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パレードは続く

本当は、せっかく書くんだから構成を意識して、そのトレーニングも兼ねて、なんてできたら良いと思うんですけど、そうもいきません。このnoteのことです。そんなことしなくても良いような気もするし。


制限時間を決めてバーっと書いてるので、正確ではないこと、意味のわかりづらいこと、次に書く時と整合性の合わないことあると思います。よろしくお願いします。


さて。ウーバーイーツに追突された方が起訴したというニュースがありましたね。『パレード』では、あの後どうなったんでしょう。ウーバーイーツの人、途方に暮れたのかな。そっちのことを考えると、かわいそうだなとも思います。店長、やけくそになってたのかもしれないし。今はウーバーイーツの交通マナーとか取り上げられがちだから旗色悪いけど、どちらに非があったかはわからない。場を行ったり来たりさせず、レストランだけにして、そういう人まで割り込むように登場させれば、いわゆるスクリューボールコメディとして気楽に観て笑えるものができたかもしれません。でも『パレード』はそうしませんでした。


というか、できないんですよね…。嘘が嘘を呼び、とか、様々な人物の思惑が絡み合い、とか、書けるように思うんだけど、モチーフ選びの時点でそれができそうなものを選ばないし、実際のところは、書けると思ってるだけで書けないのかもしれません。こうすればそうなると分かっていても、どうっしてもそっちじゃない方を書いてしまうような気がしてならないのです。書けるものしか書けませんからね。


そんなんでよくずっと書いてこられたなと思いますけど、逆にそんなんだからずっと書いてこられたような気もします。自分の選択を認めてやれるのは結局自分くらいのもんです。


2012年に自劇団のブルドッキングヘッドロックで、『スケベの話〜セイなる夜編〜/〜バットとボール編〜』という2編を同時上演する企画をやりました。そのうちの『バットとボール編』が、シチュエーションコメディとしては私の中で今のところ最後の作品ということになっているのかもしれません。甲子園で勝つためには体力を温存しなければならない。だから今から試合当日まで全員オナニーは禁止な。と決めた野球部員たちの旅館での苦悶の数日間の話です。そういうモチーフを選んでいいなら書けるんですが。ちなみに『スケベの話』は公演も作品も大好評で、もうDVD売り切れちゃったんじゃないかと思います。うちの作品にしては珍しく。お好きですね、皆さん。同じシリーズで「〜オトナのおもちゃ編〜」というのもあります。こちらはハイブローです。絶賛か無視かって感じ。


『バット〜/セイなる〜』を発表して以降、どこかの企画開発に参加すると、「オナニーを禁止する男子たち」や「すぐセックスしちゃうシスター」の話はよくさせていただくのですが、みんな笑うだけ笑って、「さてではそろそろ本気で考えますか…」みたいな感じの切り替えをしてくださいます。本気じゃっ中年!あ。変換ミスです。本気じゃっ中年!!ああまた変換ミスだ。なんだよMac。


夢や希望と同じだけ価値があり、それらと同じだけ意味がないと思うんですけどね。ビジネスとなると選択肢は狭められがちです。


でも雲水の現場では狭められることはありませんでした。基本、なんでもありだと。ありがたい。で、選んだのは「モノポリー」という「マネーゲーム」と、「夢も希望もない人」だったわけです。


ただね、むずかしいんですよ、なんでもありは。


なんでもいいです。


と聞こえなくもない。発注する側が時と場合によって都合よく使える言葉なので、私はいつも額面通りに受け取らないようにしています。若くもないし、書かせていただけるならなんでも!という気持ちは全くありません。あ、若い頃からなかったや!


だからなんでもいいとおっしゃる代わりに、直接脚本に関わるようなことじゃなくても、今ある材料、今ある条件をなるべく正直に出していただきます。と言っても大体関わるんですけどね。劇場が決まってるなら劇場。キャストが決まってるならキャスト。政治で決まってる何かがあるならそれも。別にそれでダメよとはなりません。こっちは本音が見えればよくて、本音を言ってくださってるようで言えてないなという時が一番困ります。それが本音だと思っていらっしゃるという場合がね、あります。


劇団で作る場合もそうです。作りたいものは、私の身体の中にフワフワと雲のように漂っています。時々、雨粒になって、勢い濁流のように溢れて来ることもありますが、なかなか自分の思うタイミングで溢れてくるわけではない。なので、条件を先に決めながら、作りたいものの実現可能性を探ります。劇場とかね、キャストとか、スタッフさんとか。お金とか。


