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女王様と初対面_燕岳 ①動機・準備編

上高地や涸沢、そして立山黒部が好きな私が…いつから燕岳を目標にしたんだっけ?と我ながら不思議に思った。

You Tubeで登山の動画がこれだけたくさんある現在、数々の美しい動画を見ては、自分も登ったような疑似体験をして…その景色の素晴らしさはすでに画面越しではあるが知っていた。

普段はソロハイクをこよなく愛する私だが…常に下山時の脚のトラブルを気にしているし、昨年は誰もいない登山道で虫の襲撃に遭う経験もしたので、自分のステップアップや安全登山という目的で登山ツアーを利用することも定期的にある。
ソロの山行計画を立てる時にもツアーの行程が参考になる。よって、時間があるときは結構頻繁にツアーの案内を確認している。

燕岳登山のツアーはたくさんあるけれど、登山口である中房温泉に早朝(6時とか7時とか)に集合し、燕山荘に1泊して下山する行程がほとんど。でも夜行で登山口に集合してから、急登で知られる合戦尾根を登り切ることは私にとってはかなり高いハードルのように感じる…気になるものの半分憧れのような存在で、SNSのどこかに「いつか登れたらいいな」みたいなことを書くに留まっていた。

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昨年の夏山登山の目標は燕岳ではなく、山形県の出羽三山のひとつ、月山に定めた。人生に行き詰まりを感じていた私にとって「生まれ変わりの旅」という、出羽三山のキャッチコピーに心が動いた。
結局は、上記の虫刺され事件で中止にしたわけだが…この時に色々と調べた結果、移動の時間がかなり長く、仕事で再起をかけている現状もありスケジュールが組みづらく、改めて今年の目標にする気持ちにはならなかった。

昨年5月に森のリトリート®️に参加した時の参加者で安曇野に移住された方がいた。その方が秋に「燕岳に登った」とSNSで報告されているのを見かけた。
自分にとってハードルが高いと感じていた場所へ、あっさりと登れてしまうんだな…と思った。私より年齢の若い男性なので比較しても仕方がないのに、心が動くのを感じた。

昨年11月に訪れた穂高養生園は、JR大糸線穂高駅から中房温泉に至る途中にある。養生園のプログラムで原生林を散策したその場所は、燕岳の隣にある有明山の登山口でもあった。
・・・燕岳が、急に身近に感じられた。
行ってみたい、と思った。特にほかの理由はなかった(上記の知人があっさり登ったことに対抗心?がゼロだったかというと嘘かもしれないが)。
養生園から帰って数日後には、燕岳のツアーを毎年7月に開催している会社へ、次年度の予定はいつ頃か?という問い合わせをしていた。
(→そのツアーに結局参加することになったというわけである)

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夏山の目標が定まると、普段の行動が変わる、というのは一度経験している。
(noteには結局書けていないが)2021年、思えばこの時もメンタルヘルス不調に陥りかけていた。低山である高尾山の下山でも膝が痛くなっていて、もう山歩きもやめてしまおうかと思っていたものの…本当にそれでいいのか?と諦められず、最後の?チャレンジとして身体づくりからやりなおし(膝の負担を減らすために4kg減量した)、再び涸沢の地に立つことができた。
これは”自分のためだけ”に努力をする、という挑戦だった。

物心ついた時から、誰かの役に立つことなら頑張れる、と信じてきた。役に立つ、認められることで自分の存在価値を決めてしまっていた。自分の好き・やりたいことがずっとわからなかったから、内から湧いてくるそれらを動機に行動するということがなかった。努力の方向性も、不安や足りないところを埋めるため、認められるために必要だから、というものだった。
進路や仕事を選ぶ時も、自分がやりたいうんぬんじゃなくて、その場面ならやらねばならない状況に置かれるはずだから動ける、などと本気で思っていた。(そりゃ行き詰まるわけだ)
(書いてみて思ったが、認められるために頑張るということも、生存戦略としてはある意味”自分のため”ではあるな…)

私が山に登ることは、誰の役にも立たない、ずっとそんな気持ちがあった。仕事が大変過ぎて心が折れそうになっていた時、自分の好き勝手のために時間を割くことに罪悪感はあったけれど…このとき、ただただ自分のため=自分の内側からやりたいと思うことのために頑張れる自分になりたい、と思ったのだった。
この時が、自分の人生を生きたいと願い、そのためだけに行動した最初の?ことだったのかもしれない。

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昨年11月に燕岳を視野に入れたことで、標高差1000m以上、しかもロングコースではなく急登というのが指標となったため、12月の山歩きでステップアップを図った。丹沢大山、そして塔ノ岳…順番にクリアした時点で、「もしかしたら行けるかも」と思った。
今年4月の御前山は急登の練習として(自信がなく)ツアーを申し込んでいたが、結局ツアーは参加せずにソロで歩けたことも自信になった。

脚の痛みや補給の仕方、ペース配分などの課題は常にあるので、普段の山歩きでも試行錯誤をした。夏山では水が重い(1.5-2L持参)ので、そのほかの荷物をいかに軽くするか。それらの試行錯誤が悩ましくも楽しかった。

ただ、一つだけ準備しきれなかったのが「体重管理」「体力」であった。
これが3年前と大きく違うところだった。
(・・・まったく減量できなかった!)
更年期の問題はやはり無視できず、心や身体のキャパが狭くなっていることを痛感した。HRTを始めることにしたのも、できるだけ心身の状態を底上げしたかったから。
普段の筋トレやストレッチなども、いくら自分のためといっても始める前にすでに気力が尽きてしまって、できた日の方が少なかったかもしれない。3年前は仕事も大変だった中でも両立できていたのに…
そこで今回は、山に登る回数を増やすこと(歩き込み)によってトレーニングすることにして、1週間〜10日に1度は山を歩くことにした。
1ヶ月前の御前山で、体幹がブレブレだったことに危機感を覚え、ようやく体幹だけ意識してトレーニングをするようになったものの、燕岳登山に余裕をもって臨む準備としてはまだ不十分な気がしていた。
普段の早歩きでも、膝の違和感や下腿の痛みが生じることもあった。

そこで今回はソロハイクではなく、ツアーに参加して、適切なペース配分はガイドさんにお任せし、脚の痛み・転倒などのアクシデントに対する不安も軽減したうえで登頂を目指すこととした。

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夜行バスで眠れないまま登ろうとして、高山病に近い症状が出て登れなかった経験も過去にあった。そこで今回はツアーの前日の仕事は休むことにして、登山口の近くの有明荘(標高1380m)に前泊することにした。燕山荘が2712m。高所順応として十分かはわからないけれど、夜行バスよりコンディションが整うのは確かだろう。

さて、あとは天気だけ。。。