『Captain Miller』
監督:Arun Matheswaran
出演:Dhanush、Shiva Rajkumar、Priyanka Arul Mohan、Aditi Balan、Sundeep Kishan
2024/1/12公開のタミル映画。
イギリス植民地時代、傍若無人なイギリス人の振る舞い、イギリス政府軍と村の青年たちの闘争……と書くと、当然『RRR』が想起されるわけだが、この映画の肝はそこではない。
あくまでもメインの筋は、王の支配下で理不尽な扱いを受ける低カースト者とその抵抗の物語なのだ。
だから、この映画を「タミル版RRR」なんて言ってしまうと、非常に安直だと思う。
この映画に一貫していた「アンチ権力」というメッセージは極めてタミル的な発想だと思う。
「タミルらしさ」が何かという問いに対して、この地にまだ2年しか住んでいない私が述べるのはとてもおこがましいが、答えの一つに「権力への反骨精神」があるように思える。
あるいは、「タミル人であることの誇り」とか。
例えば、中央政府が推し進めるヒンディー語教育の強制に対して、タミル・ナドゥ州は強い不快感を示し、反対の意向を表明している。
実際にタミル・ナドゥではヒンディー語を解する人は極めて少ない。
そんな感じで、タミル人には自分たちが属するコミュニティの文化や伝統に誇りをもち、それを奪おうとする勢力への対抗意識が強く根付いていると言えるだろう。
そう考えると、この映画は最初から最後まで「奪い返す」物語だった。
低位カーストの村人たちが、王に奪われた土地を奪い返す。
あるいは、イギリス植民地軍から宝の像を奪い返す。
あるいは、王とイギリス植民地政府から村の平和を奪い返す。
主役を演じたDhanushは、タミル映画で活躍する人気俳優の一人。
『Captain Miller』では素晴らしい演技を見せてくれた。
素朴で弱々しい村の青年、植民地軍から逃亡した後の荒々しい無法者、そして村を救う正義のヒーロー。
王の娘が、父親を殺した人物たちへ復讐を誓うシーンで映画が締めくくられる。
つまり、続編の存在が暗示されるような終わり方だった。
スクリーンで再びキャプテン・ミラーの活躍が観られるのが楽しみである。
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