2.影響を受けた本(1)『あけるな』

『あけるな』谷川俊太郎・作 安野光雅・絵

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2.影響を受けた本(1) です。かっこいち、です。
つまり、次回も2.をやります。
2.がいくつか続きます。
ふわっと編年形式で続きます。
なぜなら影響を受けた本なのだから。
一冊で終わろうはずがございません。
周囲の影響を受けるのはきっと今も変わらないのでしょうが、今以上にスポンジボブのようにいろんなものを吸収しては痛い目をみたり嬉しがったりしていたでしょう。今でも忘れないどころか、少なからず今のナニカを形成する礎になっ(てしまっ)た本のいくつかを複数回にわたって記事にします。

さて、『あけるな』。御存知の方も多いかと存じます。
目の前に扉が立ちはだかり、扉を開けるとさらに扉があり、またその先に扉がある。扉には〈あけるな〉あるいはそれに類する言葉が掲げられて行く手を阻みます。煉瓦の壁と格子を噛ませた頑丈そうな扉。頑丈そうだけれども開くのは開く。たやすく開く。厳めしい迷宮をそれでも先へ先へと進むと途端に外らしき場所に出、そこには椅子に座る男の背中。
その背中にも扉があり、さらに行く。やがて、それまでとはまったく様子の異なる近代的な扉が現れ、そしてそれは開かない。〈あけるな〉と掲げられていないのに開かない。大声で叫び続けるとやがて扉が開き、母の声「あら、おかえりなさい」
人形の姿。 額縁の中で足を投げ出し人形独特の陶器めいた面差しで座っている。人形は色鮮やかで立体的でもあるが、額縁の中に描かれる家具や調度品は輪郭を線で辿っただけの描きかけの様子。

扉、迷宮、人形。不条理ながらも生々しい。
どこかから脱出して帰還したのだろうか。それはほんとうに帰ったのだろうか。
姿を現さない声だけの母。
あるいは人形が母なのか。
まず、扉を開けに開けていたのは誰なのだろうか。
あるいは何なのだろうか。
焦燥と疑問はあるものの迷いも疑念もなく機械的に進むこの視点の持ち主は一体何なのだろう。
非現実に目まぐるしく展開する描写に、絵本を捲る側に絡みつく極めて現実的な冥い情動。

と、そこまでの言葉は当時知らなかったけれども、言いしれぬ不安、「あら、おかえりなさい」とその母親が言った場面でも、胸を撫でろし、よかったとはならなかったはずだ。まだ煉瓦の迷宮にいるような。

確実に影響を受けている。
今でも反芻し、磨いているのかしがんでいるのかよく分からない持て余しぎみの要素の多くは『あけるな』の中にある。

最後に、YouTubeに読み聞かせの動画があったので共有。


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