見出し画像

その課題に必要なのは、どのようなリーダーシップだろうか

リーダーとは何をする人でしょうか。

そう聞かれて、どんなことをする人を想像しますか。「あっちだ!あっちにすすめ!」「みんな、私に任せて!」
指示命令、管理統制、明確な計画、進むべき方向や解決策の提示…。つまり、特定の素質や権限を持った人が、そうでない人を動かすといった様子を想像された方がいるかもしれません。おそらく、リーダーという言葉で語られてきたのはそういう意味でした。

マネージャーとは

実際は、その人は「マネージャー」ではないでしょうか。「ボス」といってもいいかもしれません。マネジメントとは、「唯一正しい、ベストの答えがある状況」を前提に作られている考え方です。たとえば、日本の高度成長期のように、同じものを作れば作るだけ商品がどんどん売れるのであれば、皆でそれを真似ることが幸せへの近道です。そんなタイミングで、新たな企画のために多くの時間を使うことは賢くないでしょう。また、決まった答えがあるのだから、現場の人にごちゃごちゃと勝手に考えられては困るのです。このため、マネジメントを中心にした組織は、結果的に上から下へピラミッド型の指示命令系統になります。その中で、人々は、自分の発言が、規範や権威に基づいた正しさがあることを聞き手に思わせるような言い方を学びます。「したほうがいい」「すべき」「せねばならない」などです。

かくして「ふつうの人」は生まれた

管理が行き届いた結果、マネージャー以外の多くの「ふつうの人」が生まれました。戦略策定や意思決定に関わる責任やリスクを持たずに、多くの人が幸せになることが可能になったのです(「一億総中流」なんていう言葉もありました)。

その代わり、自由は多くありません。ここでの基本的な労働観は「権利と義務」的になります。「正しいことを正しくやる義務」を履行する限りにおいて、あなたは権利を得ることができます。これが、いわゆるマネジメント(管理)です。そして、その思い込みが、私たちのこれまでの時代の経済的・物質的な拡大、労働観、問題解決のやり方の基盤となってきました。

これがあるからこそ成り立っている私たちの暮らしの質もあります。たとえば、時間通りに電車が動くことで、私たちは安全に飛行機が目的地に到着することができます。

画像1

VUCA(ブーカ)の課題

これは、現代の経営環境や個人のキャリアを取り巻く状況を表現するキーワードとなっています。最近であれば、「新型コロナウィルス」が、社会にもたらした状況は明らかにVUCAです。それを例えに考えてみましょう。

Volatility(変動性・不安定さ):絶え間なく、状況が変わっていきます。そのため、「一度片付けたら、おしまい」とはなりません。一旦は有効と思われる解を出したりしたとしても、予測できなかった急速な状況の変化によって、その解がすぐに陳腐化することもあります。また、あなたが「経験や知識を積むのが先」と、せっせと準備をしている間に、もう既に状況は変わっているかもしれません。その課題への対処は、いつかではなく、今すぐ必要なのです。
Uncertainty(不確実性・不確定さ):行き先がわからず、予測がつきません。「こうなったら、こうなるはず」と思いどおりにいかないということです。それゆえに、伝統的な「計画づくり」は、機能しづらくなります。また、判断が適切だったかどうかが、結果が出て後に検証して初めて分かります。たとえば、イタリアにおいては「よかれ」と思って積極的な検査を行った結果が、爆発的な感染を引き起こしたとも報じられています。いますぐできる目の前の解決策に飛びつくことは状況を悪化すらさせる恐れがあるのです。
Complexity(複雑性):因果関係が絡み合っており、ルービックキューブのように「あっちを揃えれば、こっちが揃わない」ことがあります。たとえば、コロナで言えば、イベント会社やそこで働く人たちの収入の確保のために、イベントを開催したいのですが、一方で、濃厚接触が増えれば、公衆衛生的には危険が高まります。内定取り消しや解雇などは生活保障の問題になり、一部の国ではアジア系の方が暴力を振るわれたり、国境封鎖が検討されたりなど、人権や国際政治の問題にも発展しています。

