Kitohito Design

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    • Kitohito Designからのお知らせ

      Kitohito Designからのお知らせ用のマガジンです。一時的なお知らせについては、一定期間掲載した後削除する可能性があります。

    • UX以前のUX(私的UXデザイン史)

      現在のような仕事を30年近く続けている私にとって「UX」という言葉や概念が生まれたのはつい最近のことのように思えます。それ以前「UX」という言葉は使われていませんでしたが、UX"的な"考え方はありました。 現在のUXは包括的、体系的によくまとまっていると思いますが、範囲が広すぎて理解しづらい面もあるように思います。私がUX以前に見聞きしてきたUX"的な"ものをひとつひとつご紹介することで、この広い概念を理解する助けになるのではないかと思い立ち、この文章を書き始めました。 あくまでも私の個人的なUX体験の歴史ということで、気軽に楽しんでいただければ幸いです。 ※本シリーズは、UX MILKさんに寄稿させていただいている「UXという言葉が登場する以前に私が見たUXデザイン」と基本的に同じ内容です(一部、加筆修正している場合があります)。

    最近の記事

    UI/UX関連セミナーのお知らせ

    4月から5月に実施するセミナーについてお知らせいたします。 『ユーザビリティ評価の基礎と使いやすさ向上のための検証ポイント』2023年4月18日(火) 10:30〜17:30 オンライン 日本テクノセンター様主催 第二部の講師を萩本が担当します 詳細および申し込みはこちらからどうぞ https://www.j-techno.co.jp/seminar/seminar-55090/ 『UXデザイン基礎入門 1日コース』2023年4月24日(月) 9:30〜18:0

      • UX以前のUX(私的UXデザイン史)15 ユーザビリティ 2

        一般的には「ユーザビリティ」=「使いやすさ」「使い勝手」などと理解されているかと思いますが、より専門的にこの概念を捉えようとすると、細かい議論が必要となっていきます。 今回は、ユーザビリティの定義やユーザビリティという概念の捉え方について、私なりの解釈を加えつつお話します。 1. ユーザビリティの定義ISOによるユーザビリティの定義を知ったのは、「ユーザビリティ 1」で触れたISO 13407騒動と同時期だったと思います。 それ以前は、いろいろな人がいろいろなユーザビリティ

        • UX以前のUX(私的UXデザイン史)13 CRX

          私が富士ゼロックスに在籍中、競合であるキヤノン、リコーと共同でコピー機のUIデザインルールを決めるという極めて珍しい取り組みがありました。 1. ジャーニーマップUXデザインツールの一つとして、よくジャーニーマップが紹介されます。ジャーニーマップをひとことで言えば、一連のユーザー体験を時系列的にまとめ、行動や感情の変化を視覚化したものといったところでしょうか。典型的なケースとしては、ユーザーが商品を購入する過程でオンラインのWebサイトとオフラインのリアル店舗を行き来する様

          • UX以前のUX(私的UXデザイン史)12 PARC

            私は大学のときに初めてAppleのMacintoshに触れました。これをきっかけにMac関連の雑誌などを読みあさるうちに、GUIがコンピューターを操作するユーザーインターフェイスとしていかに画期的だったか徐々に理解するようになり、実は最初にGUIシステムを作ったのはAppleではなくPARCだったことを知るに至りました。 PARCはPalo Alto Research Center(パロアルト研究所)の略で「パーク」と読みます。もともとはアメリカのゼロックスの一部門だったは

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            UX以前のUX(私的UXデザイン史)11 GUI

            UX(ユーザー・エクスペリエンス)とは切っても切れない関係のUI(ユーザー・インターフェイス)。この言葉が広まったのは、UIの一種であるGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェイス)が注目されるようになったのと同時期だったと思います。 私自身は、GUIを通してUIを理解したような感覚なので、今回のテーマはあえて「GUI」としました。 UIやGUIという概念を知ったのは学生時代だったと記憶していますが、社会人になってからは、業務としてGUIをデザインする現場に触れ、それを評

            UX以前のUX(私的UXデザイン史)10 操作性

            大学では工学部系のデザイン学科に在籍し、さらに学部4年から修士にかけての3年間はその学科内の人間工学研究室に身を置いた私は、1993年に大学院を修了し富士ゼロックス株式会社に就職、デザイン研究所(当時)に配属されました。 今回はタイトルを『操作性』としましたが、主に就職したころのエピソードをいくつかご紹介します。 1. 操作性とユーザビリティ当時の富士ゼロックスのデザイン部門には操作性デザイングループがあり、私はここに所属しました。主な仕事は、開発中の自社製品がユーザーに

            UX以前のUX(私的UXデザイン史)9 筋電インタフェース

            スマートウォッチなどのウェアラブルデバイスや生体認証など、UI(ユーザー・インタフェース)の進化の一つの方向性は、機器とユーザーとの距離を近づけていくことにあるように思えます。 究極的には、心拍や脳波など、人間の体から発せられる生体信号を直接機器と接続するUIがイメージされていると思われます。 実は私自身、学生時代にそうした生体信号の一種である筋電インタフェースを作ってみたことがあります。 1. 人間工学研究室での活動本シリーズ7回目「人間工学」(https://note.

