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本当の欲望に気づいた、電車の片隅

東京に来てから、電車に乗ることが多くなった。地元・北海道では車移動が多かったので、電車や地下鉄に乗れば大抵の行きたいところに行けるって状態は、とっても便利で贅沢に感じてしまう。

電車には、ドラマがある。車体や車輪の立てる音に心惹かれる人もいるだろうけれど、私がもっぱら興味深いのは「電車内にいる人たちの会話」だ。このご時世、車内での会話はなるべく遠慮しなければならない。だけど私は、もっと話して、もっと、もっと! と求めたくなってしまう。

電車内での人々の会話は、カフェでのそれらとはまた違った趣がある。目的地までの時間制限があるからか、はたまた移動を共にする同士の関係性に千差万別あるからか、聞いていてグッとくる会話が多い。

先日耳にした会話は、実に痛快だった。おそらく会社の先輩・後輩といった間柄であろう男女。ソーシャルディスタンスを意識し彼らとはひとり分のスペースを空けて座っていたのだが、その痛快な会話は気持ちよく届いた。

何が痛快かって、後輩(女性)から先輩(男性)への対応が、なんとも筋がとおっていて気持ちがいいのだ。

前後の文脈を知らないため何とも言えないのだが、仕事のことで互いに譲れない部分を隠し持っていたのだろう。乗車し席に座るや否や、ふたりは半ば喧嘩腰で会話をスタートさせた。

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