【BONO】音声SNSアプリのデザイン ~コンセプト編~
気づけば春が終わっていた。
その代わり、アウターを着込まなければならない早朝や、炎天下を思わせる白昼が入り混じって、一体何の季節なんだと清々しい日本晴れにツッコミを入れたくなる日々が続いている。
着実に日本の気候は変動していると思わざるを得ない。
現在UI/UXデザイナーに転職するため、朝に夕に奮闘中だ。
本記事はその奮闘記録である。
一刻も早く、アプリとかサービスとか事業戦略とか死ぬまで考えたい。
今回、お世話になっているUI/UXデザインコミュニティBONOから「音声SNSアプリ」をデザインするというお題に挑戦した。
製作期間は約1ヶ月。仕事をしながらだったのでとても大変だった。
ポートフォリオとして活用できるような内容に仕上げられればと思う。
この課題の目的は、
「UIを自分でデザインしながら基本パターンを学ぶ」
というものであるが、自分なりに「音声SNSとは何か?」というコンセプトを考えてから制作に取り掛かることにした。
ただ与えられた課題をこなすのではなく「もし実務でSNSアプリを作成することになったら?」という想定でUI作成に取り掛かろうと思ったから。
ビジュアル的な内容はあまりないが、コンセプトづくりに興味のある方はぜひご一読頂きたい。
1. 完成版
完成したアプリの紹介をさせて頂きたい。
アプリ名はVOISTA(ボイスタ?ボイステ?)。
(※存在しないアプリです。あしからず)
アプリ名:
VOISTA(VOICE+STATIONの組み合わせ語)
アプリの種類:
音声SNS
作成したUI:
新規登録、フィード、パーソナライズ、新規投稿、検索、検索結果、通知、設定
使用したソフト:
Figma、Illustraror、Photoshop(プレゼン資料用)
2. コンセプトを考える
「何のためのアプリ?」は、アプリ開発やサービスの起案を行うときに必要な問いだ。
SNSは主に発信者側と受信者側(リスナー)に分類できるため、両者のバランスを考えながらコンセプトを作った。
コンセプト
●学ぶ(知的好奇心を満たす)
●知の共有(自分と他者)
●つながる(音声によって)
言葉を交わすということは情報交換であり、それが「学び」に通じる。
学び合うことで人とつながり、知識を共有していく。
結論、知的な活動は人と人との間でのみ活かされるので、つながりを意識したアプリになればいいと思った。
「学ぶ」「知の共有」は堅いイメージがあるが、他者と「つながる」ためにある程度のポップさが欲しい。
以下はこのコンセプトを導き出すための思考経路である。
2-1. 誰のためのアプリ?(who)
●知見を残したい人
●学んだことを発信したい人
●普段考えていることを話したい人
●誰かとつながりを求めている人
日々研究していること、
頭の中で一旦整理されていること、
その場の貴重な気持ちを記録したい、
そういった内容を共有するためのアプリケーションにしたい。
自分の性格上、twitterやYoutube、noteなどでよく見かけるのは、誰かが学んできたこと、経験したこと、財産になりそうなことを発信する人が多いという印象を受ける。そういう発信があるということは、それを受け取りたい人もいるということだ。
どうでもいいことをどうでもいいとは思いたくないが…ただの感情の垂れ流しにあまり興味がないのは少し冷徹かもしれない。
2-2. 何のアプリ?(what)
●音声で発信する
●テキストや画像でも発信する
●検索する
基本的に音声を発信するためのアプリである。
必要に応じてテキストや写真を添えたりできるようにする。
音声で発信することが何よりも肝である。
文章よりも声を使うことで、その人物が浮かび上がり、よりユニークな存在となる。個性を大きく際立たせることで、大きな好意にも嫌悪感にもつながる。たぶんこういう音声アプリや動画配信が主流になってくると、いい声をした人や美しい顔の人が増えてくるんじゃないかと思う。人間はそういう環境に適応しようとするので。
リスナー視点では、他者の発信を検索する行為がアプリ内では重要である。
Twitterは発信する以上に色んな情報へアクセスすることができるし、タイムラインのカスタマイズや検索機能を充実させることは、自らが欲する情報にアクセスでき、多様な知識を共有することができる。
2-3. 何のためのアプリ?(why)
●知的好奇心を満たすため
●知識・知恵を増やすため
●音声で発信することによって、自己効力感を上げるため
●つながりを持つため
基本的に、人間は知的好奇心を満たしたい生き物だと思っている。