            UX以前のUX(私的UXデザイン史)8 ユニバーサルデザイン

            UXデザインと同時に語られることはあまりないようですが、製品やサービスとユーザーの関係性についての重要な概念に「ユニバーサルデザイン(UD)」があります。 恥ずかしながら、自分で作ったWebサイトもユニバーサルデザイン仕様にできていない私が偉そうなことを言える立場ではないのですが、今回はこの話題を取り上げたいと思います。 1. 国際福祉機器展大学の卒業課題のテーマが寝たきりの人のためのツールの提案だったこともあり、先生に教えていただいた国際福祉機器展(当時は別の名称だったか

            UX以前のUX(私的UXデザイン史)7 人間工学

            「人間工学」というと、UIデザインやUXデザイン、ユーザビリティとは別の分野だと思われる方も多いと思いますが、私の中ではかなり近いものだと思っています。 1. 人間工学研究室私が行った千葉大学工学部工業意匠学科(当時)には、当時9つの研究室がありました。3年生まではどの研究室の授業も自由に選択でき、4年生になるときにいずれかの研究室に所属して卒業研究を行います。 研究室は、デザインの王道のプロダクトデザイン、グラフィックデザイン、空間デザインの他、デザインの要素技術に特化し

            UX以前のUX(私的UXデザイン史)6 はじめてのMac

            私の世代でUIデザインに関心を持った人は、多かれ少なかれAppleのMacintoshに影響を受けているのではないでしょうか。私も例外ではありません。 私は大学ではじめてMacに触れ、GUIを体験しました。そこから、UIを適切にデザインすることがいかに重要か徐々に理解するようになり、現在の自分のベースとして根付いていくことになります。 1. マイコンブーム時代は大学時代から数年さかのぼります。1980年代、私の中学高校時代にマイコンブームがありました。 当時のマイコンという

            UX以前のUX(私的UXデザイン史)2 工業デザイン

            時代は一気に飛んで1980年代後半、私は工業デザインを学ぶ大学生となりました。 1. 理系のデザイン学科私の通った高校では、大学受験に向けて高2から文系理系別のクラス分けになるので、高1の時にどちらかを選択する必要がありました。 もともと絵を描くことは好きで美術の成績はよかったのですが、美大目指して本格的にトレーニングを積んでいる人たちと競えるレベルだとは思っていませんでした。気質的にはやや理系的だと思うのですが、化学は得意でも物理は苦手でしたし、社会は苦手でも日本史だけ

            UX以前のUX(私的UXデザイン史)5 エスノグラフィー

            UXデザインの調査手法としてしばしば取り上げられるエスノグラフィー。最近になって、実は自分が学生時代にこれを体験していたことに気づきました。 1. 意匠論・意匠史私がデザインを学んだのは工学部工業意匠学科(当時)で、この学科はさらに9つの研究室(ゼミのようなもの)に分かれていました。4年になるといずれかの研究室に所属し、研究室のテーマに沿った卒業論文や卒業制作を行うことになりますが、3年まではどの研究室の授業も履修することができました。 私は、割と早くから人間工学研究室に入

            UX以前のUX(私的UXデザイン史)4 デザインイメージ調査

            大学では、様々な切り口でデザインというテーマを取り扱う機会がありましたが、一応理系の工学部らしく、多変量解析という数学的な統計手法を使ってデザインイメージを分析するというアプローチを何度か体験しました。 多変量解析の数学的な意味を厳密に説明し始めると大変難しくなってしまいますし、私自身も完全には理解しきれていないのでボロが出てしまいます。あまりそこには深入りせずに解説したいと思います。 1. 造形とイメージの関係すでにこれまでも触れてきたように、デザインという作業はデザイナ

            UX以前のUX(私的UXデザイン史)3 空間デザイン

            大学で本格的に工業デザインを学び始めると、次々と新しい概念に触れることになります。今回はそんな中の一つ「空間デザイン」を取り上げます。 1. カタチがないものをデザインする「ユーザー体験なんて色も形もないのに、どうやってデザインするというの?」というのは、「UXデザイン」という言葉を初めて聞いた人が必ず感じる疑問だと思います。私は、大学に入って間もないころ同様の疑問を抱いたことがあります。それは「空間デザイン」という言葉を初めて聞いたときでした。 「空間デザイン」という言

            UX以前のUX(私的UXデザイン史)1 はじめてのUX

            現在のような仕事をかれこれ20年以上続けている私にとって『UX』という言葉や概念が生まれたのはつい最近のことのように思えます。 それ以前はUXという言葉は使われていませんでしたが、UX的な考え方はありました。それらにリアルタイムで関わってきた私から見ると、UX的なことに関わっているうちに、次々と新しい概念や言葉が登場し、いつの間にかそれらを統合し体系化したものがUXと呼ばれるようになっていた、という方が正確だと思います。 現在のUXは包括的、体系的によくまとまっていると思い

            UX以前のUX(私的UXデザイン史)14 ユーザビリティ 1

            私は、富士ゼロックスに5年弱務めた後、株式会社ヒューマンインタフェースという会社に転職しました。1998年のことでした。この会社はユーザビリティ評価を専門に請け負う会社です。今ではそのような会社がいくつもありますが、ヒューマンインタフェースは1991年設立なので、日本では極めて早い時期にできた会社と言えるでしょう。 この時期から、私は自分の専門分野をユーザビリティと表現するようになりました。今回と次回、2回に分けて、そのころのエピソードをいくつか取り上げます。 1. 転職