これは本当にどうにかしないといけないことなんですけどね。まだ本がなく、イメージがあるだけ。せめて企画書や概要のようなものは作りますが、それだけではできるともできないとも想像しようがない。受けてくださる方も大変です。それでもお引き受けいただけるのは、なんらかの信頼関係があるからかもしれません。…ある、はずですが、無くても結果お約束をいただけているのですから、もう全方位に感謝感謝です。感謝と返礼を燃料にして次へ進んでいくのです。自分のことを探している暇なんてありません。した約束をできるだけ叶えるのみです。


「雲水」も、劇場と、チームメンバーの出演を最初に約束してくださいました。あとお金とね。メンバーがどういう事情で揃わないのか、そこは特に気にいたしません。いない人はいない人。いる人のことを考えるので精一杯なので、考えません。


3人分の登場人物が必要で、劇場は赤坂レッドシアター。すでにコロナは世間を席巻していましたから、最悪やれない可能性もあるし、やれたとしても客席は半分以下。配信はやりたいけど、最初の時点では未定。あと、秋元くんを推薦したい、というのがありました。雲水メンバーより少し若い男性だそうで、私はこの時点で不勉強にも存じ上げませんでしたが、メンバーが推薦するのですから断る理由はありません。きっといい奴です。


じゃあ…、というわけで、私の提案した『モノポリー』とやらを、彼らに実演してもらうことにしました。集まって。ところがやはりコロナです。スケジュールを調整しましたが6月7月と状況はまだまだ不安定。最初は、メンバーと秋元くんだけ集まってもらって、私はリモートでゲームを観戦するというスタイルを取らせていただきました。


これは、最悪上演できませんとなった時に「こういうことやろうと思ってたんですけどできないからせめて元ネタのゲームをやっているところを配信するから雲水が好きな方はぜひ見てみてね!」くらいのことはやれるかもしれないと思ったので、それを想像しながら見てみるというアイデアでもありました。


制作の方が気を利かせて、ボードを上空から捉えたカメラを用意してくださったので、ゲームの状況をよく把握することができました。今思えば、最初に雲水と秋元くんだけのプレイヤー4人、というのもバランスが良かったのかもしれない。稽古が始まってすぐに、のちに決まったキャストも入れて5組でやったことがあったんですが、その時は流れが全く違って、その前に見せてもらった4人の特徴が出せなかったり。それを最初に見ていたら、それぞれの印象すら違って見えて、全く違う作品ができていたかもしれません。


最初から実によく楽しんでプレイをしてくださいました。あの4人。私の方は内心ゲームの勝敗はどうでもよく、雲水と秋元くんがどういう人で、どういうゲームスタイルなのかということが見えてくればいいと思っていたのですが、いやあなかなかどうして、出るものです、人が。あのゲーム。どうぞおやりになって。なにかを確かめたい人と。婚約前とかに。ね。たった1回でもいろいろ伝わってきて、それが、後の作劇に大きく役立ったことは間違いありません。


あ、だからといって、早乙女くんが羽原さんのような、バトル・モンドリッチのような、ということではありませんからあしからず。ゲーム中はむしろ静かな人だった気がします。良い土地が回ってこなかっただけかもしれないけど(笑)。岸本くんは少しテオっぽい、寺尾っぽいところがあったかもしれません。ちゃんと一喜一憂してくれる。でも交渉に積極的というよりは、引き当てた土地をしっかり育てていく印象でした。賢章くんは他のプレイヤーとの交渉で状況を変えていこうとするタイプ。別のプレイヤー同士の交渉もよく見ていて、彼が敵なら絶対に手強いでしょう。そして秋元くんがなぜかいつも有利な展開を踏みがちで、サイコロ運も良い。勝率は一番高いはずです。


ね、逆ですね。観た人しかわかりませんけど、賢章くんと秋元くん、役の特徴と逆です。これは、演出家と作家が脳内で相談した結果でもありますが、たった一つの理由で決目られるものではありません。感覚的でもあり論理的でもあります。また書きますその辺は。


で、なんとなく分かりましたと。人のこともゲームのことも。じゃあ今度は私、直接横で見させていただきますと決めて、また集まります。今度はちゃんと私も現場に行って、みんなのゲームの様子をじっくり観察。「モノポリー」を題材にしようとした時の大きな問題が、時々【停滞する時間がある】ことなのも、はっきりしてきました。最初に「土地の所有者が決まるまでのターム」があるのですが、ここがとにかくサイコロ任せ。だからお話にはしづらい部分。それから中盤。「みんなが土地を持って空きがなくなった時の、これからどうする?のターム」。当然プレイヤーは勝ちにいってますから、ただゲームを動かすためだけに無謀なアクションを起こすことはできません。誰がどう動くのか。動かなければ、ただただ誰かが誰かにが通行料を払うだけの時間が淡々と過ぎ去っていきます。そして、「ある程度勝敗の行方が見えてから、最後の一人が勝者になるまでのターム」。ここも劇作的には難しい。何しろ相手にはもう逆転の余力はないのです。でも、生き延びるくらいにはお金があるのです。生かさず殺さず状態。なんか資本主義の縮図のようだなと思いますが、この状態が物語的には大変です。はよ負けろ、と言うわけにもいかないし、実際負けたい時に負けられるような仕組みでもない。


