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STU48と瀬戸内の青さについて

感謝しかない、最高に楽しい香川旅行だった。

GWが明けた5月、STU48が彼女達の劇場船STU48号と共に香川を訪れた。そのSTU48号での公演を見るために私も香川を訪れた。去年の秋以来の香川だ。もともと香川が好きでよく旅行していて、初めて瀬戸内でSTU48を見たのが香川なぐらい思い入れがある。今回の香川での船上劇場公演も是非行きたかったので、チケットが当たってうれしかった。そして約束された結論として、最高に楽しい香川旅行だったので記録としてノートに残すことにした。

5月11日の昼過ぎに飛行機で高松に着いて、そのままホテルにチェックイン。部屋からもSTU48号が見えた。公演まで待ちきれずに、とりあえず荷物を置いてSTU48号を見に行く。高松は晴れていて、夏みたいに暑かった。青く晴れ渡った空を背景に白く光るSTU48号は、近づくにつれてその大きさに圧倒された。実際に生で見たSTU48号は、想像していた以上に大きかった。外から見ただけでは内部にライブ出来る環境があるとは思えない。しかし船が目の前に存在するのは圧倒的な説得力があった。見上げる船の質量にやられて、とにかくすごいと感嘆するしかない。

前から、横から、後ろから、様々な角度からSTU48号を見た。やはりどう見ても中に劇場にあるようには見えない。しかし数時間後にはこの船内で公演を見るわけで、なんだか不思議な気持ちになった。

夕方になってSTU48号を再訪。乗船時間が近いので人も多い。チケットを確認してリストバンド交換、荷物を預けて、金属探知機のチェックを通ったら乗船だ。甲板に上がると瀬戸内海に沈む夕陽が見えた。天気も良いし最高の眺めだ。去年のGW、高松で陸上公演を見た後に、幸せで胸いっぱいな気持ちのまま海まで歩いて、ほぼ同じ場所から夕焼けを見たことを思い出した。あれから1年が経ったのだ。

陽も弱まり風が心地良い。広島に停泊しているときのSTU48号からの眺めがどんなものなのか知らないが、とにかく香川は最高だ。公演が始まる前から瀬戸内に感謝したくなる。せっかくなので話題の500円の水を記念に買った。

GWの握手会において、甲斐心愛さんから配信で見るのと船で見るのは全然違うと言われ、それは当然そうだろうなと思っていても、実際に船で見ると、前方で見ていたこともあって劇的に迫力が違った。そして公演に集中していると海の上にいることを忘れてしまう。香川は稀に揺れていることがわかる程度で、意識しなければ揺れに気付かない穏やかさだった。

STU48の船上劇場公演『GO!GO! little SEABIRDS!!』は、既に各所で述べられている通り、公演が始まるタイミングで客席が青いシートで覆われる。瀬戸内の海の中という趣向だ。青く染まった視界に少女達の声が響く。

公演は波の音と『瀬戸内の声』を通奏低音に、海の青はそのままSTU48の青さを表しているような、今のSTU48と地域色が深く共鳴していた。青いといっても、粗削りだけどグループの若さに免じて許してもらうような、出来立てのグループにありがちな勢い頼みはなかった。その姿勢が潔い。歌もダンスも妥協せずに最高のステージを作ろうとしたからこその厳しいレッスンだったのだろう。その成果がよく感じられて、凄いと感嘆するシーンがたくさんあった。

オープニング直後の『フライングゲット』のセンター森下舞羽さんは、冬に見た瀬戸7において、長い手足でダイナミックに踊る姿に感動して気になり始めた。そんな彼女が船上劇場公演の初日メンバーに選ばれたのはうれしい驚きだった。本当に稀にしかパフォーマンスを見たことがないからか、船で見た森下さんは、いつの間にこんなに大きく成長して、と思わせてくれるような保護者目線と、凛々しいアイドルが好きなファン目線の入り交じった感情にさせてくれて、今見ていてとても楽しい。

