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ずったずたに落ちていった私が、これから掬いあげたいこと

本を出したい、という夢がある。

小学生の頃から読書がすきで、図書館に通う理由はもっぱら「ズッコケ三人組の続きを読みたいから」だった。ハチベエ、モーちゃん、ハカセの三人組がしでかしてくれる小さな冒険を目で追いながら、自然と身体で読書の楽しさを吸収していた気がする。ほんとうに、那須正幹先生はすごい。

物語の力をぐんぐんと吸い取りながら、中学生、高校生になり。いい加減に児童文学からは卒業した私が、ふたたび夢中になった作家さんのひとりに、辻村深月さんがいる。


辻村深月さんのデビュー作「冷たい校舎の時は止まる」は衝撃だった。

強く覚えているシーンがひとつあって。それは、とある登場人物の女の子が、毎月やってくる生理の経血についてクラスメイトの男の子に話題をなげかける場面。

「女子は毎月リアルな血液を見ているから、そこまで血そのものに怯えないものよ」……と、そういった文脈だったとおもう。

中学生か高校生だった頃の私は、この件を読んでそれはそれはのけぞった。表に出してはいけない(と思い込んでいた)女性の生理について、こうも当たり前に物語に入れ込んでいる作家さんがいる!と。それ以来、辻村深月という作家に惚れ込んで他の作品も貪るように読んだ。そして、物語の持つ魅力や吸引力みたいなものにも、引きつけられるようになったのだ。

物語で、人を変えたい。
物語で、人の心に介入したい。

おこがましいことかもしれないけれど、物語の、文章の力を使えば、自分ではない人の目もハッと見開かすことができる。

私自身、そういった刺激や快楽の虜になってしまい、取り憑かれてしまったことによって、傲慢にも「文章で人を救いたい」「何かのきっかけになりたい」と渇望するようになったのだ。


本を出したい、という夢を持つに至った経緯は、大体こういったところなのだけれど。ここで、ひとつ疑問がわく。というより、疑問に思わざるを得なくなった。

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