と質問されることも多かったので、今年は本業で作ったものとかもまとめます。

▷ 本業


本業は変わらず、何でも屋みたいな仕事がメインでやってました。
主にローンチできた案件です。

カンドゥー イマーシブファイアファイター

2021年末~2022年3月まで担当していた常設型体験アトラクション。
「近未来の消防士」をモチーフに、火災を事前に防いだり、人命救助をヒーローのように体験できるアトラクションです。
ARを使った探索 + 照明や特殊効果を用いた潜入体験もありのボリュームのある案件。
自分は企画からも絡みつつ、主にARガジェットやアプリの開発全般や、途中のギミックなどもいろいろ開発しました。

ARアプリ側にはVPS (immersal) を採用して、屋内探索ができるような仕組みの体験になっています。プライベートではAR系を開発しつつ、仕事では意外とAR開発は少ないんですが、久しぶりのARコンテンツだったので、自主的にやれることをいろいろ取り込んだ気がします。

体験開始前に指紋認証(風演出)を入れたり、無駄にかっこいい英語の音声ガイドなど、本当に存在するガジェットのような演出をふんだんに盛り込んで、子供たちが憧れる仕様に持って行けたのがお気に入り。
(製作中、ひたすらSF映画やSFゲームのUIなどをリファレンスで見まくってた。デスストランディングの画面とか参考にしたりも)

中身に触れてる公式動画が少ないんですが、こちらの紹介動画がわかりやすいです。

アトラクションをつなげる魔法のバンド : シャリング

今年の半分以上はこれをやっていたんじゃないかと思う仕事。
弊社パークのアトラクションをNFCバンドで繋ぎ、それぞれの体験データが溜まっていくシステム。
子供たちが体験したデータはWebで親が確認でき、親子の新しいつながりを産む、アトラクションのシステムです。

自分は

・NFC読み込み周りの共通システム(pythonアプリ)
・アトラクションのスコアや体験データを送る仕組みの実装(Unity)
・バンドの登録フローに使用するアプリケーション(Androidアプリ)
・バンド登録のためのレシート発行機器開発 (Rasbery-pi)
・パーク内のチェックポイントを回るアトラクション (ハードウェアベース)

と、裏方部分含めいろいろやってました。
あまりこういう、面白さを担うフロントじゃない部分をメインにやるのは多くはないんですが、今回の経験で「サービス」としてちゃんと成立するものを作る視点が持てるようになった気がします。
面白い、だけじゃなくちゃんとユーザーに使われる/何度も遊ばれるもの。
プライベート制作だとこの視点は忘れがちだったり、経験を積みづらい点が多いのでありがたい。

チェックポイントを回るアトラクションについては、記事なども書きました。技術的なところはここでも軽く解説してます。

11月~12月にはさらにアップデートして、それぞれのアトラクションでアイテムを使ってより楽しくなる仕組みも開発しました。
今後もパワーアップさせて、「進化するテーマパーク」としてパークを強化していくつもりです。

キミの作ったレゴ®ブロックが動きだす ! デジタルアトラクション 

会社運営中のパーク リトルプラネットとレゴジャパンさんとのコラボで実現したアトラクション。
組み立てたLEGOブロックをスキャンすると、大きなスクリーンに立体化されて出てきて、困難を超えて橋を渡ります。
自分はLEGOをスキャンするシステム部分とスキャナー筐体の制作を担当して、開発しました。
筐体は社内の設計士の方が外装の設計してくれて、配線などを考慮して色々オーダーしました。LEGO感があって好きです。

▷ プライベートワーク


ARの開発経験を積むためにも貴重な副業。
今年はありがたいことに3社ほどから声をかけていただき、お仕事をもらえました。
(内、1案件はまだ開発中で、表に出ていないのでまだ)
そのうち、ローンチできた二件について。

渋谷空想水族館 powerd by XRscape

昨年度、NEWVIW AWARDS 2021で受賞したことがきっかけで、loftworkさんに声をかけていただき、担当した案件。開発全般を担当しました。
渋谷キャスト ガーデン一帯の空間を使い、その場所をARで空想の水族館へと変化させるコンテンツ。
依頼の時点で、自分の作るコンテンツの特徴を把握していただいていて、本当にやりやすく、こちらからも演出の提案がしやすかったお仕事。
(昨年度培ってきた、地面が変化するような、現実を変容させるAR演出もこちらから提案させて入れさせていただいたり)

得意な部分を活かす形でディレクションをしていただいて、本当にやりやすかった案件。また仕事をご一緒したいなと思う。

その後、loftworkさんにインタビュー記事も掲載いただいきました。

2億歩先で逢いましょう

プライベートで組んでいるクリエイティブユニット「KATAKOTO」の相方も在籍していた会社、ENDROLLさんに声をかけていただき、担当した案件。主にコンテンツ内のAR演出周りを担当。
相方がディレクターということもあり、普段のプライベートでのコンビ制作とはまた違った感じで新鮮な案件でした。

