春夕焼
春眠のぬひぐるみほど痒くなる
ハンガーに飽きられてゐる余寒かな
茂吉忌の青い標識ばかり見て
ビニールが孕むきさらぎ八王子
歌い終へて春夕焼の胃が重い
風光るくるぶし片付けてゆくよ
春愁はポメラニアンの口の中
片戀や白梅なのか膚なのか
ネーブルを噛んで溢るる解像度
孕み鹿そこだけ真つ白い日溜り
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
物を書く動機が、よくわからない。
文章らしきものを書く機会はあるが、湧き上がるような衝動に突き動かされて書く、といった経験はあまりない。
それなのに、俳句は作っている。
気分に大きく左右はされるが、ここ数年、作り続けている。幼い子どもがひたすら絵を描き、ブロックを弄ぶように。
もちろん褒められれば嬉しい。無視されると寂しい。貶されれば辛い。
でもそれだけなんだろうか。
何かを知りたい、触りたい欲求はあるけれど、はっきりしない。
今ひとつ自分でも動機の在り処がわからぬままに、恐らく明日も句を作る。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?