より多くの知識を持っている人、より優れた知恵を発揮する人が、生存競争において有利に働く。マウントを取るというのは、生物学的に優れた生き物であることを自覚したいからだと思う。知的になること=生き抜くこと。
発信する人がいて初めて、SNSは機能する。
どんなことでも人間は他者より優れていることを欲しているので、その欲望を満たすためのアプリになってしまう。あれ、なんかちょっと悲しい。
2-4. いつやるアプリ?(when)
●学びや考え方を誰かに伝えたいとき
●自分自身を表現したいとき
●雑談しているとき
●クリエイティブだと思うとき
●インタビューをするとき
いつやるかと言われれば、思い立ったら今すぐ!というのが正解である。
「今、こんなことを思った」
「普段こんなことを思っていて、ようやっとまとまったから発信する」
「学校の勉強がとても面白かったのでシェアしよ」
普段から思索を巡らせている人や学びを得たいと思う人は、誰かに教えたいという欲求を兼ねている。
複数人での会話も発信するに値するのではないか。
ラジオみたいなものも存在するが、突然始まる雑談にはオチもないしテーマに沿って話すということがないので、ある意味とてもクリエイティブだし知的な内容に転化することもある。
ただし、Twitterなどの文章と違い音声投稿は場所を選んだり多少の準備が必要だったりと、多少とっつきにくい側面がある。
2-5. どこでやるアプリ?(where)
●自宅
●職場
●出先(会場、旅行、パーティ、etc)
これも、スマホがあればどこでも!というのが正しい。
自宅はもちろん、何か起こりそうなパーティ会場、雑音が心地よいカフェ、雨音が響く部屋の中、夜明けのプロムナード…
人が声を出せる場所であれば、いつでもどこでも。
2-6. ユーザーが達成したいこと
次に、ユーザーの欲求について。
どんな人が(who)何のために(why)やるのか、という点と被るかも知れないがその根本的な感情を考えてみる。
●誰かの役に立ちたい
役に立ちたいというのは社会性だろうか。
人間は誰かに容認してもらうことで安心を得たいのだと考えられる。
奉仕的な人もいるだろうし、聖人のように何でも教えてくれる人だっているから一概には言えない。
ともかく、役に立とうとする行為はその人の快感になるのである。
●自信を持ちたい
「こんな知識を持っているのだから、すごいと思われたい」という、自己肯定感や優越感を満たすのも一理ありそうだ。
生物的に、自信を持つことが健康や寿命に多大に影響するのは研究等でよく知られていることである(ホルモンの分泌や活性酸素の減少など)。
●共感を得たい
これも社会的欲求に近い。
仲間がいるのは人間にとって大事なことだ。というか孤独であることは原始時代から危険な状況であると遺伝子に刻まれているのだ。
孤独はタバコよりもストレス値が高いと言われるぐらい、人間は孤独に弱い生き物なのだ。社会性を保つために同意見の存在が必要なのだ。
マズローの「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現欲求」がよく当てはまる結果となった。
自己満足というよりも、他者が存在してこそSNSは成立するので、そういう心理をアプリ製作者はよーーーーーく分かっていると思う。
2-7. ガイドライン
アプリ名:
VOICE(声)+STATION(駅、基幹)=VOISTAにした。
STATIONにはいろいろな意味が込められる。また、敬愛する宇多田ヒカルさんの名盤からも拝借している。ヒカルさん好きです。
ロゴマーク(シンボル):
とりあえず8種類考えた。
ラフ→イラレでちゃんと作る→Figmaに持っていくという過程。
この中から一つを決定した。
「V(=Voice)」をハート型にし、後に波形となる棒状で表現した以下のシンボルに決定。
決め手として、
●Vの形がハートに見えて意味が取りやすい
●抽象度が他のロゴより高い
●ちょっとかわいい
●親しみやすいフォルムをしている
という、自分の感覚を頼りに選んだ。第一印象で「わかりやすい」というのはブランドやサービスにとってはとても有利だと思うので、直感(直観?)は当てにしたい。ただし正しいとは限らない。
テーマカラー:
橙~赤色のグラデーション。口を想起させ「喋る」ことを促すようなカラーとした。SoundCloudっぽいのは私の趣味である。
3. まとめ
以上がコンセプト編である。
次回は実際に音声SNSアプリのビジュアルを作成する過程を紹介する。
コンセプトがすべて反映できるかどうかは難しいが、BONOの制作ロードマップに則った形でUIをデザインする。コミュニティ運営者のカイさんの思考をトレースすることが目的なので。
実際に以下のUIを作成する。
●新規登録画面
●フィード(タイムラインみたいなところ)
