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人と出会う旅のすすめ。

この記事はフルリモートデザインチームGoodpatch Anywhere Advent Calender 2022 5日目の記事です。

旅がすき。
でもその理由は、観光地を巡ることではない。

自分の人生とは違う道を歩んできた人の考えに触れ、その人の生き方をちょっぴり覗けることが堪らなくすき。

コロナが始まる前の4年間ほど、海外の旅行者と日本で国際交流したい日本人をローカルガイドとしてマッチングさせるサービスのデザインを担当していた。
別に海外の人だけに限らず、国内でも使えるようになればなと思ってはいたもののマネタイズ面だったり、コロナのこともあったり、と現実には至らず。

だけど今でも人と出会ったり、地元の人に案内してもらうような旅のスタイルがもっと当たり前になればなと思っているので、今回は私が今年旅先で出会った素敵な人とそのエピソードをご紹介します。

よかったら来年の旅先候補にでもどうぞ🙌
それでは行ってみましょうー!

島を愛し、アートを愛する最高にかっこいい亀仙人 in 香川県伊吹島

瀬戸内芸術祭が久々の開催ということもあり2週間かけてじっくり周った。その中でも伊吹島での出会いは特別だった。

伊吹島には私が小さいころから知っている方の作品がある。

中を覗くとすーっと空気が抜ける。とっても不思議な感覚になる作品。

いつか実際に見に行ってみたいなと思っていたのがついに実現。
車で伊吹島へ渡るフェリー乗り場まで行き、そこから船に揺られること25分。伊吹島に着いた。

船から降りて最初のアートスポットで受付の人に、「今回伊吹島は何に興味があって来られたんですか?」と聞かれ、栗林さんの知り合いで作品を見たく…と言うと「え!今日作品の修復しに島にいらっしゃってますよ…!」と。

すぐに栗ちゃんに連絡するも繋がらず…島の中を探しながらキョロキョロ歩いていると、ビジュアルからしてだいぶイカしたおじさまに話しかけられた。

伊吹島の有名人「亀仙人」(びっくりしすぎて、写真撮り忘れたのでネットから写真お借りしました🙏)

理由を話すと、乗れ!と言われバイクの後ろに乗せられ、島内を爆走🛵(まじで怖かった….w) 船に乗る前の栗ちゃんと15年ぶりの再会を、亀仙人さんのお陰で果たすことができました。

アーティストの栗林隆さん

栗ちゃんの縁もあり、島の人に誘われ船の見送り隊に参戦…w

旗、めっちゃ大きくて重いのよ…
私ですw 一生懸命帰っていく人達の見送りをしました。

この日は伊吹島にある民宿いぶきに宿泊だったのだが、漁港の反対側で猪も出るし歩くと大変だよと亀仙人さんが送ってくれることに。

そして道中、今日は夜ナイトツアーをやるから民宿で出会った人を誘え!と指令が…。お世話になったので、指令は果たさねばと夕食の会場で他にお泊まりのお客様をお誘いし、なんと皆さん一緒にナイトツアーに行くことに。

亀仙人さん自身も作品を作っているので、その作品に光をあてて陰で遊んだりしました
作品の細かいこだわりを教えてくれる亀仙人さん。

実は亀仙人さん、この会期が始める前に体調を崩されていて本当は入院を進められていたらしいのですが、「俺が伊吹にいないとダメだろ!やることたくさんあるんだから…!」と入院せず会期中ずっと伊吹島で来る人のおもてなしをされていたとのこと。もちろん亀仙人さん目当てで来る人もいるので、その使命感は本当にすごい。

そしてナイトツアーを周るなかで話されてたことがすごく印象的だったのでご紹介。

みんな自分にはアートのセンスがないとか言うだろう?でもさ、大体の人が折り鶴作れるじゃん?それを何羽も折ってさ、天井から沢山吊るすわけさ。そんで、その部屋の窓を開けるだろ?そうすると風が吹いて、その鶴たちはふんわり揺れるわけよ。これでもうアートなわけ。みんなアートに関してすごく壁を持ってるけど、アートはもっと身近なんだよ。

この柔軟さや、人柄が本当に素敵でたった1日で大ファンになった。また会いに行きたい人が増えました。

そんな亀仙人さん、今クラファンに挑戦中みたいなので応援せねば…!(本当にアクティブでカッコ良いなー)

