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手鏡日録:2024年7月28日

ミズ、と云う山菜を教わった。
標準和名はウワバミソウ(蟒蛇草)と云うらしい。
じめじめ湿ったところに生えるからミズ。そんな場所は蛇も好むので蟒蛇草。
耳に心地良い秋田弁で、そう教えてもらった。
一見、細い蕗のような茎だが、葉のかたちが異なる。端を折って筋を剥く。下拵えはこれでおしまい。うっすら透けた淡い緑色。蕗と違ってアクはなく、じんわり粘り気がある。シャキシャキと程よい歯応え。クセがないのでそのまま齧っても瑞々しく美味い。
でもこの筋を取るのが面倒で、昔はよく家にいる爺さん婆さんにやらせたものだ。
そう笑いながら語る表情は、かつてその光景を見た少年の頃そのままだった。
おつけの実にしても良し。お浸しでも煮物にしても、塩を振って炒めるだけでも十分おかずになる。さらに、叩いて粘り気を出して醤油をかければ、見た目は落ちるがまたとない酒肴に。
万能の山菜は、山で遭難した際の大切な命綱にもなったそうだ。
今回の炒めたミズは、爽やかな食感はそのままに、やわらかな肉質と鮮やかさを加えて、ところどころ翡翠の輝きを放っている。くぐもったあかるさ。
幾重にも山に囲まれたこの地で、肩を寄せあってきたのかもしれない。人も、ミズも。

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