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辛かった「ひとり○○」 トップ3

私は20代前半から今まで友達も彼女もいなかったため、どこかに行くとなると必然的に「ひとり○○」になります。

「ひとりでどこまで行けるか?」みたいなことがたまに話題になりますが、私はひとりでどこへだって行くことができます。というか、ひとりで行けないとどこへも行けなくなってしまう。

しかし、そんなひとり○○マスターである私も、辛かった「ひとり○○」がいくつか存在します。ということで、トップ3を紹介します。

ちなみに「ひとり映画」とか「ひとり焼肉」「ひとり夏祭り」とかは論外です。その辺はトイレに行く感覚で行けます。それでは行ってみましょう。

※ちょっと長いですが、ずっとひとりで過ごしてきた男のドキュメンタリーだと思ってもらったら幸いです。

3位 ひとりいきなり営業

私は高卒でフリーターをしばらくしたあと、ある会社に営業社員として中途採用されました。

「中途採用あるある」なのですが、「中途採用は即戦力」という大義名分のもと、誰も相手にしてくれません。質問しても「今忙しい」言われます。放置です。先輩や上司は早々に外回りに行ってしまいます。

入社して1週間、ずっと商品を磨かされていたのですが、それが終わるとやることがなくなりました。

営業社員のクセにひとりポツンと事務所に残っていると社長が睨んでくるので、営業に行くことにしました。最初って教育とか先輩に同行とかさせてくれないんですかね?

「社会は厳しいな」なんて思いつつ、ワケのわからんまま新規開拓。5件目くらいで話を聞いてくれる人が出てきました。

店の事務所に連れていかれ、店のオーナーとふたりで商談です。雑談から始めるのでしょうが、そんなことする余裕がありません。ぎごちない名刺交換をしたあと、机にカタログを広げます。

「で、これはこういう場合どうやって使うんですか?」オーナーは私に聞きます。

「え? す、すみません。持ち帰って上司に聞いてきます……」私はオドオドと答えました。

「…………ああ、そう。で、値段が書いてないけど、いくらなの?」

「あ、ああ……。す、すみません。き、聞いてきます」

「この商品の納期は?」

「あ、ああ……」

「………………」

「………………」

「じゃあ、仕事があるので」

「す、すみませんでした……」

初めての正社員としての仕事はこんな感じでした。

「こ、これが社会か……」と、かなり辛かったのを覚えています。上司に報告するとなんか知らんけどこっぴどく叱られ、そのまま放置され続けて、3ヶ月後に辞めました。

2位 ひとりコンサート

ビーチボーイズが大阪市立体育館でコンサートをする、ということで大ファンの私はさっそくチケットを取りました。

一応解説しておくと、「ビーチボーイズ」というのは1960年代に全盛期を迎えたアメリカのバンドです。今はおじいちゃんです。

当然、客もじいちゃん、ばあちゃんばっかりだろうと思いました。ここ一番の盛り上がりでは入れ歯が飛び交う、老人ホームのような、のほほんとしたコンサートを期待していたのです。

会場につくと、案の定並んでいるのはそこそこの年齢の人ばかり。3時間前くらいに着いた甲斐もあって、100部限定のサイン入りパンフレットも入手でき、ご機嫌でした。

ワクワクしながら席につき、これ見よがしにサイン入りパンフレットを読んでいると続々と人が入ってきます。年配の方がやはり多めで、ホッとしました。私はそのとき20代前半でしたが、同年代で楽しく生きている人がとにかく嫌いだったのです。

「うわ……カップルや……」特にカップルはめちゃくちゃ嫌いです。視界に入れることさえ、イヤでした。

そのとき、最悪のことが起こりました。私が嫌悪するカップルがなぜか私の周りに続々と座り始めるではありませんか。

気がつくと私はカップル共に囲まれていました。四面楚歌とはこのことです。360度どこを見渡してもカップル、眼をつぶってもカップルの楽しそうな声。コンサートが始まりましたが、テンションがもうひとつ上がりません。

カップルはコンサート中もすっごく楽しそうです。私は初めてのコンサートということもあって、最後までいまいち乗り切れず、「God only knows」で静かに涙を流すのみでした。

カップルに心乱されているウチは「ひとり○○マスター」なんて名乗ってはいけないのかもしれません。

1位 ひとりUSJ(in クリスマス・イブ)

「USJの世界一のクリスマスツリーを見てみたい!」

こんな無邪気な思いが、あろうことかクリスマス・イブの前日に湧き起ってきました。

クリスマスが終わってもツリーは立っているのですが、彼女いない歴=年齢のクセにクリスマスが大好きな私は、「なんとしても聖なる夜に見たい!」と大変アホなこと考えました。

しかし、一緒に行く人がいません。

唯一、一緒に行ってくれそうなのは妹のみですが、本当に同じ子宮から産まれたのかと思うくらいのリア充なので、相手にしてくれません。

でも一応、妹を誘ってみました。

「死ね」とのことです。

クリスマスは楽しい行事ですが、世界のどこかで「死ね」と言われている人もいる、ということを常に頭の隅に置きつつ厳かに過ごしてほしいもんです。

仕方なく、ひとりで行くことにしました。

ユニバーサルシティ駅に着きますと、予想してはいましたが、カップルと家族連れだらけ。イブにひとりでうろついている変質者は私だけです。

ゲートに近づくにつれ、周りから放たれる強烈な幸せオーラと「お前は帰れ」オーラが強くなってきます。

ゲートまでの道でかなりの気力を吸い取られてしまった私。しばし、休憩です。

休んでいると、段々辛くなってきました。「私はひとりで何をしているのだろう?」「家で『ホームアローン』でも見てればこんな辛い目に合わなかったのに……」

しかし、もうここまで来たら「世界一のツリーを見ずに帰る」という選択肢はありえません。

切り結ぶ、太刀の下こそ地獄なれ。踏み込み行けばあとは極楽。

ここで宮本武蔵の名言が思い浮かんできました。「そうだ。入ってしまえばあとは極楽なんだ!」

USJに入る前に武蔵の名言を思い浮かべたのは古今東西、間違いなく私だけでしょう。

とにかくゲートが一番の鬼門でした。入ってしまえば、「彼女と一時的に離れているだけ」というフリができます。ゲートだけはひとりで来ていることを誤魔化せません。

なんとか入場することができ、溢れかえるカップルに揉まれながらもなんとか光輝く世界一のクリスマスツリーを見ることができました。

イブのテーマパーク。これこそ「ひとり○○」の究極系かと思います。

この経験で自信をつけた私はさらに「ひとりで過ごす」「誰にも頼らない」「誰も信用しない」という三大ダメスキルに磨きをかけることができました。

★★★

以上が辛かった「ひとり○○」トップ3になります。1位のだけはやめといた方がいいです。ただのアホです。

最後に尊敬する岡本太郎先生の言葉を紹介します。

孤独はただの寂しさじゃない。人間が強烈に生きるバネだ。
孤独だからこそ、全人類と結びつき、宇宙に向かってひらいていく。
芸術とか哲学とか思想なんて、みんな孤独の生み出した果実だ。

皆さんも岡本先生のように「強烈に生きる」ため、様々な「ひとり○○」に挑戦してみてください。

#エッセイ #ランキング #ひとり #クリスマス

働きたくないんです。