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【魔王】犬養と今のルール


840文字の#ミステリー小説が好き
謎が解けたり、解いていく過程だったり、少し複雑な思惑が入り混じる、読み終わった後に気持ちが暗くなり過ぎないミステリー小説が好きだ。
大体は読んだら、すっきりと詳細は忘れる。あらすじぐらいしか覚えていない。
その中で十数年前に読んだある小説が、なぜか日常生活の中でフッとセリフを思い出したり、小説の状況を重ね合わせたりしてしまうものがある。
伊坂幸太郎の【魔王】だ。
ライトなミステリー小説が好きな人は必ず通る伊坂幸太郎。軽く読めて好きだ。
全部読んでいる。読み終わった後、アクション映画に似た爽快感が残り、著者には申し訳ないが、詳細は思い出せないぐらい忘れてしまう。
ただ、【魔王】だけは、伊坂幸太郎の中でも異色な気がする。
その【魔王】をはじめ、続編の【モダンタイムス】は、この十数年何度も詳細に思い出した。

考えろ考えろマクガイバー。(考えろ考えろ自分)
この中で犬養は誰だ。
どの方向に皆を持っていこうとしているのか。

そして、世界中が、色々な思惑が入り混じり、混沌とし、ミステリーの中で解決してくれる(誰か)のように、(誰か)を待っているこの時代、どれだけこの小説を思い出したか。

主人公の安藤が気にする犬養の思惑。現実の世界で、あちこちで起こった。この小説を読んでいた身としては、安藤が気にしていたことはこの事か!と、1人鳥肌がたった。

正解が分からない、解決策に前例がない世の中で、小さなコミュニティでは、そのトップの人によって、色々小さなルールが作られた。
それはまさに、あちこちに犬養のような人が現れ、皆を統一し、空気を作り、自分が正しいと思う方向に皆を並べた。

それはそれは、長いミステリー小説を読んでいるように、傍観者として、そしてたまに脇役のようにその空気の中にいた。

きっと【魔王】を読んでいなかったら、冷静にこの時代を過ごすことはできなかったのではないか。

今の時代だからこそ、【魔王】と【モダンタイムス】はとても面白く時代を重ねて読める。

考えろ考えろマクガイバー。

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