身体を絞めることで得られる力とは?【全身を繋げて使う:後編】

肩が凝る・腰が痛む…凝りや関節痛の原因になる動き方【全身を繋げて使う:中編】
↑中編はこちら↑

ブレが無くなる

膝を軽く曲げて腰を落とし、骨盤を水平にする。丹田に力を込めて張りを作り、お尻・脚回りを絞める。肩の力を抜きを落として手は腰(刀を差す帯のあたり)に添える。これによって身体全体が繋がった状態が出来上がります。

普通に立った状態と比較すると、四肢と体幹がしっかり繋がった状態に感じられると思います。

全身が繋がっている状態ですり足や忍び足(抜き足・差し足)を行うと、普通に歩くときと違い足先だけを適当に動かすことが出来ないので、丹田、腰回りの筋肉から足先までを繋げて丁寧に動くようになります。丁寧で慎重な動作は身体のブレを素早く感じ取れるのでバランスを上手に保って歩行ができます。

また、腰・体幹・腕が繋がってますので移動時に発生する上半身のブレも少なく安定感が高いです。現代スポーツのランニング・ウォーキングのように腕を振る動作は古武術においては体制にブレを生むことになるのでNGです。

少ないエネルギーで大きな力を出す

先述のように全身に繋がりを持たせると足先だけ動かすのは難しくなると言ったように、身体を絞めた状態では手や足などパーツのみを動かすのが不自由になります。しかし、単独で動かすのが難しいからこそ丹田を起点に全体で動くようになります。

身体全体で動くというのは、例えば腕に100%かけていた負担(労力)を肩や背中、腰回りも使うことで分散し、一部分が極度に疲れることを無くします。集団において、一人がものすごい量の仕事を背負うのは良くありませんよね?仕事は分担して労力を減らして行うものです。

〈力を発揮する点を分散する利点〉
①一ヶ所が極端に疲れない。
②疲れすぎないから回復が早い。
③回復しきれなくても他のパーツで補える。

浮きをかける感覚を得る

身体全体を絞めた体勢を作ると足で踏ん張っている感覚がなくなると思います。踵が少し浮いている(実際は接地してます)ような感覚になるのではないでしょうか?

おそらくこれが武術において“浮きをかける”と言われる状態です。浮きをかけた状態の何が良いかというと、次の動作に素早く移れる点です。

武術において動作は「移動・攻撃・防御」の3種類に大別できます。移動は重心を移動方向にズラして重力の落下エネルギーを借りて移動します。攻撃は移動動作に上半身の動きも連動させて威力を相手に伝えるように行います。防御は相手の攻撃を受ける、または流すように体勢を変化させます。

武術に限らずあらゆるスポーツ・運動は静から動の状態に変化します。短距離走なら用意スタートのピストルの合図が変化のタイミングですね。この変化で大事なのは静止状態から一気にアクセル全開な状態になることです。

他力を使う

身体を絞めた状態では瞬時に動き出せない、身体を動かせないように感じますが、それは現代スポーツの運動法に則っているからだと思います。

現代スポーツの運動法ではテクニックより筋力を大きく使いますので、走る動作でいえば走る前に脚を曲げるという予備動作があり、曲げた脚を思いっきり伸ばすことで地面を蹴りスピードを稼ぎます。

対して古武術的な身体操作では筋力を無駄に使わないように、静の状態から重心を前に出し、膝を抜き(膝の力を抜いて上半身の支えを崩す)重力の落下エネルギーを使って足を一歩踏み込みます。筋力も使いますが、垂直方向の落下エネルギーを前進するためのエネルギーに変換するための補助的なものだと考えられます。

〈古武術における筋力〉
①重力のエネルギーを意図した方向に変換して大きな力を得る。
②身体が(重力で)崩れないように支える。
③全身にある個々の筋肉を連動させ生み出した大きなパワー。

古武術では自分の力に頼らず、周りにある力を借りて大きな力を発揮します。それは重力のエネルギーだったり相手の力だったりです。一回一回の動作を止めずに連続で動くことで力を加算することもできますね。


日本古来の伝統的な古武術は、日本人が平地が少なく山々に囲まれた列島で田畑を耕したり、戦を繰り広げたり、走歩で長距離を移動するなどの歴史に見える生活、めったに肉を食べない食習慣、小柄な体型、安定しない食料自給といった条件が重なって編み出されたものだと思います。

そこには無理なく、どんな状況にも適応し、したたかに生きる力があります。必然的に力は持つものではなく借りるものとして認識していた昔の人に学べることが、この現代においてとても多いのではないでしょうか?僕はそう思います。

🥷忍者の思考と精神を身につけるべく、日々修行を行ってますので見届けてもらえると幸いです。あとお仕事のご依頼もお待ちしております🙇‍♂️。サポートは兵糧(ひょうろう)に使わせていただきます。 WEB:https://shinobi-design-project.com/home