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The Karate Kid in St. Louis の感想

宮本亜門さんが演出をされるということで、St. LouisまでKarate Kidのトライアウト公演を観に行ってきました!

一言で言うと、"ふつう"でした!

どんなミュージカルだったかというと、ハイスクールミュージカルのバスケ部が空手部になった感じです。

せっかくセントルイスまで行ってみてきたので、偉そうなのですが、私の偏見で、ここをこうしたらもっと良くなるのに!と思うポイントをあげてみました。

1. もっとカラテシーンを見たい!

カラテがミュージカルになる、と言うのはとても斬新なアイディアで

「"静"のイメージのカラテをどうやってミュージカルで表現するのだろう」

という期待が私の中に非常にありました。それが、ニューヨークからわざわざセントルイスまで観に行った理由の一つです。実際、悪役の率いるコブラ会道場の生徒たちがカラテをしながら踊るシーンは非常に見応えがありました!しかし、ミュージカルの8割は、ハイスクールラブストーリーにフォーカスされていて曲や舞台セットからもカラテ要素を感じられず、物足りなさを感じました。ブロードウェイに来るときはぜひ、もっと斬新な空手シーンが入っていることを期待してます!

2. 主役 vs. 悪役の対決にワクワクしたい!

物語のメインは、クラスの人気女子生徒のことを好きな男子生徒2人が彼女と男のプライドをかけて、カラテで対決することです。主役のDanielは、身を守ることを目的とした琉球カラテをMr.Miyagiという謎のおじさんから習い、彼のライバル、Johnnyはコブラ会道場のボスJohn Kreeseから相手を打ち負かすことだけを目的とした空手の特訓を受けます。それぞれのチームが相反する”空手の正義”を持つ中で、本当の強さを持っているのはどちらなのか、という問いかけがこのミュージカルの中心になっています。なので、私としては、どっちが勝つかわからない、お互いのチームが互角に戦っていく姿を見てワクワクしたいところ。しかし、圧倒的にライバルコブラ会の2人が強く見えて、主役のDanielとMiyagiは弱いというか、影が薄かったです。

理由は、まず歌の配分です。コブラ会の2人の方が印象的な音楽が多く、かつ、Act1のフィナーレ曲をこの2人が歌うなど、なぜか重要なシーンでライバルの2人の方が焦点が当たるストーリー設計になっています。そのため勝負が互角に見えません。Daniel とMiyagiチームも、たとえばレミゼラブルのジャンバルジャンのように寡黙さの中にある真の強さが見える曲を歌ってほしい。そして、もう一つ残念だったのが、4人が一緒に歌うシーンがないところ。たとえば、4人が一緒に歌って曲の中で2チームの対比を見せるシーンをAct1フィナーレに持ってくると、Act2に向けたいい伏線になるのではないかと思います。

また、俳優のスキルにも差がありました。JohnnyとJohn役の役者は上手く悪役を演じているのに対し、主役であるDanielとMiyagiはまだ自分達の役にはまり切れていない印象を受けました。そして、Daniel役の歌唱力はもう少し頑張って欲しいところ。。。

ミュージカルってストーリー、曲、役者たくさんのピースがしっかり揃わないと一枚の絵に見えず本当に難しいですよね。

2. 亜門さんやこのカンパニーが発信するメッセージを感じたい

私がニューヨークの大学院でミュージカルを書いている時に必ず教授たちに聞かれたのが、"Why do you have to tell the story NOW?" という質問です。なぜなら、ブロードウェイミュージカルはただの劇場の集合体ということではなく、世界に向けて最新のメッセージを発信していく場所という誇りがあるからです。たとえば、今ブロードウェイでやっているCompanyはオリジナルバージョンでは男性だった主役を女性に変えていたり、Music Manでは、性差別的に感じられる曲がカットされ、Sutton Foster演じるMarianという女性がオリジナルより意志の強い、自発的なキャラクターへと変化していました。こういった演出の変化によってそのプロダクションが世に何を訴えたいのかが伝わってくる作品が私は好きです。Karate Kidは、訴えかけるメッセージが伝わってくるほどプロダクションの斬新さや特徴を感じられませんでした。前述したように、8割のハイスクールミュージカルと空手シーンに当たる2割はミスサイゴン or マダムバタフライの演出をくっつけたような既視感のある、なぜ今またこれを観てるんだろうと疑問を感じてしまうシーンが多かったです。(でも、既視感がある方がわかりやすくて、観やすいという意見もあるんですけどね!)

色々意見してしまいましたが、まだトライアウトですし、エンターテイメントだから楽しければいいんです!

ワークショップ、トライアウト、プレビュー、ブロードウェイと、作品の変化を観客も一緒に追えるのが、アメリカでミュージカルのいいところ。

どのような変貌を遂げてブロードウェイに来るのか、楽しみです!

#舞台感想   #Karate Kid

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