ちなみに伊吹島の伊吹の樹や亀仙人さんの作品などは会期中も見れるので、暖かくなったらぜひ行ってみてください☺️

安藤忠雄に対する熱が強すぎるツアーガイド at ヴィトラ・デザイン・ミュージアム (ドイツ)

見に行ったわけですよ、椅子の美術館。
だけどね、お目当ては椅子じゃないの。
ここは建築ツアーがすごいんです。

お目当てではない椅子。でも素敵でした。

ここの巨大キャンパスの建築物は名だたる建築家たちの建造がずらっと並んでいるんです。

  • フランク・ゲーリー

  • ヘルツォーク&ド・ムーロン

  • ザハ・ハディド(しかも処女作)

  • SANAA

  • 安藤忠雄

事前予約制なので指定した時間に行くと、一見物静かそうな女性が今回のガイドさん。だけど、この方話し始めると熱気がすごかった…w

ザハのデザイン案を見せてくれたんだけど、建物だけでなく周りの畑の形や植える植物の色トーンまでセットで設計したんだって!「彼女は本当にすごいのよ!まだこれが彼女の処女作で実際に建物を建てたこともないの。だから職人達は本当に実現させるのが大変だったと思うわ!見てよこの扉!どう考えったて開かないんだから…!なのに実現できたのよ!!!」と熱く語っていました
大好きなSANAAの建物。曲線が美しい…
この外壁の素材が伸縮性のあるものらしく、夏場には小指も入らなくなることを体を張って説明してくれました
ツアーのトリ、安藤忠雄の建物に入った時に話し方が豹変….!愛が強すぎる…w (ちゃんと息すって…)
安藤さんはね滅多に壁に何かを飾ったりしないが、ここにだけラフ図を飾ってくれたのよ〜!!と言ってました

建築も素晴らしかったけど、愛に溢れてるガイドさんのお陰で深く楽しむことができました。

美術館自体も見応えすごいので、ぜひ建築ツアーとセットで行ってみてくださいー!
ちなみにおすすめはスイスのバーゼルからバスor電車で行くのが◎
バーゼル自体もアートで有名なので最高です🇨🇭

豊かに生きるとは何かを教えてくれた人 in 神山町 徳島県

神山に古民家を改装したオニヴァというレストラン兼お宿がある。
レストランのオニヴァはちょっと変わった営業体制で利益よりも自分たちの時間を大事にしようということで、1年のうち半分近くはなんとお休み。なのでお宿として泊まることができます。

宿泊した翌日、オーナーの郁子さんが町探索に連れて行ってくださいました。

郁子さんはAppleで働かれてたりとすごいキャリアを持っていたのに、それを手放して神山で全くこれまでの仕事とは関連のないことをされている。

個人で山を持っていて、山を切り開くのに馬をリースし、馬と一緒に土地を耕したり、周りの人を巻き込みながら山づくりをしている。(というより自然とみんなが郁子さんの山に集まってくると言う表現が正しいかも)

岡山かどっかのキャンプ場で使われなくなった器具をトラックで搬入。搬入時にはバラバラだったものを高校生と一緒に試行錯誤で組み立て直したんだって。その高校生がすっごく頑張ってほぼ1人で完成させたらしく、親を招いて自慢をしてた話を聞いてすごくほっこりした。
コンテナがオフグリットの小屋に…これコンテナだったなんて…すごい…

バリバリ働いてがっつり稼ぐような生活から、利益よりも自分も時間や楽しく実験的に豊かに暮らすことを大事にしている郁子さんに出会って、自分は全然面白い生活してないなーと痛感した。

旅から帰ってから、すぐ役場の人に山はいくらで買えますか?と問い合わせるくらい刺激を受けました。w
山購入はまだ実現してないですが、まずは自分の時間を大事に来年からは実験的なことをしていきたいなと思っています。

ちなみに神山はアーティストインレジデンスをずっとやられているので、山の中にはアート作品がたくさんありますし、温泉も、なんなら美味しいクラフトビールも、美味しいご飯もあるので、ぜひ行ってみてほしいです!


