料理の苦手だった私が料理教室で伝えたいこと
2020年4月、私は小さな料理教室を始めようとしていました。当初3月に公表しようと準備しておりましたが、コロナウイルスの感染拡大に伴い状況を踏まえて決めようと悩むうちに、ついに公表できないまま、私は当面の開催を延期することに決めました。ちょうど昨日、私の暮らす静岡県は緊急事態宣言を解除されましたが、改めての開催も慎重に準備しようと考えています。
教室の開催は今すぐには叶わない、けれども私には料理教室を通じて伝えようとしていたことがあります。その中には言葉で伝えられることもきっとある。そんな思いからnoteを始めることにしました。
今日は自己紹介を兼ねて、お料理の苦手だった私が教室を始めることにした経緯と私がお料理を通じて伝えたいことをご紹介したいと思います。
料理を始めたきっかけとお食事の力
以前の私は全く料理ができませんでした。できないどころか興味すらなく、お料理する時間があるなら別のことがしたいと考えていました。そんな私が料理をするようになったきっかけは自分に自信が持てず苦しかったから。そして顔中のニキビに悩んでいたからです。
料理を始めた頃のこと。私は社会人になって間もなく、親しい友人の居ない新しい土地で、タイミング悪く失恋もして、とにかく元気のない日々を過ごしていました。
当時憧れだった業種に就くことができず、うまくいかないことが重なったために私はすっかり自信を失っていました。仕事に行く以外のことができず、休みの日は起き上がれないまま何をするわけでもなく過ごしました。そしてそんな自分が嫌でたまりませんでした。仕事や趣味に打ち込んでいる友達がキラキラして見えて、一方で私はやりたいこともなければこれといった長所もなく、時間があっても自堕落に過ごす。夢や目標がないことが恥ずかしいことのように思えて、そんな自分が嫌なのに何の行動もできない。行動できない自分はだめだ。そんな負のループの中にいて自分の姿を誰にも見せなくないと思っていました。
そんな中、私は日本インナービューティーダイエット協会代表理事で後にお料理を師事することになる木下あおいさんのブログに出会います。お料理には全く興味がなかった私ですが、「腸を整えるお食事でニキビは確実に治る」というあおいさんの言葉に興味を持ちブログを度々訪れるようになりました。初めは何となく読むだけだったものの、色鮮やかな料理の写真を見るうちにふと料理をしてみようかという気持ちが湧いてきたのです。というのも私は顔中にあるニキビにとても悩んでいたし、色鮮やかで綺麗なものが好きだったし、何よりそろそろ1つ自分を褒められるような行動をしないと沈んだ気持ちがいよいよ立て直せなくなってしまいそうでした。
当時の料理は自分でも美味しいと思えない代物でしたが、それでも台所に立っている自分をちょっといいなと思うことができました。スーパーで野菜をカゴに入れている自分に、久しぶりに誇らしさのようなものを感じました。しかも料理をするようになってから私の肌荒れは劇的に改善されたのです。食事は燃料のようなもので身体に入れば何でも一緒という感覚だった私にとってこれは驚くべき変化でした。
そうして台所に立つうちに、自分の底の方からふつふつと小さいけれどエネルギーが湧いてくるのを感じました。腸内環境を整える食事についてもっと学びたい。そう真剣に考えるようになった私は木下あおいさんの主催する料理教室に通い、ついには自らも伝える立場になるために腸内環境を整えることを軸にした身体の内側から綺麗になる食事方法について専門的に学びを深めます。
料理のできない私は、いつの間にか台所に立つことが当たり前になり、長年悩んだ肌荒れは改善し、変わりたくていつも苦しんでいた自分を自分で褒めることができるようになりました。日々穏やかな気持ちで過ごせるようになり、家族にも優しい言葉を使えるようになりました。季節の巡りに合わせて旬の食材を楽しむことは本当に心地よくて、何気ない毎日が愛おしく、さらには時の流れや歳を重ねることまで前向きに捉えることができるようになりました。料理を通して、私の目に映る景色は大きく変わりました。今、以前の私のように悩んでいる方々に日々の食事の持つ力をお伝えしたい。料理教室を開くことを目標にしたのはそんな想いからです。