Ambiguity(曖昧性・不明確さ):そもそも決まった答えがありません。唯一の正しい答え(ベスト)がないということです。それゆえ、正しい〜間違いというものさしでの判断ができません。例えば、オリンピックの延期か、中止か、無観客かという判断に、ベストはありません。よりよい解(ベター)が、いくつかあり得ます。

VUCAの判定方法

私たちは問題が生じすると、ついすぐに解決をしたくなります。しかし、上記に挙げた性質を踏まえれば、例えば、複雑性を持つ問題は、目の前の解決策に飛びつくことで状況を悪化すらさせます。

このため、まずは私たちが直面する課題が、「自分にとってVUCAかどうか」ということの判定が重要ですその時に、一つ有効な線引きだと私が考えているのが、「唯一の正しい答えがあるのか、そうでないか」です。

唯一の正しい答えがあるならば、私たちは知っている人の指示を仰ぐことが合理的です。指示がなければ忖度します。あるいは、現場にいる誰も答えを知らないならば、外部の専門家に教えてもらう検討されます。彼らは答えを持っていますから、私たちの代わりに決めてもらうことがいいかもしれません。

しかし、唯一の正しい答えがない時、どうすればいいでしょうか。イベント企画、職場の人間関係、家庭内の習慣、自分のキャリアなど、あなたの自分なりの現場をイメージしてみると、わかりやすいかもしれません。

「自分にとって」というのが肝です。「壊れたパソコンを修理する」という課題は、私にとっては何が原因かわからないし、いくつか答えがありそうな複雑な課題に見えます。しかし、エンジニアの人にとっては、唯一の答えがすぐに見つかって修理できる「答えのある課題」かもしれません。それでは、「パソコンはみんなにとってカッコよく見えるようにする」は、どうでしょうか。

複雑な課題への対応方針

唯一の正しい答えがない時、私たちは意図して、創りだすことしかできません。

私たちが歩みを進めるために頼りになるのは、「今どんな時代だから、私たちはこれに取り組むことが重要かつ緊急なのか」「この取り組みの背後には、どのようなピンチとチャンスがあるのか」「チャンスを活かせたら、私たちどのようなことができるようになるのか」」。私たちの内側から来る願いや目的がすべての始まりです。

その目的に向かって、アクションをおこします。そして、振り返ります。見込んだとおりに目的へ進んだか。そうでなかったとすれば、なぜか。こうして仮説と検証を繰り返していくとで、生きている知恵(実践知)を生み出し、ベストはなくとも、ベターな道を手繰り寄せていきます。

このように、絶え間なく変化する状況の中で変わり続けることが必要なため、失敗から学びつづける態度が「あったらいい」ではなく「必須」です。それは、失敗の質を上げていく過程とも言えます。

もし目的がなければ、その取組が成功だったのか、失敗だったのかを評価することができず、学びもありません。この行ったり来たりのプロセスは、直線的なマネジメントに対して、「ダンス」のようだと言われることがあります。そして、このスキルが「リーダーシップ」と呼ばれています。

マネジメントとリーダーシップの使い分け

状況や課題の性質に応じて、リーダーシップやマネジメントを使い分ける必要があります。これはどちらが白か黒かという二項対立的な議論ではなく、多くの灰色があることに注意してください。

あなたが旅行の行き先をどこにするかを探索して、みんなと共に決めるのはリーダーシップの領域ですが、どのようにうまく電車を乗り継ぐかはマネジメントの領域です。組織の構成員がリーダーばかりでは、質の安定化ができないでしょうし、マネージャーばかりでは新しいものが生まれづらいのです。

マネージャーとしてのあなた、リーダーとしてのあたなは共存します。そして、マネージャーとリーダーをつなぐあなたも存在するでしょう。

今、あなたが直面している課題に必要なのは、マネジメントですか。それともリーダーシップですか。


もしこの記事が役に立ったようだったら、ビール1本奢ってくださいまし(サポートお願いします🤲