Part5 妖者の術｜忍者による人の心に忍び込む見た目の作り方

第5回サークル（Shinobi Design Community）で紹介する忍術は「妖者（ばけもの）の術」です。今回は妖者の術を含めたいくつかの陽忍（姿を表してスパイ行動をする忍者）の技を通して、忍者による信頼獲得のコミュニケーションの方法を紹介します。

忍者のコミュニケーション＝謀略の3ステップ

忍者におけるコミュニケーションの流れは3段階に分けられます。コミュニケーション＝謀略の目的は相手に自分のお願いを聞き入れてもらうこと。あるいは意図した行動に誘導することですが、その流れは①出会い、②会話、③目的達成となります。

①出会い
出会いは初めて会ったときの印象。つまり第一印象です。第一印象がいい人なら心を開いてコミュニケーションが取れます。第一印象が怪しい人だとコミュニケーションが円滑に取れず謀略を仕掛けることすらできません。

②会話
会話は相手とのコミュニケーションです。雑談、趣味や仕事の話、グチなどを通してお互いの仲を深めていきます。相手の性格や癖、弱点や強みが分かってきます。

③目的達成
目的達成は、いざ謀略を仕掛ける段階です。コミュニケーションを通して分かった相手の心理に寄り添ってお願いをしたり、行動を促します。

今回のサークルでは、謀略のファーストステップである①出会い「第一印象」について、人の心に忍び込み信頼を獲得するための忍術を紹介します。

会話を有利に進めるための第一印象を作る

人の第一印象はとても大事で、今後の自分のキャラクター設定（どういう人だと思われているか）に繋がります。第一印象は科学的に3秒〜90秒で決定されると言われており、その間の立ち居振る舞いや話す内容で、この人はどういう人か？というのが決められます。

なぜ第一印象からキャラクター分類分けがなされるのかといえば、人の脳はいちいち難しいことを考えたくないもので、パッと見の情報から「多分こんな人だ」と脳が推測分類分けをし、今後その人の言動を推測しやすくしたり、コミュニケーションを上手に取れるようにするため行っているのです。

第一印象については諸説ありますが、出会って3秒で大雑把な分類がされ、90秒で情報の裏付けが行われて自分のキャラクターが決定されると考えればいいと思います。陽忍（姿を表して行動する忍者）の勝負は、姿を見られてから90秒間で決まります。

謀略は笑顔で仕掛けるのがポイント

謀略の基本はまず笑顔です。万川集海に「忍術を職にする人は、優しく穏やかな顔付でいるように」とあります。謀略を仕掛けるにせよ、その土地の人から情報を聞き出すにせよ笑顔は大事だと思います。

『万川集海』巻第二 正心の条目
此の道を業とせん者は最も顔色をやさしく和らかにして、心底尤も義と理を正しくすべき事。法曰く、和顔は奇計の始めなりと。古語曰く、樊噲（はんかい）の怒りは楊貴妃の笑うて関門を破るが如し。

（忍術を職にする人は、第一に優しく穏やかな顔付にして、心根には正義と道理を正しく持つこと。司馬法に「笑顔は計略の第一歩」とあり、また昔話に「怒っていた樊噲（はんかい）が、楊貴妃の美しい笑顔に騙されて関門を破られた」ともある。）

心理学的には返報性の原理というのがあり、好意を示してくれた人に対しては好意で返そうとする人間の心理があります。これは、人間が社会を形成して進化してきた歴史が染み付いたもので、共存共栄のため与えてくれたら何かお返しをしなければいけないという心の動きです。

あらゆる人の信頼を獲得する「妖者の術」

妖者（ばけもの）の術は簡単に言えば変装術のことですが、忍者の変装は見た目をその職業に寄せるだけではなく、技術や立ち居振る舞いまでも変装する職業になりきることにこの術の極意はあります。

医者に変装するなら医者の衣装を着て髪型を作り、医術や薬方に精通して、必要があれば患者の診察や治療を行う。山伏に変装するなら山伏の袈裟をまとい、お経を唱え、お札を配り歩いたり薬を売ったりする。忍者はその場その時の状況に合わせて適切なものに化けていました。

妖者の術のポイントは①見た目、②職能、③振る舞いです。各ポイントを噛み砕いて、私たちでも使える忍術として解説していきます。

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