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2024/5 東北旅行記 ep5:殿様よりも馬の股間


前回のあらすじ

麺食らって面食らう

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本編

●殿よりも馬の股間をアピールする世にも珍しい像

山形らしいそばを食らって腹ごなしが済んだので、街をぶらぶら歩く。東口駅前は「山形駅前大通り商店街」という百貨店や飲食店が並んでいる、文字通りの目抜き通りがあり、相応に栄えている。しかし、次なる目的地である霞城公園に向かい、線路沿いを北に歩いていくと、ものの数分で一気にのどかな風景が広がる。

排水溝にまでライン引くかね?

高架の下をくぐり、一本道を歩くとほどなく霞城公園に到着。平日とはいえ、いちおうGWのさなか。にしてはかなり閑散としている印象を受ける。まあ、裏を返せばのんびり見て回りやすいんだけど。

かなり水質が悪そう?

お濠をまたぐ橋をわたり、二ノ丸東大手門から入る。いくつか門を抜けると、ちょっとした広場に出て最上義光像がお出迎え。なのだが、この像、殿の座している馬が勇ましすぎるほどに前足を上げている瞬間を切り取ってしまっている。それがゆえに、本来もっとも殿が勇壮に誇り高く見えるべきド正面から最上義光公は見えず、馬の腹部、そしてまたぐらだけがこちらを覗いている始末であった。もっとなんとかならんかったのか。

真正面に勇猛果敢に股間を見せつける馬
ズームアップ

●重機で芋煮、数奇な出会い

像のあるレベルから一段上がると資料館、というほど大規模ではないが、最上家についての資料や、観光案内の人がいる屋内スペースがある。悲しいかな、三つ学んで二つ忘れるという水前寺清子インスパイアな海馬であるため、こういうところで一生懸命学んでもすぐに消えてしまう。

ので、ざっと流して眺めていく。案の定、この日に眺めた資料で覚えているのは、公園で開いている芋煮イベントみたいな集いで、溶鉱炉かというレベルのバカでっかい鍋で芋煮を作り、これまたバカでっかいおたまを重機にくくりつけて掬い取っているみたいなポスターのみである。別にいくつもコンロを用意してやればいい話と思わなくもないが、おそらく集った人たちが、ひとつ同じ溶鉱炉でつくった芋煮を食らう点に妙味があるのだろう。

NHK NEWS WEBで見つけた画像(『3年ぶりに山形で「日本一の芋煮会」重機使い約3万食分調理』、2022年9月18日  https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220918/k10013823541000.html)

さて、ふらふらしていると観光案内のおっちゃんが話しかけてきた。きっかけは忘れたが、芋煮の肉は牛肉しか認めない、豚とかで作っている流派もあるがあんなものは豚汁である、とかなんとかいっていた。このおっちゃんが話好きで、話が切れたので立ち去ろうと思ったら矢継ぎ早に次の話題に転換して釘付けにされる。邪見にするのも悪いと感じ、時間に余裕もあったので付き合うよ。

そのうち話の流れでどこから来たのか問われる。私の住まいは東京都内ではあるが、そのうち知名度は下から数えた方が早そうな自治体である。そのため、ギリ嘘ではない盛れる範囲で、かつ関東に土地勘がない人でも聞いたことがありそうな場所という観点から「●●市、まあめちゃくちゃ良くいえば吉祥寺の辺りです」と答えるようにしている。とはいえこの回答から吉祥寺トークにつながったことはない。

しかし、そのとき奇跡が起きた。おっちゃんは「え、●●市? 知ってるよ、親戚がいるから何回も行ったことがある」と返してきたのである。もし自分の持てる運に総量があるのならば、このような場所で使いたくなかった。それにしても奇遇なことがあるもんだ。なんとなくそこからおっちゃんに親近感を覚えて、防戦一方だった私・妻・おっちゃんのスリーショットトークの主導権を得んとこちらから話題を提供するなどした。

とはいえいつかは話題が尽きる。奇妙な縁のおっちゃんに別れを告げ、再び外へ。かつて本丸があった広場に向かう。お濠があったであろう空間に緑が広がっていて非常に不思議な雰囲気を醸し出している。実にのどか。桜の木がたくさん植わっているちょっとした公園みたいなところでボール遊びしたり、語らったりしている人を横目に一周して、再び二ノ丸東大手門から、外へ出た。

●飄々と、大量に

次なる目的地は榮玉堂とかいう甘味処。霞城公園から七日町方面へ向かう道中にある。どら焼きが名物で、さまざまな種類を揃えている。

結構な人がいる。どら焼きは1個200円くらいでそこそこする。それでもみんな当たり前のように複数個、買っていく。中でもすごかったのは、細身のおっさん。その時は思わなかったが、この原稿を書いている今、お笑いトリオ・や団のロングサイズ伊藤に似ているかもしれないと思う。

別に細身だから、おっさんだからどら焼きを大量に買っているというのが面白いのではない。その買い方である。普通、どら焼きでもケーキでも、買うときはまあほぼ直立でショーケースの該当商品を指さしながら注文していくだろう。それがこの人は、なぜか両足を肩幅以上に開き、そこを拠点に上半身を右へ左へ伸ばしながらコミカルに注文していく。しかも、2個や3個ではなく5個とか10個単位で複数種類を注文していくから驚いた。

その奇妙な注文フォーメーションには、「いや、どら焼きをこんなに欲しいのは俺じゃなく家族で、あくまで今日は家族に頼まれて買いに来たんですよ」的な恥じらいと、それを悟られまいと飄々としたスタンスを崩さない、なけなしのプライドが漂っていた。

ちなみにこの店はテークアウトのみならず、店内でどら焼きはもちろん、その他の甘味や飲み物を楽しむことも可能。私と妻はイートインでどら焼きを食らった。

今回はここまで。馬の股間の話に始まり、ロングサイズとかいう単語も出てくるなどお目汚し失礼いたしました。

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