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推しの唐揚げ

私の住む街にはいつも賑わっている商店街があり、たまに用があって行くと、飲食店がこぞって店先でテイクアウトの弁当を売っている。その様子はまるで花火大会の屋台のような賑わいだ。

この中に、私のお気に入りのお店がある。唐揚げ専門店で、手堅い味を揃え、いつも揚げたてを用意してくれてとても美味しい。ところが、最近そこに対抗馬が現れた。唐揚げ弁当を販売し、安くて、揚げ物以外のメニューもある。ライバルの出現に、私は「これで潰れちゃったらやだなぁ」と思っていた。

すぐに人気となったライバル店。明るい呼び込みの声が商店街に響き渡り、会計待ちの列ができたりしている。かたや前からある唐揚げ専門店は呼び込みなどは一切せず、黙々と揚げたてを売っている。華やか賑やか若手アイドル系のライバル店と、芝居だけを追求するシブい俳優さんのような専門店。まさしく対照的だ。私は馴染みの専門店に潰れて欲しくないので、アイドル店には行かないようにしていた。

ある日、家で唐揚げを食べていた夫が、「あの新しいとこの唐揚げはどんな味なの?」と聞いてきた。さらに、夫は私が専門店を強く推しているのでずっと言えなかったが、実は一度食べ比べてみたいと言う。推し以外を試す気はなかったが、値段が安いからと言って「味も大したことないだろ」と決めつけるのもフェアではない。我が家は何事にもフェアであることをモットーとしている。なので、両方買って食べてみることにした。不本意だけど。

結論から言うと、この2つの店は商品に求めることが全然違った。専門店は揚げたてを出すためにしばらく待たされるが、余計なことはせずに唐揚げの可能性を追求しているのに対し、アイドル店はすぐに品物が出てきて、お財布が厳しい時でも買えるような手ごろな値段でいろんな味を提供している。目指すところが全然違うのだから、比べてもしょうがない。この対抗戦はキックボクサーと柔道家に試合をさせるようなものだろう。多分。違ってたらごめんなさい。

食べ比べを希望した夫は専門店が良かったらしい。息子はアイドル店の新しい味も嬉しそうに食べていた。

私?そりゃ推しが一番ですよ。
まだ食べてないけど。

:D

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