b.b.クローニンさん
青山塾で講師をしているせいか、ここ何年か恐れ多くも青山ブックセンターの「この夏におすすめする一冊」というブックフェアに参加させていただいてます。正直なところ、僕はとくに読書家というわけでもないし、装画の仕事でゲラを読むことはよくありますが、誰かに本をおすすめできるほどの知識も経験もないと思ってます。なので毎年選書には苦労するのですが、少ない読書量の中から素直に自分が好きだと思った本を挙げるようにしています。
今年の企画では、僕はb.b.クローニンさん(イラストレーター、アーティスト)の絵本『アッタとタッタのさがしもの クリスマス』という本を選びました。夏の企画なのに、クリスマスの絵本で大丈夫だろうか?とは思ったのですが、事前に確認したら大丈夫とのことでした。
僕がアメリカにいた頃からずっと彼の仕事は目にしていたのですが、2000年くらいからでしょうか、彼の技法が版画っぽいものに変化したときから一気にファンになりました。あの頃よく彼のサイトへ行っては絵を見ていたので、僕自身かなり影響を受けていると思います。
最近になって彼が絵本を描いていることを知り、すぐにアマゾンで洋書の絵本を取り寄せました。その頃はまだ日本語版が出てなかったのですよね。絵本を見て、その素晴らしさに度肝を抜かれました。ものすごく鮮やかな特色印刷、配色、キャラクターの造形、さがしもの絵本としての構成、どれをとっても見事で感動したものです。
彼の絵本は今まで何冊か出ているのですが、その中で『アッタとタッタのさがしもの クリスマス』が日本語版として最初に発売されたのですね。これはぜひ紹介したいと思って選書したのでした。
そしたら、青山ブックセンターのブックフェアを見た版元(リトルモア)の編集の方から、帯をリニューアルするので帯文を書いてほしいというご依頼をいただきました。僕のような一介のイラストレーターが帯文を!と驚きましたが、非常に光栄なことなのでお引き受けした次第です。生まれて初めて帯文というのを書きました。そして100%オレンジの及川さんも帯文を寄せていらして、二重に光栄なことでありました。及川さんとはまたご飯でも食べたいものです!
中はこんな感じです。
さがしもの絵本なので、ストーリーに沿っていろいろなモノを探していくわけですが、けっこう難しくてずっと見ていてもなかなか見つからなかったり、ページを戻って見つけなくてはいけないようになっていたりして、とても楽しい絵本です。
特色五色印刷だそうです。なのでこの鮮やかさ。コストの関係で日本語版のほうが一回り小さいサイズの本になってますが、中国の印刷所で同じ版を使って刷っているとのことでした。ところどころデザイナーが絵の中の文字を日本語に直している箇所もあります。
b.b.クローニンさんの絵本は他にも以下の数冊があり、どれも素晴らしいのですが、僕が一番好きなのは"The Lost House"かなあ。
最近出たばっかりの"The Lost Cousin"というのも速攻買いました。
クリスマス以外の絵本はまだ日本語版が出ていないのですが。答え合わせのPDFも用意してあって、最高です。
クローニンさんの仕事は、雑誌のいわゆるエディトリアル・イラストレーションも素晴らしいのでぜひ見てください。なんでこんな不思議なイメージを思いつくのだろうと思うかもしれませんが、コンセプチュアル・イラストレーションなので内容には全て必然性があるのです。
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イラストレーター・東京の仕事場から
25年以上フリーランスのイラストレーターとして生きてきた経験から、考えていることや考えてきたたことを綴ります。海外の仕事のことや、ときには…
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