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キツネ読書倶楽部通信 2022年1月2日号
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小説
吉田篤弘『ソラシド』中公文庫、2021年
この作品は、幻の女性デュオ「ソラシド」にまつわる情報を探し求めて、主人公の「おれ」と妹の桜が奔走する話である。
構成的には、主人公の一人称による語りが中心にあり、話が進むと間にソラシドに関するエピソードが挿入されるようになる。そうして兄妹は少しずつソラシドの音楽に近づいていく。
作中には、実際に存在する曲がたくさん登場する。音楽に詳しい人ならば、具体的に曲をイメージしながら物語を読み進める楽しみがある。私はというと、残念ながら知らない曲ばかりで、おまけにほとんどを電車の中で読んだので、後から家で探して聴いたのだけれど、それもまた答え合わせをするようで楽しかった。それに肝心のソラシドはもちろん架空であるから、彼女たちの奏でる「冬の音楽」は文章から想像を巡らせることしかできない。
まずいコーヒー、古いレコード、1986年のノート…『ソラシド』は、物語全体を漂う冬の空気に身体を浸しながら読むのが心地よい小説だ。
「わたしは夏より冬の方が好きで、冬は寒いからあったかいものがお
いしくなるでしょう?」(p.238)
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エッセイ
「新潮」編集部編『パンデミック日記』新潮社、2021年
音楽家の青葉市子さんの文章を何か読みたいなと思って探していた時に見つけた本。
タイトルが示唆している通り、これはコロナ禍に書かれた日記を集めたものである。一週間ごとに書き手が変わり、52人の表現者たちがどのように2020年を過ごしたか、その記録がこの一冊に詰まっている。
はじめは気になる人の日記だけを読もうと思っていたのだけれど、2020年がどんな年だったか、この本を通して思い出してみるのも良いかと、結局はじめから最後まで通して読んだ。
すると、個々の書き手の日常の記録から、社会の状況が次第に変わっていく雰囲気が伝わってくる。2021年にはもはや当たり前となったあれこれも、2020年のはじめにはまだそうでもなく。様々なものがオンラインになったり、延期になったり、中止になったり。それでもみんなそれぞれ色々な活動をしながら生活を続けていたのだなあと感心しつつ、個人的には2020年はなんだか停滞した年だったなあと2022年になった今、改めて振り返るなどした。
この本は、たくさんの人の文章を一度に読めるのが良い。文体が好きだなと思って、それが作家であれば、別の作品を読んでみようと、次の読書へつながる。そもそも人の日記を読むというのはとても面白いことだ。
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絵本
きくちちき『とらのこ とらこ』小学館、2018年
寅年に読むのにふさわしい一冊。
トラの子ども、とらこはいろいろなものをつかまえようとするのだけれど、なかなかうまくいかない。でも最後には思い切ってあるものにとびかかり…
きくちちきさんのダイナミックな絵のタッチと、「つかまえる」という動作がぴたりと合っている作品。途中には画面全体が暗くなる部分があり、先の展開がどうなるのかと読者をどきどきさせてもくれる。
そして一番最後のページをめくるのを忘れずに。子どもに読み聞かせをしていたら、必ず同じことを子どもにしてしまうはず。
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読書のおとも
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最後までお読みいただきありがとうございました。
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