眠れない夜に

眠れない夜に　何をしよう

服を着替えて　外に行こう

猫を起こさないように　静かに静かに

財布だけ　ズボンのポケットに入れて

近所のコンビニに入って

水を1本と　チョコレートを一個買って

店を出たら　あそこへ行こう

大きな橋のかかっている　川べりに

誰もいない　向こうの街灯だけ明るい

遊歩道の脇にあるベンチに座る

さわさわ　水の音が聞こえる

チョコレートを買ったのを　少し後悔する

ペットボトルを開けて　一口飲んで

大きく息を吐く

なんでぼくは

ここに一人でいるんだろう

一番大事なことを言えなかった

その周りにあるどんなことでも話せたのに

真ん中だけ　言ってしまうと

全部なくなってしまいそうで怖かった

ドーナツみたいだった

周りはおいしく楽しかった

大事なのは真ん中なのに

そこには何もないふりをしていた

明日こそ伝えようと思って

楽しい今日を引き延ばしていた

楽しい今日をずっと手放せないでいた

ドーナツは真ん中から腐っていった

東の空が明るくなってきた

キミはある日いなくなってしまった

あんぱんを一緒に食べようと言った人と一緒に

ボクのことを振り返りもしなかった

何が怖かったんだろう

君がいなくなることより怖いことなんてなかったのに

ドーナツの穴を見つめることを

怖がっていたボクにはわからなかった

胸が苦しくなった

猫がボクの上で鳴いた

ボクはベッドから出て

猫のために缶詰を開けに行った

#眠れない夜に