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春夕焼

春眠のぬひぐるみほど痒くなる

ハンガーに飽きられてゐる余寒かな

茂吉忌の青い標識ばかり見て

ビニールが孕むきさらぎ八王子

歌い終へて春夕焼の胃が重い

風光るくるぶし片付けてゆくよ

春愁はポメラニアンの口の中

片戀や白梅なのか膚なのか

ネーブルを噛んで溢るる解像度

孕み鹿そこだけ真つ白い日溜り

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物を書く動機が、よくわからない。
文章らしきものを書く機会はあるが、湧き上がるような衝動に突き動かされて書く、といった経験はあまりない。

それなのに、俳句は作っている。
気分に大きく左右はされるが、ここ数年、作り続けている。幼い子どもがひたすら絵を描き、ブロックを弄ぶように。

もちろん褒められれば嬉しい。無視されると寂しい。貶されれば辛い。
でもそれだけなんだろうか。
何かを知りたい、触りたい欲求はあるけれど、はっきりしない。
今ひとつ自分でも動機の在り処がわからぬままに、恐らく明日も句を作る。

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