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今まで読んだ歌集についての備忘録 その2

今日も今まで読んだ歌集についてのメモ書きを残しておきたいと思います。相変わらず書評と呼べるような代物ではありません。読んだ時の新鮮な気持ちを忘れないようにするためのものです。


深呼吸広場/谷川電話

カバーデザインがめっちゃシンプルで潔い。ランダムに言葉が組み合わされてるように錯覚してしまうけど、よくよく読めば意味が分かってくるような距離感が特徴的。「さて次は何が来るんだろう」っていう独特のスリルがある。初見だとポカーンと口開けちゃうけど、噛めば噛むほど味が出てくるスルメみたいな感覚の歌集でした。とはいえ、まだまだ噛みが足りない部分もあるので読み返そうと思います。第一歌集の方もそのうち読みたい。

新しい猫背の星/尼崎武

表紙と挿絵のポップさも相俟って、今まで読んだ歌集の中では一番ポジティブな雰囲気の歌集。あまり気が利いたことが書けなくて申し訳ないんですが、私もささやかなものを大切にして生きていきたいものだな、と思いました。黒いページに白印刷された連作「やっぱり光について」は、光というテーマが浮き立つ演出ですごく良かったです。こういうこだわり、良いですね。でも私は肩こりがひどいので猫背を治したい派ですね(隙自語)


ロマンチック・ラブ・イデオロギー/手塚美良

平成の終わり、かつ令和の始まり的な空気感。ひとつの世代が鋭利に表現されてて、読んでるうちに自分が大学生だった時のこととかを色々思い出せました。全体的に岡崎京子氏っぽい雰囲気があるなと思ったら、後書きで読者だったと書かれていて合点がいきました。美術学校生だったとのことで、装丁も作者の方ご自身で手掛けてらっしゃいます。文字とデザイン、両方にこだわれるのって素敵ですね。


世界の終わり/始まり /倉阪鬼一郎

色鮮やかな悪夢といいますか、高熱の時に見る夢みたいな幻想的な雰囲気がある歌集でした。一首ごとに描写されている風景を想像してみると、綺麗なような怖いような終末がうっすら見えてきます。タイトル通り世界の破滅を歌ったものが多いのですが、だからこそたまに挟まれる日常の歌も引きたてられてます。「イデアの食卓」面白かったです。


memorabilia/drift /中島裕介

色んな角度からすんごい面白かったです。文学界の現代アート、読む21世紀美術館。頭の悪い表現で申し訳ないのですが、限りなく理系に近い文系の空気。自由過ぎるぐらい自由なのに無機質な雰囲気もあって、映画でいうなら『チャーリーとチョコレート工場』の感じです(個人の感想) 何回読んでも新しい発見があるのが嬉しい。カバーイラストの方、どこかでお見かけした気が……と思ったらテガミバチの方でした。


つむじ風、ここにあります/木下龍也

私が短歌をはじめる前からお名前だけは知ってました。歌集はいっつも通販で買うのですが、これだけは街のちょっと大きめの書店に売ってました。かなり著名な方なんですね。詩的なのにしっかり意図が伝わってくる、夢と現のバランスがすごい歌集でした。雑な言い方ですが、とにかくめちゃくちゃとっつきやすいし面白い。広く名が知れ渡っている理由がよく分かるスゴさ。歌集を読んだことない人にも気軽にお勧めできそうな安定感があります。


感電しかけた話/伊舎堂仁

タイトル通り、作者の方が感電しかけた経緯が載っているのですが、本当に危ないとこでしたね。我が身に置き換えてゾッとしました。そういった怖い実話もありつつ、収録作には私が求めているタイプの笑える短歌が多くて嬉しかったです。まあ私は小さいお~いお茶飲みますけど。私もだいぶ昔に『ヒメアノ~ル』観たので映画語りの内容が理解できてラッキーでした。平日の銭湯帰りにラーメン食べてるような独特の気だるさが良かったです。日常という枠の中で全力で気だるい。


ラインマーカーズ/穂村弘

かの有名な穂村弘氏の歌集。文庫の歌集って本当にありがたいです、かさばらないしお手頃だし、何より肩があんまり凝らない。シンジケートってなんか心ときめく響きですね。内容としては難解なように思えても二度目に読むとちょっと意味が分かってくるような噛みごたえの歌が多いです。バットマンが死ぬ歌で声出して笑いました。あと、有名なハロー電柱の歌も読めて嬉しかった。手紙魔まみの連作、男性がこのテンションとキャラを保ちながら書いてると思うとすごいな……しかもこの量を。


今回は以上です。ここまで読んでいただきありがとうございます。ぺこり。

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