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シベリア地方では・・・

超能力者の故郷

私のモスクワ駐在員時代のソ連共産党書記長はブレジネフという人でした。あまり知られていませんが、長期に安定した政権を維持しました。
アフリカから来た友好国の外交団と一緒に写真を撮って御用新聞のプラウダの一面に載せるのも彼の重要な仕事の一つです。
しかし今朝は、昨夜の深酒が残って起きられません。
そんな時、イワノバさんが呼ばれます。
彼女が書記長室に入って30分経てば、同室から万全の健康状態で書記長が現れます。

「同志諸君、おはよう!本日のスケジュールについて報告して下さい」

シベリア地方には、帝政ロシア時代から超能力者が現れていました。
中でも、もっとも有名な怪僧ラスプーチンは、ロマノフ王朝のエカテリーナ女帝時代に宮中の寵児として重く用いられました。
何故なら、ロマノフ王朝には王朝の男子にのみ出現する血友病という難病があり一旦出血が始まるとそれを止めることができません。宮中の家具はすべて角という角を丸くしてそれに備えましたが、歯茎から出血などということもあり、王位の継承問題に暗い影を落としていました。
一旦出血が始まると、急遽ラスプーチンが呼ばれました。
彼が祈りを開始すると、ある種の結界(フィールド)が出現して、その中では皇太子の出血が止まるのです。 

こうして、ラスプーチンはロマノフ王朝の重要な地位を占めるようになりました。

女帝側近の貴族たちは、やがてすべての権力がラスプーチンに行くことを恐れて、彼の排除を決意します。
宴席に招待して、毒入りの饅頭を勧めます。
いくつか食べても一向に応えないラスプーチンを見て、貴族たちは、恐怖に駆られます。

「何故、毒が効かないのか?」
「彼は毒を盛られたことに気が付いているに違いない」
「今、止めを刺さないと、我々が破滅する」

宴席に引き返した彼らは、拳銃でラスプーチンを撃ち殺します。
別室に下がって、気を沈めた彼らが、死体の処理に宴席に戻ると、ラスプーチンの姿がありません。
宴席の部屋の暖炉の奥には屋敷の外に出られる秘密の通路がありましたが、血痕がそこに続いています。

「誰も知らないはずなのに!」
「死んでなかったのか!」

外に出た追っ手は、ネヴァ河の岸辺を蹌踉とさまようラスプーチンに追いついて止めを刺し、ネヴァ河の氷を割って水中に沈めます。1キロほど下流の氷の割れ目から、血まみれの腕がヌッと突き出して・・・

後半は、酒の席で話されるおとぎ噺のようなものですが、ロシア人がラスプーチンに抱いている超絶的な生命力のイメージを伝えています。
ラスプーチンの名前があまりに有名になったため彼の子孫たちはやむなく名前を変えることにしました。
つまり、「ラス」を取って「プーチン」に・・・

もうお分かりですね。

ここまでが一つの「アネクドウト(小噺=寓話)」なのです。
ロシア人の宴席では、人の知らない「アネクドウト」を披露することが、人気者になる秘訣です。

さて、シベリアから来たイワノバさんも超能力者です。当時白黒テレビしかありませんでしたが、テレビの中で、イワノバさんが、透明な半球のガラスの中のマッチ箱を手をかざすだけで、自在に動かしてみせるサイコネキシス(念動力)の実演を見ました。

アメリカとの冷戦の中で、ソ連とUSAが大真面目で超能力の研究を進めていたころの話です。

奇跡の抗癌剤

シベリアはあまりにも厳しい気候なので、農業を行うには、適地ではありません。
地球上でもっとも寒い村というテレビ番組を見たことがありますが、マイナス90度Cという記録があるそうです。
シベリアに流刑になった政治犯の実態が赤裸々に綴られたソルジェニツィン氏の「収容所列島」という本でも、「マイナス40度以下は屋外作業禁止」という記述が出てきます。
たとえ囚人といえども、マイナス40度以下では屋外作業はさせないのです。
夏になれば、茫漠たる草原には、野生の薬草類が一斉に繁茂します。

「蝦夷ウコギ」という植物をご存知でしょうか、有名な朝鮮人参もウコギ科の植物です。
宇宙飛行士ガガーリンやチトフが、アメリカを尻目に宇宙の有人飛行を行い、ソ連宇宙技術の先進性を見せつけていた頃、「長時間、宇宙空間で宇宙線にさらされた彼らは、発ガンしないのだろうか?」と考えた人たちがいました。

特にやや遅れて参入した中国は、熱心に其の謎を解こうとします。そしてついに、

「シベリア産野生の蝦夷ウコギエキスを飲んで
発ガンを防いでいるらしい。」

という結論に達します。
アメリカ・カナダ国境に次ぐ長い国境線を共有するソ連と中国の間で、蝦夷ウコギの苗をそっと越境させることは、それほどの難事ではありません。
早速、蝦夷ウコギの苗は、大量に増やされて、中国人の宇宙飛行士にも処方されました。
が、まったく効きませんでした。

つまり野生であることが、重要なのでした。蝦夷ウコギの根は、地中の養分をとことん吸収します。
同じウコギ科の朝鮮人参の周辺にはあまり雑草が生えないぐらいです。
蝦夷ウコギがすばらしい効果を発揮するためには、自生している場所そのものが一番重要なのでした。
自生している場所の土壌に含まれる栄養分、特にある種のミネラルが絶対に必要な条件になります。
漢方薬でも、畑で栽培された薬草はほとんど効果が出ません。
自生している深山幽谷の土壌に含まれるミネラルが決め手なのです。
朝鮮人参も、栽培されたものは、韓国のお土産として安く売っていますが、朝鮮人参の聖地といわれる白頭山(中国名:長白山)に野生している朝鮮人参(高麗人参)は大変貴重なもので発見されたときは、24時間3交代で軍の兵士が歩哨に立ちました
やがて朝鮮一の人参掘り名人が呼び寄せられ竹べらで周囲の土を崩しながら一本の根も切らずに掘り上げます。
焼酎の大瓶に漬け込まれたそれは、毛沢東の誕生祝として中国に贈られました。
中国からは、ベンツ60台がお返しとして贈られてきました。
1970年代に平壌を訪問した人は平壌のタクシーが全てベンツであることに驚きました。

シベリア地方は、奥深い謎に包まれていました。

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