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キツネ読書倶楽部通信 2022年8月30日号

2022年8月30日号

小説
シモーヌ・ド・ボーヴォワール『離れがたき二人』(関口涼子訳)、早川書房、2021年
 『離れがたき二人』(原題:Les Inséparables)は、ボーヴォワールの親友”ザザ”に捧げられ、生前は未発表だった作品。
 のちに周囲から「離れがたき二人」と呼ばれるほどの親友となる、シルヴィーとアンドレの出会いから別れまでが、シルヴィーの視点で描かれている。二人の友情が、シルヴィーから見たアンドレの様子、二人の会話、シルヴィーがアンドレに対して抱く思いを通して鮮やかに立ち上ってくる小説だ。そして物語の後半では、アンドレの恋人パスカルが登場し、ラストにかけて、シルヴィー、アンドレ、パスカル、それぞれの思いが交錯していく。
 この小説を読むと改めて、シスターフッドを描いた作品はいいな、と思わせてくれる。
 また巻末には、ボーヴォワールの養女によるあとがきや写真資料も収録されており、実際のボーヴォワールと、親友ザザの関係性を垣間見ることができる。

エッセイ(?)
岸本佐知子『なんらかの事情』、筑摩書房、2016年
 文庫の裏表紙にある紹介文には「これはエッセイ? ショートショート? それとも妄想という名の暴走?」とある。読んでみるとたしかにこの作品をエッセイというカテゴリーに押し込むのは難しい。
 エッセイだと思って読んでいると、いつのまにか著者の思考の渦に巻き込まれている。その飛躍がとにかく面白く、顔がにやにやしてくるので、外で読むには危険なほどである。
 そうそう、と共感できる話もあれば、ふむふむ、と新たな物の見方を発見させてくれる話もある。読むと思わず誰かと共有したくなる一冊。
 そしてそれぞれのエッセイを彩るクラフト・エヴィング商會のイラストも、この本を手に取る楽しみの一つとなっている。

絵本
荒井良二『あさになったので まどをあけますよ』、偕成社、2011年
 さまざまな場所に住む子どもたちが、朝になり、窓をあけ、そこの好きなところを言っていく、という構成の絵本。
 作品全体が朝の光に包まれていて、ページをめくるたびに清々しい気持ちにさせてくれる。そして色彩はあざやかでありながら、穏やかな空気に満ちていて、静けさがある。ゆっくり読んでいくと、気持ちがすーっと凪いでくる、そんな作品となっている。
 とある機会に、荒井良二さんご本人の朗読を聞いた思い入れのある絵本。そのときに、震災時に抱いた思いが反映されていることを知り、胸がじーんとしてしまった。
(関連のインタビュー:https://book.asahi.com/article/11722057

読書のおとも

読書記録用ノート
親友とカキモリへ行って、表紙や紙を自分で選んで作ってもらった
記録するのは著者とタイトルのみ


最後までお読みいただきありがとうございました。

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