「古き良きものを未来に残す」ということを体現してる人たち in 大森町 島根県

復古創新という言葉を教えてもらいました。
それは、古いものに固執するということではなくて、いにしえの良きものを蘇らせて、そのうえで新しい時代の良いものを創っていくことだそうです。

島根県の石見銀山のふもとの人口たった400人の町、大森町。
ここで2週間滞在したのですが、出会った人たち全員に古き良きものを未来に残すとはどういうことかを教えてもらいました。

他郷阿部家での滞在

今回の大森町滞在、ハイライトは間違いなく暮らす宿 他郷阿部家での宿泊。 だけど宿泊という概念すら合ってないような体験でした。
感じることや考えさせられることが多くて、ここまで宿泊体験で感動したのは初めてだったし、自分は今後どう暮らしていきたいのかわからなくなるくらい衝撃だった。

このお宿はオーナーの松場登美が築230年の武家屋敷を10年間かけて作り上げた理想の暮らしが詰まったお宿。
至る所に登美さんが大事にしていることが散りばめられています。

例えば掛け軸にある心想事成は中国のことわざで、今は叶わなくとも想い続けるといつか実を結ぶ日がやってくるという意味。 大事にしてる言葉なんだって、素敵だな。
おくどさんで炊くご飯

夕飯は、登美さんともう1組の宿泊者の全員で一緒に食べるのが阿部家のスタイル。 どんなことを考えて阿部家をやってきたのかから始まり、登美さんが大事にされていること、今やっていることなど話が尽きない夜でした。

竹で炭を作る

いっぱいある竹を有効活用しようということで竹炭用の窯を作ったらしく、竹炭用の竹伐採に参加。
竹の節に白い粉があるのは若い竹とか知らないことをたくさん知っているこちらの方は竹炭のお師匠さん。

なんと94歳….!!!!
数時間お手伝いしただけでも右腕やられました😇翌日は筋肉痛に…

まだまだ知らないことがたくさんあって、本当に勉強になりました。

ダブル釜作り

登美さんに誘っていただき、週末ダブル釜作りに参加。
一つは愛農かまど、もう一つはピザ釜です。

「愛農かまど」とは、戦後に「全国愛農会」という組織ができてその人達が普及させていたかまどで、少ない薪を炊くだけで、空気の流れを利用し大きな火力を生み、同時に火口2箇所&オーブンの合計3カ所で調理ができる優れ物!

残念ながらガスの復旧で実際に当時使われてたものはもうないそうなのですが、設計図を元に復活させて全国で作り方を教えている野呂さんが三重から講師にいらっしゃっていました。

釜に塗る粘度も割れないための工夫が面白く、藁を混ぜる。そうすると繋ぎの役割をしてくれるんだって。
できた粘度をぺたぺた押し固めていきます。

一方ピザ釜作りには登美さんのこだわりで、その土地にあるものを使うということになり釜の土台に積石を。

ピザ釜作るのにユンボ出てきて笑ったよねw
土台を積むだけで4時間くらいかかったw
漆喰の色は鼠漆喰という炭を混ぜたもの。大森町には鼠漆喰の建物がいくつもあります。深みがあってとっても素敵な色。
そして最後は登美さんが拾ってきた福の文字が入ったお皿を張って完成!(ちなみに釜があるお家の屋号が福富家なのでそれにちなんで福です)
完成記念写真!

 数日間登美さんとお話しさせていただく中でずっとおっしゃられていたのが、非効率なことを大事にすることモノの価値を信じて生かし切るということ。

非効率なことを大事にするというのは、経済を優先しすぎてしまうとその土地本来の文化や個性が死んでいくのでバランスがとても大事であるということ。

そしてもう一つのモノの価値を信じて生かし切るというのは、例えば阿部家の改修前の写真はどうみても廃墟で買って直そうなんて思えないレベル。
だけど、登美さんはこの家には価値があると信じ10年もかけて生かし切ったわけです。ピザ釜の石だってそうで隅っこに転がって捨てられていたものの価値を信じ、釜の土台として利用。

自分の周りも目を向けてみたら、宝の山かもしれないなと思った。
そして今回のピザ釜のお家が11件目の古民家改修という登美さん。まだまだやりたいことがあってワクワクしちゃうと言っていて本当に素敵だった。

終わりに

他にも今年旅先で出会った人は沢山いるけど、特に印象深かったエピソードをピックアップしました。

正直綺麗な景色や観光名所のことなんて全然覚えてないけど、出会った人のことは忘れないし、そういうのが旅の醍醐味だなと思う。

来年もまた素敵な出会いがありますように!

最後まで読んでいただきありがとうございます!