場所で展開するAR、街歩き、ボイスドラマ、主題歌もあり。
元々、映画のような「物語」性のあるコンテンツをずっと作ってみたかったというのもあり、脚本や曲作りなど、実際に制作の中でプロの仕事見せてもらって、学びにもなった案件でした。
今度は自分でも脚本を書いて自分なりのコンテンツを作ってみたい、と思えた記憶。今年は挑戦していきたい。

プライベート制作


今年は例年活動しているクリエイティブユニット「KATAKOTO」での活動が、相方も自分もいろいろとプライベートで動きがあったので、活動自体は控えめに。
なので、個人での活動や新しいことに挑戦した年でした。

▷ 拡張空想再現 : ARで体験できるアニメや漫画の世界

去年から続けている、アニメや漫画の世界をARコンテンツとして再現して、誰にでも体験できるように公開するシリーズ。
元々、自分のARでの演出力向上の意味合いも込めて作り始めた習作群だったが、自分が「気になったら作る」という循環が生まれたのでシリーズ化。
今年は4つほど制作しました。

①「王の財宝"ゲートオブバビロン"を誰でも使えるAR

Fateシリーズより、某英雄王の宝具の再現。
年始早々に予想外にバズり、今年一番拡散されたネタに。みんなFate好きですよね。
たくさんの人に届いたおかげで、メディアにもたくさん取り上げてもらいました。

Moguiveさんに取り上げていただいたり、

中国のメディアにも取り上げていただいたり。

これがきっかけで、RealSoundさんから活動や制作物のインタビュー記事を掲載いただいたりも。

② 「Zガンを誰でも使えるAR」

Fateに続き、今度は漫画GANTZから。
「地面が変化するAR表現」はずっと作っていたので、きっと再現できると思っていたので実装してみました。
こだわりは、映画「GANTZ:O」の1シーンを何度も見て再現した、照準部分。

③「卍解 “千本桜景厳”を誰でも使えるAR」

再現シリーズを作っていて、ふとアイデア探しのために「かっこいい必殺技ってなんだっけな?」と思い返し、「卍解作ってないじゃん!」と思い、作成。完全に世代なので、ジャンプでかっこいい、おしゃれといえばBLEACHです。
やはりAR映えするものとして、千本桜を選定しました。

④ 「サイバーウェア "サイバースケルトン" の力を誰でも使えるAR」

Netflixで配信していた「サイバーパンク エッジランナーズ」を一気見したら、とても感動してどハマりして、衝動で開発しました。

そういう勢いって大事。
ベースは「Zガンを誰でも使えるAR」と同じだけれど、画面揺れの感じだったり、インフォ演出など、少し凝った演出を加えてパワーアップ。

▷ 体験できるホラー 「うつる。」

昨年思っていたことで、「自分の制作するものって、面白いと自分は思っても自分の好きがあまり入ってないな」と思うことがありました。
決して悪いことではないと思いつつ、もう少し自分の好きなもの (映画や小説、アニメなど) をうまく自分の作品と交差させていこうと。

そこで、自分なりに自分の好きな「映画」と自分の技術の交差するものを作ろうとして、「自分なりの体験できる映画作り」として試しに作ってみたシリーズ。
題材がホラーなのは、確か「映画の登竜門といえば、低予算ホラーからだよね!」みたいな映画オタクの発想から安直にホラーになりました。
(あと、ホラーはアイデアとしてARと相性良さそうというのもあり)

SNS x ARということで、リングの「呪いのビデオ」の現代版、みたいな新しいコンテンツを作れると思うと面白いのでは?、と思い、タイトルも「映る」「感染る」の意味合いも込めて「うつる。」と命名。
ARプラットフォームのSTYLYで展開することにしました。
今後も作品数を増やして、シリーズ化していきたいところ。

① 「うつる。 / 天井」

シリーズ第一弾。
方針として、「身の回りの何気ない場所にうつす/目を向ける」ことで始まるものとして考えたので、まずは定番の天井だろうと考え、実装。
邦画ホラーあるあるな、「出ると思ったら出なくて、油断したらいきなり来る」という感覚を体験に閉じ込めたくて、実装しました。
全体的な雰囲気は中田秀夫監督や黒沢清監督作品などの平成初期あたりのJホラーにリスペクトを捧げて、湿っぽい、暗い、仄暗い雰囲気を作っています。ちゃんと、「好き」を作品に反映させられた。

こちらの作品は NEWVIEW AWARD 2022でファイナリストにも選んでいただきました。

② 「うつる。 / 床」

天井ときたら、次は床でしょう、ということで。
ベースは昨年度作った、壁に顔が浮かぶプロトタイプで、

この「家の一面に突然凸凹と手や顔型が出る」のが、ホラー描写としても面白かったので、それを再現して実装した。

▷プロトタイプとか

今年は去年に比べて、単発ネタの開発は少なくなってしまったけど、一応作っていました

一番、技術的には面白いことを実践したプロトタイプ。
実はこれを作ろうとして本当は作りたかったものが作れていないので、リベンジ予定。

▷ 小説

今年一番の新しい挑戦。
「うつる。」のところでも書いたように、自分は映画や小説などが好きで、「物語」があるコンテンツがずっと好きでした。
そうしたことから、ずっと自分なりに「物語」を伴ったものを作ってみたくて、まずはできることから始めようと、小さな物語作りに挑戦していました。
今年はなんとか10本ほど短編小説を書くことができました。

