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稀有な出逢い

 大学院1年生の時、2つ下の学年のある学生が私の所属ゼミに入って来ました。所属ゼミと言っても、私は前年度にすでに卒業してはいましたが。大学院に進んでからも、そのゼミの先生に指導していただいていたので、ゼミ生に会う機会はいくらでもありました。

 学年は2つ離れていましたが、ゼミ生たちとは徐々に仲良くなることができました。全員で、とはいきませんでしたが休みの日にご飯に行ったり遊びに行けるまでになったメンバーもいました。

 で、そのある学生ですが。彼は他の学生と同じように(おそらく)ゼミ生と面談をし入って来ました。 

 他の学生と同じように、高校生の時の話等々これまでの話を聞いた時でした。彼は、私と同い年であることを話してくれました。それ自体は珍しいことではないし、現に私の1つ下のゼミ生の中にも私と同い年の学生は何人かいました。
 驚いたのは、出身高校を教えてくれた時でした。彼は私と同じ高校でした。ただ、違ったのは彼は入学後わりと早いタイミングで退学していたことでした。
 私の出身高校は、その地域でも非常に生徒数が多い高校でした。また、校則が厳しい高校でもありました。生徒指導室から髪を真っ黒に染められて、涙を流しながら戻って来るクラスメイトもいました。そんな高校だったからなのか分からないが、退学する生徒も多かったような気がします。
 彼の退学の理由は分かりませんが、その話を聴いて一番驚いたのは、ものすごく短い時間だったのかもしれないけれど、同級生(クラスは違ったが)だったこと。高校生の時はおそらくすれ違ったことさえなかった相手と、大学のしかも学年が違う状況で出逢えたことが信じられませんでした。

 これまで全く違う道を歩いてきた人同士が、偶然道の途中で巡り合う。それが、私のイメージする“人と人との出逢い”でした。まさか同じ道を歩いていながら全く出逢わなかった相手と、遠回りして時間がかかったけど出逢うことができるんだ、と言うことに改めて驚きました。

 これはもう10年以上前の話で、今はもうどこで何をしているか分からないですが。なぜだか最近ふと思い出した稀有な出逢いの話でした。