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運動神経悪い芸人が実はまったく笑えない理由

『アメトーーク!』の人気コーナー、運動神経悪い芸人が、実はまったく笑えない理由について、最近ずっと考えていたのです。

ご覧になったこと、ありますか?あのコーナー。わいわいと繰り広げられる画面上すべてのことについて、心から面白いとおもって笑っている方がこの文章を読んでいたとしたならば、真正面から水を差すようで大変たいへん申し訳ないのですが、やっぱり……私は、心からは笑えないのですよね。

そこのところ、つらつらと考えてみた覚書です。

まず、『アメトーーク!』の運動神経悪い芸人とは、運動神経が悪い芸人さんを集めて、ダンスやスポーツをしてもらい、その動きの滑稽さを笑うという趣旨のもと構成されたコーナーです。

あえて、「その動きの滑稽さを笑うという趣旨のもと構成された」と、悪意を込めて書きました。

このコーナーがつくられた経緯・背景には、もしかしたら、部外者の私には想定できないような深い意図が込められているのかもしれません。

今のところ、私にはまったく想像もつきませんが、あのコーナーそのものが誰かの心を救っているのかもしれない。そんな作用が、化学反応が地球上にそっと存在しているかもしれない。

そう思うと、無下に否定も批判もできないかな……、とも思うのです。

くわえて、番組があってコーナーがあるという以上、出演している芸人さんや関わっている多くのスタッフさんがいますよね。

誰かを傷つけ、貶めてやろうという意図100%で制作されているはずがありませんから、私のこの文章は、まるまるその方たちをまとめて批判しているのと同じことになってしまうでしょう。

それでも、あのコーナーの面白さが、「動きの滑稽さを笑う」という点に置かれているのは事実です。

なぜ、運動神経悪い芸人で純粋に笑えないのか。

私自身、運動神経が悪いと自負していて、これまで多くのトラウマを植え付けられてきたからです。

(自ら自分のトラウマをひけらかす論調は好ましくないと思う派ですが、あえてやっています)

学生時代、体育の授業中に創作ダンスを披露する時間などがあれば、冗談でも大げさでもなんでもなく、この世のすべてと神さまを呪いました。

目に見えるままの動きを自分の身体で再現などできず、てんでバラバラなダンスを踊ってしまう。

当然笑いものにされたし、笑われても仕方のない姿だと自覚もしていました。ダンスだけではなく、他の競技についても右に同じです。

ああいう瞬間、笑わせようとしていないのに誰かに笑われてしまう、そんな種類の体験は、思った以上に心を傷つけるし後々まで尾を引くものなんですよね。笑われた側にしかわからない傷というものがある。笑った側は「ああ、面白かった」で済むので名残なんてないのでしょうが、笑われた側は、何年経っても引きずります。

あなたにも、同じような経験があるかもしれませんね。

だからこそ、運動神経悪い芸人を見ていると、他人事だとはとてもとても思えないし、これを見て育つこれからの若い人たちが、日常生活にもこの種の笑いを落とし込んでひとつの”ネタ”にしてしまうのだろうなと思うと、なんともむなしい心持ちがします。

運動神経が悪い人の、自分ではなんともしがたい変な動き(少なくとも、周りにはそう見えてしまう動き)を笑って、本当に、心の底から面白いのでしょうか?

私はとくに、お笑いに詳しいわけでも、好きで毎日バラエティを見ているというわけでもありませんが、そろそろ、自分がどんなことに対して面白いと感じるのか、そして、その笑いは倫理に反したものではないのだろうか、笑うことによって自分以外の誰かを傷つけてはいないのだろうかと、省みる姿勢をとったほうがいいのではないか、と感じてなりません。

本当に、面白いですか?

人の動きを笑うことが、本質的な娯楽ですか?

かたっくるしく書いてしまいましたが、『笑う』という行為ひとつとっても、自分以外の誰かを傷つけることに繋がるかもしれない、その可能性について、多少めんどうでも時間をかけて丁寧に精査してみる姿勢を忘れたくないよね、という私なりの提案でした。

運動神経悪い芸人、大好きな人がこの文章を読んでいたとしたら、しつこいようですけれどごめんなさい。

最後に、『アメトーーク!』はとてもすきです。よく見ています。BiSH芸人特集とか最高でした。単純にシンプルに、◯◯がたまらなく好きだという芸人さんを集めて濃いトークをするコーナーが増えてくれればいいと願っています。

人の心を傷つけることなく、人格を貶めることなく、かつ面白いものは面白いとカラカラ笑える番組ないしコンテンツが、世界に溢れて幸福に包まれますように。

この先、有料部分では、年末年始の日記も含め、2019年に読んでよかった本の話をすこししています。興味を持っていただける方のみ、先へお進みください。

さっそくですが、2019年に読んでよかった本は、以下の2冊です。

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