キツネのノート

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最近の記事

三年日記

去年の1月1日から三年日記を書き始めた。 日々の小さな(あるいは大きな)出来事を書き留めておく場所が欲しいと思っていたのと、2023年は色々な意味で節目の年になるという予感があった。 一日数行という気軽さで選んだ三年日記。案の定、はじめの方は毎日欠かさず何かしらを書いていたが、段々とその頻度は減っていった。それでも忙しい生活の中で、この記憶は取っておきたいと思ったときには自然と日記を開いて書いており、当初の目的を思い起こせばそれで十分だと気づいた。 私が「忘れたくない」と

    • 『きいろいゾウ』のこと

       私は基本的に、同じ本(特に小説)を繰り返し読まない。それよりも、まだ読めていない本を読むことを選んでしまうからだ。  でも西加奈子の『きいろいゾウ』は三度読んだ。一度目と二度目はいつだったか正確には思い出せないけれど、いずれにしても20歳になる前だったと思う。そして二度目を読み終えた私は、「もしいつか、ある状況(どういう状況かは秘密)に置かれるようなことがあれば、そのときはまた、この小説を読もう」と思った。そしてその時がやってきて、つい先日、三度目を読んだ。  一度目、二度

      • キツネ読書倶楽部通信 2022年8月30日号

        小説 シモーヌ・ド・ボーヴォワール『離れがたき二人』(関口涼子訳)、早川書房、2021年  『離れがたき二人』(原題:Les Inséparables)は、ボーヴォワールの親友”ザザ”に捧げられ、生前は未発表だった作品。  のちに周囲から「離れがたき二人」と呼ばれるほどの親友となる、シルヴィーとアンドレの出会いから別れまでが、シルヴィーの視点で描かれている。二人の友情が、シルヴィーから見たアンドレの様子、二人の会話、シルヴィーがアンドレに対して抱く思いを通して鮮やかに立ち上っ

        • キツネ読書倶楽部通信 2022年1月2日号

          小説 吉田篤弘『ソラシド』中公文庫、2021年  この作品は、幻の女性デュオ「ソラシド」にまつわる情報を探し求めて、主人公の「おれ」と妹の桜が奔走する話である。  構成的には、主人公の一人称による語りが中心にあり、話が進むと間にソラシドに関するエピソードが挿入されるようになる。そうして兄妹は少しずつソラシドの音楽に近づいていく。  作中には、実際に存在する曲がたくさん登場する。音楽に詳しい人ならば、具体的に曲をイメージしながら物語を読み進める楽しみがある。私はというと、残念な