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買い支えることの恐ろしさ


買い支えることは、買った人の単なる自己満足でしかないかもしれません。もしかしたら、悪いほうに舵が向いていることに気づかず、突き進んでしまうことを後押ししてしまっているかも…




意志や意図に感銘をうけ、応援したい、追っかけたい、と思う作り手の方が私にもいます。
でも、愛は盲目!
「買い支える」ことは一概には良いこととは言えない場合もあるよなぁ、と、昨今思うのです。


もしその製品の作り手の労働環境が最悪だった場合、買い支えることでその人は働けば働くほど苦しくなります。
もしそこに使われている素材が持続可能なものでなく、枯渇の心配があるものだとしたら、買い支えているつもりが資源をむさぼることにツナがっているかもしれません。


キャパオーバーの注文品を引き受けてしまった…
手も足りない
材料も手に入らない
時間もない
つらい
でも期待には応えたい
求められているからどうにか作らなくては…


製品の質は落ち、作り手は身を削る
悪循環と破滅への道のできあがりです。


黙って買い支えることはとても怖いことだし、それを黙って受けてしまう作り手のあり方もいけません。間に仲介が挟まるほど透明性がなくなり、ブラックボックス化していきます。
伝統工芸に携わりながら、健康で文化的な生活を送れていない作り手がいるかもしれません。


良いと思ったら黙って買い支えることや、良くないと思ったら黙って買わないことは、買い手の意思の表し方のひとつではありますが、売り手や作り手が事態の良し悪しに気づくには即効性が無さすぎます。
手仕事のものは、大手メーカーの販売する大量生産の生活消費財とは違い、作り手が身を削って作るものです。限られた身で、良いものや良い意思を少しでも多く作り、伝えたいと思ってできた結晶です。だから、方向修正は早くできるに越したことはありません。

そうしたものを買ってくれるあなたは、"大勢の消費者の中のひとり"ではなく、"ひとりのあなた"として大きな影響力を持っているのです。


気に入った作り手さんが良い労働環境で仕事をできているかどうか、もし手段があるなら調べてみていただきたい。例えば、その人がSNSやブログをやっていたら見てみるとか、その人の作品を扱っているギャラリーやお店の人に聞いてみるとか。

疑問に思うことがあったら、質問してみていただきたい。作り手が気づけていない問題があるかもしれません。

作り手が自分の発信・販売コンテンツをもっている人ならば、それを利用するのがいちばん距離が近くてズレが起こりません。

しかし皆が皆そうではありません。作り手は人とのやり取りが苦手な人も多いです。だから、作り手のことをよく理解し、作り手のかわりに意思を伝えてくれるお店やギャラリーも大切な存在です。お店やギャラリーが作り手の想いを伝える役目、さらには作り手さえ気づいていなかった魅力を引き出してくれます。消費者からの意見をまとめて、分かりやすく作り手に伝えてくれます。作り手は作ることに集中することができます。
良いお店は、お店ごと応援したいですね。良いお店には、良い作り手さんが集まってきて、良い循環が生まれていきます。


良いところは良いと伝える。
悪いところは悪いと伝える。
疑問があれば、質問する。

こんなことしたらストーカーとかクレーマーかと思われるかもと心配しているうちは、本当の応援者ではありません。面倒でしょうけれど、それが今後のためにはとても重要なことです。迷惑がられたり、残念な対応をされたら、それはそれです。それに、ちょうどキャパオーバーの真っ最中かもしれません。そのときは聞き入れてもらえなくても、あなたの言葉は確かに、作り手や売り手が流れを変えようと決断するきっかけや、ひとにぎりの肥料になるのです。
※ただし本当に迷惑なストーカーやクレーマーにはならないように!!


私は手仕事のものの作り手でもあり、買い手でもあります。両方の気持ちが入り混じった文章になってしまいました。
しかし業種は違えど、ほとんどの人が誰かに何かを提供していますし、誰かから何かを得ているはずです。少しでも良いつながりをもてたらいいですよね。

これからも私は元気をもらうため、推しの作家さん職人さんと出会っていきたい。
消費者として、自己満足の推し活にならないように気をつけたいし、顔の見える状態(安否が分かるとか透明性があるという意味)を望みます。そして作り手として、ちゃんと窓を開けて、ひとりよがりのものづくりにならないように気をつけたいなと思います。
※漆刷毛のご意見いつでもお待ちしています。

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