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障がい児者の保護者の居場所うさぎカフェの備忘録

ここは週に2回開く「保護者の居場所うさぎカフェ」。うさぎはいませんが(笑)カフェと団体のシンボルがうさぎなので「うさぎカフェ」です。
運営は、障がい児者の親の支援をする認定NPO法人ペアレント・サポートすてっぷ。岡山県倉敷市にあり、私はそこの理事長です。
知られているようで知られていない、このカフェでの日常や保護者の支援についての私の考え方、大切にしていることを雑記的に綴っていこうと思います。

今日の日替わりスイーツはりんごとメープルシロップのシフォンケーキ。ふわふわ、やわらか。

今日は雨ですが朝から赤ちゃん連れのお客さんが来られています。昼からは福祉大学の学生さんたちや、支援者の方の予約も入っています。今日のメニューは天ぷら。キッチン担当が朝からせっせと揚げてくれています。
もうコロナも終わりだという感覚があるからでしょう、この4月からは連日、たくさんのお客さんが来られています。ああ、ようやく日常が戻ってきた、そんな感じです。

誰でも入れるわけではない、カフェ


うさぎカフェは、障がい児者の親と家族、そして支援者や法人の関係者しか入れない、セミクローズドのカフェです。コロナの間はできませんでしたが先週から、部屋の真ん中に大きく机を並べることにしました。コロナ対策でパーテーションで区切りまくり、机と机も離すようにしていたレイアウトから、ようやく元の、大家族の食卓的な感じに戻すことができてほっとしています。

うさぎカフェの大家族的テーブル配置。初めての方同士でもそんなに圧迫感はありません。


うさぎカフェをセミクローズドにしている理由


ここで交わされる会話はやはりセンシティブなものが多く、誰か無関係な人が聞いていると思うとなかなか話しづらいことも多いです。子どもの障がいの話はもちろん、夫婦の不和、学校とうまくいかない話、虐待の可能性、親自身のメンタルヘルス等、話の内容は多岐にわたります。しかしこのカフェでは関係者・理解者しかいないので周囲への気兼ねは、ほぼ要りません。そして場合によっては、他のお客さんが声をかけてくれたり、参考になるかもと自分の似たような状況の話をしてくれたりします。セミクローズドの場にすることで、そのような環境を維持できています。

私たちはここで、来られた方にかなり受容的なかかわりをします。基本的には、お客さんのお話を否定しません。来られる方の多くは「●●について教えて欲しくて」と、何か来所の理由を持ってこられますが、本当の心の底では気持ちを分かち合える仲間を求めていることが大半と思います。「わかるよ」と言ってもらいたい。それも、本当にわかる人に、それを言ってもらいたくてきているのです。そしてもう一つ言って欲しいことは「それでいいんだよ」ということです。

昨今「居場所」を作りたがる人はとても増えているのですが、「居場所」は決して万能ではなく、手入れせずに放置するとそこで傷つく人も出てきます。他の来所者との摩擦が起きるからです。しかし、うさぎカフェは、あまり摩擦が起きにくい場です。スタッフが受容的なかかわりをするのを、他のお客さんがそばで見ているので、ここに来られる方は自然と、似たような関わり方をしてくれるようになります。

天ぷら、たけのこご飯のランチ

肯定する言葉をかける


言って欲しいことの二つ目「それでいいんだよ」は、つまり肯定する言葉です。親たちは子育ての中で様々な決断を求められます。例えば先日カフェで聞かせていただいたのは、お子さんをふつうの保育園に入れるのではなく児童発達支援センターに通わせることを選んだというお母さんのお話でした。

その方は、事情があってお子さんの進路を一人で決めるしかない状況で、それでもご自分なりによく考え、色々迷った末に「今の我が子に必要な場は、ここだろう」と決断したのです。自分ひとりで決めた以上、その道が間違ってたと思いたくないという本音が、お話の中から見えてきました。相談の主訴はそもそも違う話だったのですが、お話しているうちにその方は自分で気が付かれたのです。「私は、自分一人で決めてしまったことについて気負いがあって、この判断は正しかったと思いたいんだと思います。だから、センターの先生にも、そう思わせてほしかったんです」

うさぎカフェに来られる方の中には、私たちと対話しながら、ご自身で自分の本当の気持ちに気づき、自ら答えを導き出される方が結構、いらっしゃいます。「私は、こう言ってほしかったんですね」と。「だから、今日ここに来たんですね、きっと。“それでいいよ”と背中を押してもらいたかったんです」と。

一生懸命考えたという事実は変わらない


私たちは言います。「一生懸命悩んで出した答えに正解も不正解もないよ」「結果がどうだとしても、判断ミスだったと思えばやり直しはいつでもできるんだよ、手遅れなんてないんだよ」「出た結果がどうであれ、あなたのがんばりが消えるわけじゃないんだよ」

子育てとは、子どもと向き合うこと。それは実は子どもを通して自分の心に向き合うことです。私たちは、訪れた方がご自分に向き合うお手伝いをほんの少しだけさせていただいているつもりです。もちろん、まずい対応の時も中にはあります。でも、とにかく私たちは、他の誰があなたを否定しても、私たちは、私たちだけは、あなたの味方なんだよとお伝えすることを、いつも大事に考えて、今日も誰かがカフェを訪れてくれるのを待っているのです。



うさぎカフェの玄関。ふつうの民家を借りて1階をカフェスペース、2階を法人事務所として使っています。1階は様々な保護者向けイベントの会場や、会議の場としても使います。

ペアレント・サポートすてっぷの活動について


ホームページをご覧ください。最新のイベントはホームページ内「ブログ」に書かれています。私たちの活動は寄付によって支えられています。活動の応援をお待ちしています。

https://parent-support-step.jp/



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