今回、幸運にも最前ではないけれど実質最前の座席だった。近くで見ていて、視界に入るメンバーの多さにどこを見ていいのかわからないぐらい、情報過多のオーバーフローに陥りつつ、斜め前の甲斐心愛さんを横目に正面の門脇実優菜さんを見ていたら、心愛さんがいるのに私を見ていていいのかとおちょくられたりしたけれど、門脇さんもかっこいいから自然と視線が向いてしまう。彼女の挫けることを知らなそうな自信に溢れたパフォーマンスは、これが怖いものなしの若さかと、年齢で判断はあまりしたくないけれど、5月の若葉のように弾ける青さに目を見張ってしまう。とはいってもこちらの見えないところで努力しているからこその堂々としたパフォーマンスだと思うので、白鳥の水掻きではないけれど、努力の影を見せない、これぐらい朝飯前ですよと言わんばかりの飄々としたステージ上の振る舞いに、門脇さんのプロフェッショナリズムを感じた。(ちなみに門脇さんはさん付けの呼び方は距離感を遠く感じるのでやめてほしいとshowroomで言っていたが、私はその距離感を間違わないためのさん付けなのでこればかりは仕方ない)

握手をする度にその優しさに好きが加速していく今村美月さんは、公演では指先まで神経が行き届いた優雅といってもいい踊りが、全力とは一段レベルが違うと感じさせるパフォーマンスを披露していた。しかし、不意にこちらに向けられる優しい笑顔に出会ってしまうと、私もにやけてしまい、今村さんの掌で踊らされてるなと我に返って苦笑いもしてしまう。向き合うと必ず好きになってしまう今村さんの凄さに触れる度にアイドル以前に人として素晴らしいと、いつも感動する。(だからこそ舞台が心配なんですが(???))

中村舞さんのバレエや由良朱合さんの歌なども見応え聴き応えがあった。メンバーそれぞれの特技を練り込んだ演出は、今まで知らなかった魅力を発見出来て好きだ。ここにきて由良朱合さんの湿度のある歌声に惚れてきている。『街の灯り』の間奏で披露された中村さんのバレエは、両の裸足で紡がれるステップが軽やかで、くるりと舞う中村さんが起こす空気の揺れを感じようとしながら、彼女の踊りと瀬戸内の風は相性が抜群だと思った。太陽の下で風に吹かれながら踊る中村さんを是非見たい。ただ、中村さんは以前よりもかなり痩せてるっぽいのでそれが心配です。

この日は榊美優さんの生誕で、実は去年の生誕も自分は見ているので2年連続だ。去年はお父様からの手紙に笑わせてもらったけれど、今年は福田朱里さんからの手紙で、一緒に活動するメンバーだからこその言葉が良かった。榊さんは全力少女と言われていても、全力の熱さよりも緩いふんわりした印象があって、人によって受け取るイメージの多面性の不思議さが面白い。

そして誰よりもアイドルだなと感じたのが瀧野由美子さんだった。不器用でがむしゃらで、とにかく頑張るしかない彼女が見せる汗はきらめいていて、センターの重圧に負けない強い覚悟があった。瀧野さんの汗が一際綺麗に見えるのは彼女がセンターだからだと思う。

大好きな甲斐心愛さんは、当然ステージに立っているどのメンバーよりも長く見てはいたのだけど、私が気負いすぎて空回りしたのか、その記憶がぼんやりしていて、自分は彼女をしっかりと見れていたのか心許ない。心愛さんがMCで、今のこの私達とこのお客さんでやる公演は二度とないと思うので大切にしたい的なことを言っていて、その一回性のかけがえのなさを感じている人の頰に光る汗もまた同じ輝きは二度とないとわかっていたはずなのに、これを書いている今、思い出そうとしても蜃気楼のような記憶にもっと必死に見ておけばと悔やんでいる。

それでも思い出せる限り、甲斐心愛さんは歌にダンスに大活躍だった。『亜麻色の髪の乙女』で、一音ずつ相手の耳に届くのを確かめるかのように丁寧に歌った彼女の、緊張しながらも忘れていない笑顔が素敵だった。純朴という言葉がそのままメロディーになったような、もしかしたらその響きは今だけのことなのかもしれないけれど、この歌い出しの瞬間の空気を大切にしていってほしい。私が見た公演では一回失敗しての歌い直しだったので、次こそは完璧に歌いきった後の晴れやかな表情を見たい。

