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#詩

詩#4 声

詩#4 声

霧は まだ晴れない

対岸の街が消え
人が消え
ぬれた橋の表面を
車は一台ずつ走り去ってゆくけれども
運転席の窓はどれもからっぽ

川は わたしをさえぎる
うかぶ桃色のネオンサインの文字と
ときおり姿をあらわす黒い鳥の群れ

ひろがりつづける水の流れの前で
わたしは いつからここに立っているのだろう

  ひだりへまがりますごちゅういください

無人のトラックが落としてゆく機械の声

霧が晴れない

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詩#3 君のうた

詩#3 君のうた

君のうたは
君のこえ
わたしと君とをつなぐ
透明な波
ふるえる喉
ふるえる耳
君のからだの響きが
わたしの芯を熱くする

君のうたは
君のこえ
ふれるとあたたかな
血の通ったからだ
怒ればこわいし
酔えばかわいい
リズム打つその手のひらで
わたしにもふれてほしい

いつかきみは消え
君のうたも消える
鳴らないピアノの前で
わたしは泣くだろう
君のうたをさがすだろう

だから 今
君にわかるように伝

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詩#2 迷子

詩#2 迷子

あなたがいないから
わたしはおいてきぼりにされた子ども
心細さに泣きたいけれど
唇をかみ せいいっぱい目に涙をためる

あなたがいないから
わたしはあなたの姿を人ごみに探しつづける
会えるわけないや とうつむくたびに
もしかしたら と希望をいだく

あかりが灯り また夜がきて
大人だから
ひとりで夕飯も食べ
歯みがきもして
十二時には眠りにつくのだけれど

ほんとうはわたしは
布団をけ

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詩#1 魚の目

詩#1 魚の目

          

魚売り場の平台には
イシモチ キンメ
アユ エボダイ
もう動くことはないけれど
透明なラップにぴっちりと包まれて
死んだ魚の片目がならぶ
天井のライトを見つめたまま
ひかる
きれいなのだ
とっても

ガラスケースに映ったわたしの顔は
不満と不機嫌をかろうじて隠し

認められたいのに
認められない

しなびた葉っぱのようなこの思いを
いつまでもすてられない

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