絵本感想ストーリー「あなのあいたおけ」

失敗日記 
 5月16日
係長が、取引先に間違った書類を送付してしまった。今日は係長が有給休暇で不在。仕方なく2枚の書類をアサイチ車で飛ばして持って行く。人のフォローは難しいな。帰り道、メンバー5人へ鯛焼きの差し入れを買った。

 5月18日
先日は係長の凡ミスだった。今日は自分が納期の勘違いをしてしまい、お客様にご迷惑がかかる。別の支店に問い合わせたら、何とか在庫を回してもらえそうだったから、アサイチ車で飛ばして支店へ行った。お客様はあたたかくご容赦いただいた。ほっとした。なぜかイチゴを頂いたのでみんなで分ける。

 5月24日
出勤時間、1時間遅くても良かったのに、いつも通り出勤してしまった。事務所に着いてから、時間がもったいないなと思ったので改めて会社周辺を歩いてみる。オープンしたての定食屋を発見。割引券を配っていたのでみんなの分をもらってきた。

 5月28日
けっこう雨が降った。それなのに靴に水がしみて辛かった。仕方なくその場しのぎの靴を買いに行った。知らなかったが雨の日セールをしていた。ほぼ同じ靴を半額で買った。

 5月31日
後輩の体調が悪そうだった。「いや、大丈夫です」と頑張っていたものの、電話の応答が乱暴になってきて、ペンを持つ手も止まりがちになってきた。吐き気を我慢しているようだった。だから顔色がとても悪い。早退するように促すと力なく頷いたが帰宅する体力がなさそうだ。
「部長、病院へ連れて行きます」

 診断結果は胆石があっての膵炎だそうだ。医療の知識が無い自分は後輩が、自分の差し入れで病気になったのではなかったのだと知って単純に良かったと思った。後輩はそのまま緊急入院した。後輩が担当する顧客への通知を一旦会社に戻って作成したあと、後輩の家族と恋人に連絡を入れた。
 思いのほか症状は悪く、2週間以上の入院加療となるらしい。

 病院で後輩の家族が来るのを待った。後輩の恋人には、詳細をメールした。多分明日になったら幾分か、後輩の意識も鮮明になるだろう。

 部長から
「会社の周辺状況を一番よく知っているのは君だから、良かったよ。変な町医者に連れて行ったら、アイツ、もっと酷いことになってたかもしれないからな。しかしよく、入院が出来る消化器科の町医者なんか知ってたなぁ、いやご苦労さん。ありがとう。」
と言われて、一人で照れていた。

 自分は穴の開いたバケツのようだと、よく思う。
公私ともに沢山間違って、間違いの倍以上の修正をし続けているのだ。昨日の失敗を今日片付けて、そしたらまた今日、何かを失敗するから明日やり直す。そうやって8年が過ぎた。走り回っていた8年間には、道が出来ていていて、自分なりの地図が出来上がっていたらしかった。誰かを救うナビ付きの。

 自分の知識が役に立つことを、部長はじめ職場のみんなに、教わった。穴開きバケツも、万が一の時はバケツになれる。

プレム・ラワット作 しろいあや絵 あなのあいたおけ

 自分のことは自分が一番よく知っていると、特に病気になったら思います。そして普段したことのない自分との会話が始まります。病気の時の自分は必ず言います。「アンタの思い込みよりも診察行った方がいい」と。自分の特技や強みは、他人に教えてもらうものなんですね。


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