もちろん甲斐心愛さんはダンスも最高だった。激しく踊りながら揺れる前髪と、見え隠れするまっすぐな瞳がかっこいい。特に『KO・BU・SHI Spirit!』でのセンターは、たとえ荒れた海でも切り拓いていくような力強さがあった。STU48のひとりとして輝いている瞬間を見ると、彼女を好きでよかったなと思うし、STU48を信じようという気持ちになる。

船で見て最も良かったのは『海へ来なさい』だった。深海のような深い青の中でこだまする歌声が綺麗だった。そこからの聴き馴染んだイントロの『風を待つ』の流れも素晴らしかった。

私好みの演劇的な公演は大変素晴らしく、終わったときにはため息が出たのだけど、お見送りがないのはやはり寂しい。別にお見送りの一瞬で何か伝えられるほど、自分はAKBオタクレベルが高くないので会釈するのが精一杯だけど、最後の締めとしてお見送りは欲しいなと思った。

ここから話はSTU48から逸れるが、香川旅行の2日目3日目は瀬戸内の島を巡った。ちょうど今は3年に1度の瀬戸内国際芸術祭も開催されている。そういえば3年前は香川を訪れて豊島美術館に行った。今回の旅行では、2日目は小豆島、3日目は直島。どちらも天気が良く、最高の瀬戸内を満喫出来た。小豆島はSTU48『思い出せてよかった』のMVロケ地でもある小豆島オリーブ公園を再び訪れた。オリーブの木が生い茂る高台から太陽にきらめく静かな瀬戸内海を眺めていると心が洗われてくる。3日目は直島。私が訪れた月曜日は、直島のメインコンテンツである地中美術館が休館日だったので観光客も少なく、GW中は大行列だったらしい草間彌生の『南瓜』も人がほぼ皆無でゆったり見られた。直島はレンタサイクルで回ったが、坂道のカーブから時折見える海がとんでもなく美しく、それは自分の人生には不釣り合いの映画のような一シーンだった。(そして島を巡る度に電動アシストに感謝しまくってしまう)

島巡りは楽しかったが、今はまだ観光地としての瀬戸内が好きなだけにすぎない。私は都会に甘やかされながら生きているので、瀬戸内に住めるかといったら躊躇してしまう。これは観光客としての感想で、結局良いところしか見えてないわけで、実際に暮らすとしたら大変だろうなと思わざるを得ない。

それはSTU48に関してもそうだ。私が瀬戸内に住みながらSTU48と出会ったら、距離感に戸惑ってどう向き合えばよいかわからず、今みたいに好きになっていないかもしれない。私の住む東京と瀬戸内の物理的な距離の遠さが、病まずに必死になりすぎない穏やかな関係にしていると思っている。

残念ながら、STU48のすべてが好きと断言出来るほどの盲目さを自分は持ち合わせていない。瀬戸内に旅行するのが好きだから、そのついでにSTU48を見ようかな、といったよくわからない言い訳めいた気持ちがまだある。今はちょうどバランスが良い。STU48はもちろん好きであるけれど、もっと変わってほしいなと思うところもある。その微妙な釣り合いの中でたとえ一時的にSTU48へのモチベーションが下がっても、とりあえず瀬戸内の美しい景色と美味しいものを食べようと訪れて、結局STU48をさらに好きになって帰ってくる。STU48とその土地の両方に救われている。

配信で見た初日公演の最後の挨拶で、この船は家で、船に来てくれた人は家族みたいなものだと甲斐心愛さんは言っていた。その言葉を思い出し、私にとってSTU48は好きなところも苦手なところも含めて、もう離れられない存在になっているのかもしれない。しかしそれでも他人は他人だ。何かあっても干渉するほどの熱量はないし、これからも遠くから緩やかに見守るだけだと思う。遠くのファンは勝手に遠くにいるだけなので、気にせず地元の人に愛されるグループであってほしい。

長々と書いてしまったけど、本当に楽しい香川旅行だった。STU48の皆さんに感謝。瀬戸内に感謝。ありがとうございました🙏🏻






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