一度、テストゲームの最中に、チャンスカードの妙で大きな大逆転が起こったことがありました。そうか、そうすればまさかの大逆転が演出できるのか、と思いもして、メンバーと、いいねえなんて言い合ったのですが、それはカードを引いた人間の自滅でもあるのだよなあと。逆転した側はタナボタになるんですよね。と思い直し、物語の最後の切り札として頭の中に取ってはおきましたが、結局使いませんでした。


そう。どうせ勝つなら自力で勝ってほしいじゃないですか、勝つ人に。「偶然」をテーマにした作品なら良いのかもしれませんけど、彼らが何かを叶えようとする、なにかを選び取る物語なので。偶然叶いました!は、なかなか難しい。


でもじゃあ、「ゲームに、ひいては人生の勝者になろうとする誰か」を主人公に据えるというのがね、選べないんだな…。


本当にそう?みんなそういう人を応援したい?いや、応援して良いし、スポーツだってなんだって勝とうとしてないチームを応援することほど虚しいことはありません。だから、勝つつもりであってはほしい。わけわからずとも全力であれ。でも、いつだって誰だって立派な理念を持って動いているわけではない。なんだかよくわからないけど、人に誘われて、あるいはなんとなく自分も参加していい場があって、ちょっとやってみたら意外と流れに乗れて、役に立てれば嬉しいしできることをやっていたらさらに良い結果が出て、それで勝てそうなら、あるいはみんなが喜んでくれるなら、このままその流れに乗ってどこかへ行ってみようかな、という人だっているかもしれない。


でも、流れに乗っていただけだから、何かの拍子に「我」を思い出し、自分の力で、とか、俺ってなんの意味があってここに?とか考え出したら逆に歯車が狂いだす。最初にどこへ向かって行くぞと決めてないですからね。自力で進めると言っても、行きたいところがはっきりしないから、どんな手段を取れば良いかもわからない。


みんなが受験するし、より良い大学というものがあるらしいから、とにかくそれに行こうと思って勉強してみたら、まあまあの成績が出て、先生も喜んでるし、どこかしらの良い大学には行けそうなんだけど、ふと受験を引き気味に見ている誰かに、やりたいことについて問われてしまい、でもそれが別になくて、とりあえず受かることが成功、と思うしかないんだけど、いやいや、それで良いんか?と、引き気味に見てるあいつはSNSでめっちゃ良い感じの音楽とか発表してて、めっちゃいいねとかもらってるし、バイトで金稼いでおっさん達とも普通に会話してるし、あいつ同じ年齢だよな、とか気にしだしたらだんだん勉強が手につかなくなって、とか。


そういう人を、私は、別に応援するわけではないのですけど(そんなにわかりやすく応援されたくないと思うし、引っ張り出されたくもない気もします、そうい人は)、ただ、私の視界に入っているよ、ということを表現したい。見ている。肯定も否定もしない。でも見ている。そこにいる。在る。そのことを私が知っている。きみはいる。渦の中心になることはないかもしれない。キャンプファイヤーをずっと遠くから見ているだけかもしれない。でも、いる。いることを俺は知っている。だから、他にもいるはずの、きみを知っているかもしれない誰かに少しだけ紹介していいか?迷惑はかけない。こっちの都合で話は曲げない。きみがいるということを伝えるだけだ。その人はきみを見てきっと笑う。バカにしてじゃあない。ああ、いるなあと、そう思うから笑うんだ。俺が少し角度を調整しただけだ。つまりきみは、いるだけで人を少し動かすかもしれないんだ。口元だけかもしれない、うんと頷くだけかもしれない、だけど、動かすかもしれないんだ。それは、すごくどうでもいい力だし、価値のある力でもあると思うんだ。意味はない、でも価値はある。世界を救うことも。人に褒められることも。健康も。死ぬことも。今日はたまたまきみだった。億の単位で時間を見ろよ。全部彼方の塵クズさ。星を見るのと、きみを見つめること。どれだけ違うっていうんだ。夜空の星を見る人は、ほら、ふっと笑って呟くだろ?「ああ、星だ」ってな。


というわけで、最後はよくわからなくなりましたが、「勝敗のつくゲームに参加しているのに、夢や目標がないうつろな人」が、主要人物になるだろうということが自分の中で決まったのでした。


ではまた。


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