なぜ料理なのか
私が他でもなくお料理をお伝えしたい理由は実はもう一つあります。
生理学の言葉で”ホメオスタシス”という言葉があります。私たちの身体は生きるために温度やpH、浸透圧を常に一定の範囲に保ち、必要な酸素や水、栄養を取り込み、不要な老廃物を排出しています。そして取り込まれた栄養をもとに私たちの細胞は常に生まれ変わり続けています。このように、常に生まれ変わりながら生命維持のために身体のあらゆる機能が保たれる仕組みのことをホメオスタシスと言います。
大学時代、生理学の授業でこれを学んだとき、私はいたく感動しました。
その当時、私にとってとても大切な人が、精神疾患で苦しんでいました。彼女はいくつも病院に行き、何種類もの薬を飲み、カウンセリングを受け、さらには宗教や心理学について学んだりと本当にたくさんのことを試していました。けれどもその中に苦しみを救ってくれるような出会いはありませんでした。救いを求めて行ったのに理解してもらえず、むしろ傷付けられるようなことが度重なりました。大切な人が苦しんでいるのを見ているのは本当に辛くて、こうしている間にもっと悪くなってしまうのではないか、不安でたまらず先の見えない暗闇の中にいるようでした。もちろん一番苦しいのは本人で、私には「わかるよ」と言うことさえできませんでした。側で見ていて、私に彼女の辛さを本当の意味で理解することはできないと思ったから。元気になって欲しいと切実に願う一方で、私は何もできませんでした。大切な人を前に、ただただ無力だと思いました。
そんなときに習った「ホメオスタシス」。身体には様々な情報をフィードバックする機能があり、生きている限り異常が起きたらそれを感知して元に戻そうとする力がある。つまり、何もしなくても身体は勝手に元気になる力を持っている。この事実は私に大きな勇気をくれました。身体が本来の機能を発揮できればいつか必ず元気になる。それならば何か身体を応援するようなことがしたい。直接元気付けられなくても何かできることがあるんじゃないか?私の中にはそんな希望が生まれました。
自分を想ったお食事をするというのは、まさに本来の身体の機能を応援することにほかなりません。
私は特別な何かをするより、日々の生活の中にこそ自分の心と身体を変える力があると考えています。しかも食事というのは1日3回、毎日チャンスがあります。また料理というのは一人でも、都会でも田舎でも、特別な資金がなくても、家にいながらできて誰にでもチャレンジしやすいことだと思います。自分を思いやってお料理をすることは、どんな時であっても元気をくれる優しい手段です。例え元気になる実感が持てなくても、食べたものは必ず私たちのエネルギーや身体の一部となってくれます。この優しい手段は、私が経験したことのない苦しみを抱える人にとっても共通の手段だと考えています。
長くなりましたが、私がお伝えするのは腸内環境を整えることを軸にした美味しいお料理の作り方や身体に優しい食事方法です。そしてそれを通じて、本当にお伝えしたいことは、自分を大切にすること、大切な人に愛を伝えること、どんな自分にも寄り添う手段になること。お越しくださる方に、お料理を通じてそんなことを手にしてほしいと願っています。
最後になりますが、私はこの小さな料理教室の屋号を「季と和」と名付けました。
名前に込めた思いはまた別の機会にご紹介したいと思いますが、これから自分に寄り添う手段としてのお料理、お料理を通じて季節を追いかける楽しみ、日々の生活の中でワクワクしたことや心ときめいたことを発信していきたいと思います。
どうぞよろしくお願い致します。
季節の野菜と身体にやさしいごはん
料理教室「季と和」