① 『誰かが待ってる ~2030年の事故物件事情~』

記念すべき一作目。
最初ということでアイデアをしっかりフックのあるものにしよう + エンジニアなので何かSF的なものから、と意識して題材を探した作品。
そこで、スマート家電に着目して、「スマート家電のデータが残ってたりするとどうなんだろう?」「それを事故物件と呼んでたら、なんかキャッチーだな」と思って、それを題材に書き始めた。
また、自分が映画や小説で「こういうジャンルかと思ったら違うジャンルだった」という裏切りが好きだったので、その要素もうまく入れ込もうとした。 (これもホラーと見せかけて、違うと見せかけて…? みたいな展開を意識している)
今思うと、最初の作品だけあって、自分が好きなものと、面白さを意識したところ、題名や題材含めて、バランスがよくまとまった作品な気がしている。

② 『在る半透明な思い出』

二作目。
まだ執筆に慣れていなかったので、まずは身近な題材で、と思いAR技術を題材に書いてみた短編。

③ 『そこに咲く言葉』

Prologueという短編小説の投稿サイトで公募があり、そこに向けて書いてみた作品。また、前に作品とは違い、SF的な要素がないものに挑戦してみた。
2000文字以下の短編だけど、タイトルも含めてまとまりのあるものにしようといろいろ試行錯誤した。

④ 『出現頻度の高いカレ』

いろんなジャンルを書いてみるのに挑戦しよう、と思って書いてみた作品。今回もSF要素がない、現代もの。

⑤ 『犬小屋に座敷童』

投稿サイトの「カクヨム」で、昔話を題材とした公募があったのでそこに向けて書いた作品。
少しタイトルや設定で気をひけるものを書いてみよう、と思いいろいろアイデアを練っていてふと、「犬小屋って座敷童的に家扱いになるのか..?」と思い、そこから着想を得て執筆した。

⑥ 『Layer Throw -織り重ねたシュートフォーム-』

久しぶりのSFもの、かつARを題材にしたものに戻ってきた。
この作品の時は、意識的に「自分なりに伝えたいものを込めよう」という感情が働き、今までの作品に比べ、面白さよりテーマ性やそれを表現するシーンや演出に凝ろうとしていた。
今思うと、その感情に走りすぎて、少しエンタメ性が弱い(序盤とか特に動きがない、興味をひくフックも弱い) 形で読みずらくなってしまったなーという反省がある。

⑦ 『文明の雨を待つ花』

投稿サイト内で、お題に合わせて書く企画があり、それに参加した作品。
企画締め切りが近かったというのもあり、初めてプロットを事前に考えずに、「地下に咲いている花」の情景から考えて書き進めた。
その割にはうまくまとまった小さな寓話になったような。
(自分の「最後に意外なオチが欲しい」という趣向がモロでてるのもその影響)

⑧ 『夕日の郵便屋』

前回の「文明の雨を待つ花」に続き、お題企画に挑戦した作品。
今回も深くプロットを考えず、思いついた設定「夕日を実際に空気を調整して作る職業があったら?」という流れに沿って書いてみた作品。
題名は地味にお気に入りだった。

⑨ 『憧憬箱の販売人』

Twitterでは投稿できていなかった作品。
「近未来、売れなくなったテレビに憧憬を重ねて販売する販売員」の話なのだけれど、自分がこれを書いていた時の心境が暗かったためか、少し暗い。そのため、Twitterでの投稿に躊躇したような記憶。
また、「自分の感情を込めよう」という意識が変にこもっていて、エンタメ性の部分を全く意識していない作品になっている。

⑩ 『あなたの意識を一心に! 一心入魂』

Twitterでは投稿できていなかった作品2。
書こうとした時は「世にも奇妙な物語」みたいな不思議な商品にまつわるお話にしようとして書いていた記憶。
少し短すぎて投稿に躊躇して、結局Twitterでの投稿は忘れていたような気がする。

▷ 振り返って

実は今年はインプットや今後のことを考えることが多くて、あまりアウトプットや活動は控えめだったかな、と思っていたんですが、副業でも仕事をしたり、新しい挑戦も小さく始められたり、それなりに活動していたんだなーという印象でした。

プライベートの制作の方向としても、今年は「自分の好きややりたいことと素直に向き合って、作っていた」ものが多かったです。
いつもはもっと「面白い」「面白いと思ってもらえる」という確信がある制作をすることが多かったんですが、今年は意図して自分が好き x 自分の技術を掛け合わせるものを作れていた気がします。
(拡張空想再現もアニメにはまって衝動で作ってますし、「うつる。」も自分の好きを込めてる、小説も自分がずっとやりたいことのとっかかりとしても)

その影響でちょっと例年と作るものの方向が違ってしまっているかもしれないけれど、自分の中では成長と変化とも思っています。

来年はもっとより進めて、自分なりに自分の技術(AR等々)でしか作れない、体験できるからこその物語、という作品を一つ作ることの挑戦できたらなーと思います。

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