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詩#4 声

霧は まだ晴れない

対岸の街が消え
人が消え
ぬれた橋の表面を
車は一台ずつ走り去ってゆくけれども
運転席の窓はどれもからっぽ

川は わたしをさえぎる
うかぶ桃色のネオンサインの文字と
ときおり姿をあらわす黒い鳥の群れ

ひろがりつづける水の流れの前で
わたしは いつからここに立っているのだろう

  ひだりへまがりますごちゅういください

無人のトラックが落としてゆく機械の声

霧が晴れないかぎり
街はなく
人もいない

わたしは いつまでここに立ちつづければいいのだろう

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