●新規投稿画面
●検索画面(および結果画面)
●通知画面
●設定画面
【追加で作成するUI】
●パーソナライズ画面
●ライブラリ画面(予定。ポートフォリオには作る)
どうぞよろしく。
Column.音声SNSアプリの問題点
本題とは関係ないのだが、音声SNSの心理的ハードルについて考えてみる。
戯言なので、読み飛ばしていただいても構わない。
声に出して発信することは、全員が簡単にできることではないと思う。
事実、私もそのうちの一人である。
なぜ声に出して発信するのを躊躇っているのか、思考を巡らしてみた。
1.自分の声に自信がない
自分の声に自信のない人は一定数存在すると思う。先天的か後天的か原因は人それぞれだが、自信のある人に比べて発信しようとする気にならないのはありそうな気がする。私も自分の声がそんなに好きではない。
2.流れに沿ってうまく話せない
考えがまとまらない、話す順番が整理されていない、起承転結・論理的に説明できないなど、一方的に話す場合でもこういった話術が必要なケースがある。もともと話すのが得意な人なんているのだろうか。
3.話す必要性がない
テキストを使った方が簡単である、そもそも声に出すほど意義のある意見がないなど、話す必要性がなければ音声を使って発信する必要もない。
Twitterの方がハードルが低いし、そういうものに流れるのは当然である。その文化が悪いということではない。匿名性が保持できるかどうかも大きい。
4.音声発信のフォーマットが分からない
音声による発信というのは、ラジオやテレビ、Youtubeやライブ配信といったある程度決まったフォーマットで展開されることが多い。
音声SNSにおける発信のフォーマットが決まっていれば、定着はするのかなと思われる。
RadioTalkとかは録音中に「お題」を提供する機能があり、音声発信の難易度を下げている努力を感じる。
5.録音するための機材、編集ソフトがない
現代であればスマホのマイクで充分なのだが、音質や編集に拘る人は、
一旦録音する→編集する→投稿する
というスタイルでやりたいと考えるのではないか。
クオリティが高いものは確かに満足感が高いのだが、音声SNSアプリの本質はそこではない気もする。
こういった弊害がつきまとうように思われるが、これら課題の解決案をアイデアや機能面から考えてみる。
1.褒める行為を促進する
2.どんな話をするか?をアプリ側で提案する
3.積み重ねる功績を見せる
4.録音画面にメモ機能をつける
5.録音時間に制限時間を設ける
6.編集機能
1.褒める行為を促進する
とにかく褒める。
いいね!以外のポジティブな感情を発信者に与える。
「優しいね」「かっこいいね」「きれいだね」など、声に対する感情は文字ベースよりも多様であり、受け止め方もひとそれぞれである。
facebookを見てて思うのだが、多様な感情表現が用意されていていい感じだ。
コンテンツに対する批判を無くすことはできないが、こういった「褒める行為」を促進するUX設計が有用ではないか。
2.どんな話をするか?をアプリ側で提案する
話題を振るAIファシリテーターのような機能があってもいい。
「ちょっと学校の近況教えて?」とか「アイドルで今一番推しは誰?」みたいに個人情報に則って提案してくれれば、
たった一言「補修受けててまじむりぴ」とか「●●ちゃん!ライブ毎回行ってる」と録音してくれるのではないか?いや、そんな簡単じゃないか…
3.積み重ねる功績を見せる
数字だけではなく、バッジやトロフィー、肩書みたいなもので投稿を称えるようなマイルストーンは有効だと思う。
noteもそうだし、niconico動画もPlayStationもそういう文化があって個人的なモチベーションを維持するために必要かもしれない。どこまで重要視されているかは疑問ではあるが。
4.録音画面にメモ機能をつける
RadioTalkの「お題」機能と似たようなもの。
5.録音時間に制限時間を設ける
Twitterの文字数制限のように、録音時間制限を設定できるようにする。
30秒、1分、2分、3分…ダラダラ話すより論理的かつ的確に発言できる。
なんか就活の面接練習みたいで脂汗が出てくる…。
6.編集機能
ボイスメモアプリのように、音声の簡単なトリミング、EQ、コンプの設定は可能にしたい。
音質に関しては、最近スマートフォンのマイクが良くなっているという話を聞くので問題ないだろう(もちろん、環境音が反映してしまうのは場所の問題だったりするのでマイクの所為ではない)。
読んで頂きありがとうございました。
よろしければ次回作も読みに来てください。
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