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わたしとダルちゃんとダルちゃんが読んだ本のこと_#2

明日、1月24日は「うすい布張りの表紙で 若くして死んだ人の みじかい詩がぽつぽつと載った本」が8年前に生まれた日であり、著者である笹井宏之さんが10年前に亡くなった日でもある。

『ダルちゃん』の中で、この本のタイトルは出てこない。

わたしがこの本のことを知ったのは、1月10日の大阪の夜に聞いた『ダルちゃん』のことを調べていたときだった。どんな本かと気になって探し始めたが、どうやらその本は数年ぶりに文庫化されて発売された直後だったらしく、地元の本屋を三件まわって聞いても在庫がなくて出会えなかった。ちくま文庫さんのツイートで、特典ペーパーが封入されて置かれているお店があることを知り、結局数日後に大阪の本屋で購入することになる。


えーえんとくちからえーえんとくちから永遠解く力をください


『えーえんとくちから』という本のタイトルになっている、頁をめくると最初に目にする「詩」。何度も何度も繰り返し目で追ってしまい、ぶつぶつと呪文のように呟きたくなるような、短歌なんて学校の授業以来触れてなかったような自分にも、不思議なリズムでクセになりそうだった。梅田から京都方面へ向かう阪急電車に揺られながら一気に読み終え、ふと笹井さんの出身はどこだろうかと見ると佐賀県の有田町というところらしい。残念ながら行ったことのある場所ではなかったけれど、彼が目にした景色はどんなものだったのだろう。

本を読むときでも映画を観たあとでも、いつか自分が見た景色や誰かの匂いを思いだしたり、歌や映像が蘇ったりすることがあると思う。わたしはある。
『えーえんとくちから』を読んだあと、わたしは1月の日差しが差し込む電車の中の、杖をついたおじいちゃんが座る向かいの席で、”真夏の真っ暗な部屋の中から畳に寝転がって見る眩しい庭”とか、”冬の早朝の日が昇る直前の誰の気配もしない台所”とか、”大雨の日に駐車場に車を停めてエンジンを切った直後の雨の音しかしない車内”とか、そういう「世界に自分しかいないような瞬間」が思い浮かんで切なくなった。

自分と同世代の彼をリアルタイムで知ることはできなかったけれど、没後10年を機に本が世に出るこのタイミングで、『ダルちゃん』と同時に出会えたことをすごくうれしく思っている。ということを、1月24日に間に合うように書いておきたかった。

久しぶりにこういうものを書くので、なんともまとまらない殴り書きのようになってしまったけれど、わたしが『ダルちゃん』と『えーえんとくちから』に出会えたキッカケになってくださったひとたちに、ありがとうが伝わればいいなと思う。


最後に、Twitterで「#えーえんとくちから」のタグを追うと本の中でみんながそれぞれに気に入ったものを呟いていて、それを眺めているのも面白い。わたしはこれ。

魂がいつかかたちを成すとして あなたははっさくになりなさい

どうせなら自分の好きなデコポンがいいなぁ、と思ってしまった。



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