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[北白川/暮らし]やさしい病院をはしごする

北白川別当町の交差点にある「N耳鼻科」の先生はすんごいおしゃべり。でも、とにかくやさしい。元気もらえる。おかん、という感じ。

鼻炎を2ヶ月ほど放置し続けてようやくいったところ
「あれ、えらい長くほっといたな!仕事忙しかったんか?休みなかったんか?」と矢継ぎ早に関西弁を繰り出され、次の瞬間につけていたマスクをサッとずらされ、確認する間もなく鼻になにか細くて長い棒のようなものを電光石火で差し入れられる。あっと思うまもなく、ぐっと喉まで。

痛くはないが、違和感と反射でおもわず目からつーっと涙が出る。
すると先生はすかさずポンポンとわたしの肩をさすりながら
「まあ蓄膿症の一種やね。薬飲んで様子みよか。2週間がんばれるか?」と指でピースを作りながらやさしい顔つきでにこっとほほえむ。鼻に棒を突然入れられたことも忘れて、とにかく診断が終わったことにホッとする。

看護師さんに導かれ「これ入れてね。」とホースのようなものを渡される。ピースのように二又に分かれたホースを前にすこしためらう、

それは「ネブライザー(名前調べた)」という薬剤を超音波で細かい霧状にして放出する機器。おとなしくホースを二つの鼻の空洞に自ら差し入れていると先生とつぎの患者氏との会話が筒抜けにきこえてくる。

「春からどうすんの?」(←突然)
『研究室に残るんです』
「ほな、お給料もらえんの?」
『いや、給料はどうなんでしょう…。』
「研究生やともらえんでしょう、
うちの子どもが研究生と結婚するゆうたらいややなぁ」
『ですよねー』
「お金どうすんの?」
『なにかやりながらですかねぇ。』

ピンポンのようなスピードでかわされる質問と回答。単刀直入すぎる質問に怖気付くことなく素直に個人情報を開陳してゆく学生さん風の男子。2人は治療を通じてそんな深い話をするほどの間柄になってるのか…? そんな会話を尻目に、わたしは鼻にホースを入れて目を閉じる。

霧のような薬剤が鼻や喉に沁み渡っていく。修復されているのだろうか。よくないものが洗い流され、鼻のつまりが改善されることをイメージして、薬剤がこぼれないよう無我夢中で呼吸をくりかえす。

待合に戻りお会計を済ませると、今度は向かいの処方箋薬局へ。月曜は混んでて年配の方でいっぱい。なかなか呼ばれない。15分くらい待った後、ようやく薬をもらって薬局をでると、隣の「洋服の病院」という店が目に入る。

ここは洋服のお直し屋さんで京都市内に8店舗もあるらしい。修繕だけでなく、預かった洋服を古着として販売もしているようだ。

アルマーニのジャケットが3000円くらい。肩パッドがごついバブリーなピンクのジャケット、内側がミンクの毛皮になってるトレンチコート、クリムトの絵画のような斬新なデザインのダウンなど。かなりユニークで年代を感じる個性的な洋服たちが静かに並べられていた。

フリンジが施されたツイード風のスカートとフェイラー(今流行ってる)のポーチを購入してみた。

レジの奥にはおおきな作業台があり、ちょうどお直し中の洋服が置かれてるのがみえた。
カタカタうごくミシンの音、アイロンのスチームの音を聞きながら、試着をくり返す。なぜかとても癒されていた。

ふだんパンツの裾上げすら不精してしまっているがら気に入った洋服をより長く着るために身体に合わせて直したり、調節したりするのって素敵なことだな。新しく買うばかりではなく。

この世界にはケアが足りないのかもしれない。ひとにも自分自身にも。ふとそんなことを思った。

人間は脳みそですべてをコントロールしているわけではなく、夥しい数の菌や微生物たちで構成されているのだから、身体はそれらを束ねるための容れ物だ。さらにその入れ物をくるむための洋服はやさしさや愛がこもっててほしい。
ほら、昭和の家の黒電話はなぜか洋服を着せてもらってたじゃないか。
あんなふうに電話をも包もう、包んであげようとする心はどこから来るのだろう。


帰り道、白川通を歩いたら冷気が鼻の奥にしみる。さっきまで鼻に入れてたネブライザーの霧の感触と独特なかおりが一瞬思い返され、そしてすぐに消えた。

◎登場した場所
ながた耳鼻咽喉科
クオール薬局 北白川店
洋服の病院 白川店

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🔍北白川文化研究員no.2 綿野かおり
隣の皮膚科にもお世話になってる大学職員
北白川歴5年

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▼公式サイトCONTEMPORARY COCOON ROOM702

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