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バージニア州知事の今頃出てきた差別写真のミステリー

現在この時点でバージニア州のラルフ・ノーサム州知事が辞任していないのが信じられない。

アフリカ系アメリカ人歴史月間の今月1日、医師でもあるノーサム知事の医学校の卒業記念アルバム(イヤーブック)のページに、白人至上主義団体「クー・クラックス・クラン(KKK)」の白装束と顔を黒く塗ったブラックフェイスという、人種差別の二大シンボルの格好をした二人が並ぶ写真が載っていたことが明るみに出た。とんでもない写真だ。そういう装束なので顔が見えないが、知事は、写真の二人のうちどちらかが自分だったと言ったり、そのあと自分ではない(でもマイケル・ジャクソンの仮装で顔を黒塗りしたことはあるらしい)と言ったりしているが、たとえ自分の写真ではなくても、自分の名前がついたページにこんな写真が載っているだけで完全にアウトなはず。民主党の知事だが、当然のことながら民主・共和両党から辞任のプレッシャーをかけられている。

もっと信じられないのはこんな写真が今まで表に出なかったことだ。このイヤーブックは1984年のもの。それほど昔でもないではないか。私のアメリカ政治に関する知識は主にテレビドラマと映画に基づくものだが、支持政党の大物が新しい候補者にヤバいことがないか徹底的に調べさせるところをよく見る。立候補した後に出てきてはまずい話が無いように、あるいは、あったらそれをどうもみ消すかとか。日本でも「身体検査」というでしょう。敵方の候補者についても「オポジション・リサーチ」とかでそれこそ住んでいる家のゴミ箱をあさり、家族、親戚や友人まで調べる、と。そういう調査で高校・大学のイヤーブックを見るのは基本中の基本では?と遠く離れた日本にいる私でも思うぐらいなのに。

それに、イヤーブックに載せるのは在学中の活動や学校生活の思い出を象徴する写真だ。ページにこんな写真が載っているからには、学生時代の知事が差別的な活動に関わっていたことが想像できる。ということは、問題になる写真などがもっと出てくる可能性もある。長く黒人差別の歴史に苛まれてきたバージニア州の知事がこんな過去を隠していたとは。

知事が辞任したら、副知事が知事に昇格して2021年の知事選挙までの残りの任期を務めることになる。バージニア州のフェアファクス副知事は黒人だ。今までアメリカで州知事を務めた黒人はたったの三人。今回、四人めの黒人知事が誕生すれば、黒人差別のスキャンダルの結末としてはいいストーリーになるかもしれない。

などと思っていたら、フェアファクス副知事に2004年に性的暴行を受けたという女性の話が浮上。この女性がワシントンポスト紙に語ったのだという。副知事は女性とは合意の上の関係があったが暴行は完全否定。このタイミングでこういう話が出てきたことは怪しいとメディアに語った。
バージニア州では、知事候補が副知事候補を選ぶわけではない。つまり、フェアファクス氏は同じく民主党員ではあるが、ノーサム氏の片腕として選ばれ共に選挙戦に臨んだのではない。この記事は辞任を拒絶しているノーサム知事側の人間のしわざかと聞かれた副知事は「偶然だと思うか」と聞き返した(その後、知事のせいだと言うつもりはないと言い直した)。

ノーサム知事が辞任し、またフェアファックス副知事も暴行疑惑で辞めることになったら?州のナンバー3である州司法長官が知事に昇格する。現在のバージニア州のマーク・ヘリング司法長官も民主党員で、既に次の州知事選挙への出馬を表明中。今頃、自分の過去に表に出てはまずいものが無いかどうかじっくり考えているだろうか。もう、ありとあらゆるメディアが彼の身の回りをかぎまわり始めているのは間違いない。

参考にしました





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