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ドキドキでしにそうになる。


ずっと欲しかったシャンプーを買った。
ずっと読みたかった本を買った。

こういう瞬間、私は得体の知れない心臓のドキドキに襲われて、大げさじゃなくしにそうになる。

普段あまり高い買い物をしないからか、女子力などという言葉とは無縁な生活を送っているからか、たまに背伸びをしたシャンプーやパックや化粧品を買ったりすると、とてつもなく心臓がドキドキドキドキして落ち着かなくなる。始終そわそわしてしまう。

ずっと読みたかった本というのもそうで、読みたいと思えば思うほど、手にするまでの時間をできるだけ伸ばしたいと思ってしまう特殊な性分だ。読んでしまったらもうこのトキメキは味わえないという喪失感を先取りしてしまうからか、絶対に面白いと確信できる本ほど距離を置いてしまう。そして、私にしかわからないタイミングというものが訪れたときに買うのだ。その瞬間のドキドキを表す言葉がまだ見つけられずにいる。

そして、不思議なことにこのドキドキは、触れてからしばらく経っても持続している。憧れのシャンプー、憧れの本、いざ触れてしまえばいざ読んでしまえばその魅力や価値に慣れてしまいそうなものなのに、緊張は霧散しない。

このドキドキが心地よくもあれば、身体そのものに負担がかかりそうな気がしてしんどいときもある。強すぎるドキドキを経由したくないからか、あえて新しいものを目にしたり情報を摂取したりしないように工夫する時期もあったりする。面倒な人間である。

今日という日は、憧れのシャンプーと憧れの本が一気にきてしまったので、ドキドキが2倍だ。これは紛れもなくトキメキだ。アラサーになってもこれほどまでにまるで少女みたいにドキドキできるのだから、得な性分に生まれてよかった。私のような者がこんな素敵なシャンプーを使っていいのか。こんな素晴らしい本に目を通してもいいのか。浮き立つようなドキドキがいつまでも体内に渦巻いて、この落ち着かなさから解放されるためには早く触れてしまったほうがいいのだけれど、それさえも許されないような気がしてくるから不思議だ。

つらつら書いてとにかく何が言いたかったかというと私は、美しい髪になってみたくて高いシャンプーを買ってみたのだという話。もしも3月の私の髪の毛がこれまでと同じ、変わらない艶のなさだったら、シャンプーが合わなかったのだなと思ってください。そしてもし、3月の私が嬉しそうな顔をしていたら、新しいシャンプーが気に入ったのだと思ってください。



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