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「正しい欲」って、なんだろう

朝井リョウ「正欲」を読んだ。

作家生活10周年を記念して刊行された長編小説。久々にハードカバーの単行本を買った。この表紙、目に入った瞬間に「買わねば」と思ったんです……。「正」しい「欲」と書いて、正欲。ページをひらく前から固定概念がひっくり返される予感がして、そして、それはそのとおりだった。



複数人の視点から語られる物語が、ときに重なり合い、離れて、また交差する。土台に敷かれているのは、とある夏の日、3人の大人が児童を交え公園で水遊びをしていたのをきっかけに、児童ポルノ所持の疑惑をかけられ逮捕された事件。

3人の大人が目的としていたのは、児童の裸ではなく、「水」だった。蛇口から水が噴き出す様、地面に飛び散り水滴が広がる様、水面に波紋が広がる様を見ては「性的」に興奮する、いわば「特殊性癖」の持ち主だった。


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1,783字
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