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エルシネ6

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山科清春の雑文集です。
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#武道

『蝦夷手の研究』感想文

澤井幸太郎『幻の拳法其の壱・蝦夷手の研究』

(楼村社・昭和6年)

 うーん、まあまあ面白かったです。

 これは、昭和初期に少年向けに書かれた本なのですが、まあ、なんというか、人を食った仕掛けのある本でして、表向きは澤井幸一郎という拳法家(柔術家)が大正の終わり頃、「蝦夷手」(えぞて)という幻の拳法をもとめて、東北、北海道から樺太、さらには沿海州(現在の中国黒竜江省あたり)まで遍歴すると

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我未だ木鶏に至らず

 ひさしぶりに来阪された作家の小川国夫先生にいろいろお話を伺いました。

 お財布を新幹線にお忘れになったそうで、ずいぶん遅れて来られました。先生は私の顔を見るなり、

「山本君は、空手はどうですか」

「最近、さぼっています」とお答えすると、

「昔、双葉山という力士がいたんですよ。ものすごく強い力士で何十連勝もした。

 その力士が土がついた時に、一言こういったんだそうです。

 『我、未だボ

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