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THIS BITTER EARTH〜映画 パリタクシーを観る〜

シャンソンの祭典 パリ祭のFBオフィシャルページの投稿に、

「この映画を見ないシャンソンファンは絶対、あとで後悔します。
この映画を見ないシャンソン歌手は、シャンソン歌手とは言えません」


というプロデューサーK氏からの強烈なメッセージがあり、「これは早く観に行かなあかん」と足を運んだ、今月7日に公開されたばかりのフランス映画、『パリタクシー』。

主演女優は今年御年94歳の歌手・女優のリーヌ・ルノー。私が愛する歌手のダリダと親交が深かったことと、

♪マカバーノカナダー♪

とルノーさんが歌う『カナダの私の小屋』というシャンソンを幼稚園生の頃から聴いていたので、一方的に親近感。

パリの美しい街並みももちろん楽しめますが、特におフランスやパリが好きでなくても、作品としてなかなか深みがありますので、オススメです。結構劇場は混んでいました!

以下、ネタバレにならない程度に書いてみます。

タクシー運転手のシャルル(ダニー・ブーン)は無骨だがほんとはロマンチストな46歳。家族のために必死に働くが、生活は相当厳しい、しかも免停寸前。そんな彼がある日、「遠距離だから」と金につられて乗せた客が、リーヌ・ルノー扮するマドレーヌという92歳の老婦人。かくしゃくとしている。

このマドレーヌさん、終の住処となる施設に移ることになり、パリの自宅からタクシーを呼んだのだ。

シャルルが自宅まで迎えにゆき、さあ施設へ、と思いきや、これが見納めとばかりに思い出の場所へ寄り道をリクエストするマドレーヌさん。しかも車内では、

自分語りを一方的にしだす 老人あるある

が始まるのだが、これがただの自分語りではない!!!

そりゃ〜濃い、マドレーヌ姐さんの人生、『まるでお芝居のようだった』!!
これでもかと壮絶なドラマが展開し、シャルルも言葉を失う始末。やたら身綺麗なマドレーヌがカタギに見えなくなるのだが、そこはリーヌ・ルノーの知性と品性のおかげで、見事に

ありそでなさそでありそなお話

になっている。ルノー自身が80年代からエイズ撲滅運動活動家として大変有名である背景をうま〜く活用した役どころにしているところも見事。そして、結末もなかなか『想定内に想定外』なのです。まーこれ以上は言えないので、是非観てください。

原題は『une belle course』、直訳すると『一つの美しい走行』という意味ですが、映画では走行の部分は旅路と訳されています。シャルルとマドレーヌとの美しい1日のドライブ、一つの美しい人生の流れ(生涯)、そしてタクシーの一走行など、色々意味がかけてあるのでしょう。ちなみに英語の題名はよくありがちな『Driving Madeleine』です(ドライビングミスデイジーってのがありましたね)。日本のタイトル『パリタクシー』にはかなり苦労の跡が見えます。

さて、映画の中ではリーヌ・ルノーの歌が使われているわけでもなく、フィリップ・ロンビの担当する音楽や、この映画のカギの一つになっているアメリカの音楽、ジャズ、最後に流れるエタ・ジェイムズの『AT LAST』が注目されているようですが、私が

おお!これをもってきたか!!と感心したのは、マドレーヌが壮絶な人生を振り返る間パリの街の映像とともに流れたダイナ・ワシントンのTHIS BITTER EARTH

この辛い世界、という意味ですが、これがこの映画に実に合うのだ!!!!!!大曲です。

以下 超大ざっぱな歌詞の意味

辛いこの世の中 何が実を結ぶのか
分ちあうことのない愛に 意味はあるのか 
ちっぽけな我が人生 
ほんの少しのきらめきも 日の目を見ることはない
私の善さを知るのは 天の神様だけ
この世はかくも冷たいか
今は若くても
あっという間に年をとる

けれど、こうして嘆きながらも
きっと誰かが
必ず私の呼びかけに応えてくれると信じている
そう考えると
この世は そこまで捨てたものではないかもしれない

ダイナ・ワシントンの歌声からは、夕陽が見えてきます。

では、YouTubeでお聴きください。
最後に映画の公式ページも紹介しておきます。
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最後まで読んでいただきありがとうございました。

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