【スルメイカでつくる酒の肴】 黒作り/イカスミと肝の塩辛ペースト/肝の塩辛
富山県の郷土料理、イカスミをつかった塩辛、イカの黒作りのつくりかたです。
保存法や黒作りをつくる工程中にできる塩辛2点、おすすめの食べ方もご紹介します。
材料はスルメイカ、塩、酒の3つだけ。
できあがりまで時間はかかりますが作業の工程はいたってシンプル。ぜひトライしてください。
<塩辛を仕込む時期>
スルメイカの旬は、生息する地域や港によって変わりますが、塩辛をつくるならば真冬の肝が丸々と太ったものがベスト。
今回のイカは3月末に富山湾、氷見の鮮魚店から送ってもらったもの。
3月は春先のイメージですが富山湾はまだ海水温が低いためか、今年(2024年時点)は立派な肝が入っていました。
<スルメイカの選び方>
仕込みに使ったイカはこちら。
水揚げした当日に氷見から発送してもらいました。次の日に到着したので2日目のもの。
朝獲れの最高に鮮度の良いかを使えれば、それにこした事はありませんが、海の近くに住んでいない限りそこまで新鮮なものを手に入れるのはまず無理です。
購入する際は刺身用を選びます。肝が溶けていない状態で臭みが出ていなければOK。
もしつくる日が決まっていれば前日にスーパーや鮮魚店に入荷があるか確認したり、顔馴染みのお店であればお願いして仕入れてもらえばより良いものが手に入ります。
*注 魚市場は地域により休場日が変わります。休場日は鮮魚店に入荷がありません。自分が住んでいる地域の休場日を知っておくのも新鮮なイカを手に入れるコツのひとつかもしれません。
注意:アニサキス対策として-20°C以下の冷凍庫で24時間冷凍するよう保健所から推奨されています。
家庭の冷凍庫はー18℃のものがほとんどです。
その場合は“冷凍庫が−18度以上だった時の対策“をお読みください。
<今回使った材料>
スルメイカ 5杯 (下処理済みのもの)
粗塩 塩分が95%のものを使用
日本酒 大さじ3〜4
<下準備>
買ってきたイカは、1〜2%の塩水でさっと洗い臭みを取り下処理しておきます。
<つくりかた>
イカの身を干す
胴の身は開いて水分をふきとり、平ザルにのせて冷蔵庫の風が通る場所で、ひと晩干します。
天日なら干し網にのせて2〜3時間。
つくっている地域やメーカーによって干す、干さないは違うようですが、こうすることで旨みが凝縮して歯ごたえもよくなるそう。
干したイカは写真のように切分けます。
これをにしていきます。
この方向に(繊維にそって)切る方が歯ごたえがでます。
余談ですがお刺身のにするときは繊維を断ち切るよう縦に切るのが定番。
これを保存容器に入れて肝が仕上がるまで冷蔵庫に入れておきます。
記事の関係上この作業を最初に書いていますが、肝の塩漬け中にやると効率よく作業を進められます。
スミ袋をはずす
肝からスミ袋の端をつまんではずし、やぶかないよう気をつけながらソロリとひっぱってとりのぞき、塩水で軽く洗います。
黒作りの黒い色はイカスミ。なのでスミが出て黒く汚れているイカを買ってしまわぬようご注意を。
イカスミと酒大さじ2を一緒に鍋に入れ、ヘラで袋をつぶしてスミを出します。
スミ袋をつぶしながら沸騰するまで火にかけます。
お酒と合わせるのは生臭みをとるため。沸騰させた時にアルコールが揮発して
それと一緒に臭みも出ていくのです。
ザルや茶こしなどでこしてから冷ましておきます。
肝を塩漬けにする
バットに塩を5mmほどの厚さにしきつめ、その上に水気をふいた肝を並べたら、さらに塩をかぶせます。
量は厳密でなくてかまいません。全体にかぶせられればOK。
ラップをしてバットを傾けた状態のまま冷蔵庫に半日からひと晩おきます。
半日からひと晩と時間に幅があるのは肝の大きさによって水分の抜けるが変わってくるから。
漬ける時間は長くても、塩分は一定量以上入っていかないので時間の加減がわからない場合は一晩置いておけば間違いありません。
塩を洗い流して水気を拭いた状態で表面の膜に細かいシワができ、指で押して弾力がなければOK。
まだブヨブヨしているなあという場合は全体に塩をまぶしてさらに時間を置きます。
<肝の塩辛>
肝にイカスミを合わせる
出来上がった肝の塩辛をザルに入れゴムベラでこします。
イカスミを混ぜます。
<イカスミ入り肝ペースト>
イカとスミ入りの肝を合わせる
煮沸した(もしくはアルコールスプレー)した保存容器にイカとスミ入りの肝を合わせて混ぜ、フタをして冷蔵庫に入れます。
今回イカスミ入りの肝は4杯分、胴体の部分は5杯分使いました。
1日置いたら酒少々を加えて全体を混ぜます。
ちょっと奮発して吟醸酒を使えば上品な香りの仕上がりに。
これを3〜4日繰り返したら冷凍庫で24時間以上冷凍します。
注*毎日かき混ぜないと腐敗の原因になるのでご注意を
食べる時に冷蔵庫で自然解凍すれば出来上がりです。
保存と容器
保存はイカスミ入りの肝同様にダブルスクリュータイプのフタの保存びんをおすすめします。なるべくびんの中に空間がないよう詰めると中で霜がつきにくくなります。(9割程度。あまり詰めすぎると膨張してびんが破損します。)
大きいびんで1度に食べきれず何度もフタの開け閉めをくり返さないよう2〜3回で食べ切れる量が入る小さめのびんに分けて入れておくことも、おいしく食べるコツです。
筆者はこのシリーズをサイズ違いでそろえています。
こうしておけば冷凍庫で1年置いても大丈夫。
*注 家庭で食べる場合の保存期間です。
といいつつ、冷凍庫でびんは幅をとるため、普段は保存用バックとシーラーも併用しています。
びんと遜色ない保存力。びんよりも空気にふれる部分も少なく、保存に場所も取りません。
シーラーは空気をぬく機能はついていませんが、ある程度自分で空気をぬくことはできますし、何よりも使いたい時にさっと取り出せて便利。
冷凍庫が−18度以上だった時の対策
残念ながら−20°C以下の冷凍庫がない場合は、完成したイカスミ入りの肝ペーストを鍋に入れて温度が70度になるよう混ぜながら弱火にかけたものを使います。
(アニサキスは70度に加熱すれば死滅します。)
ただし、この時温度が上がりすぎるとボロボロと固まってきてしまうのでご注意ください。
イカの身と肝を合わせてからの発酵はおそらくわずかですが、肝ペーストになるまでに発酵は進んでおいしくなっていますし、イカ自体の消化酵素で旨みは増すので十分おいしく出来上がります。
黒作りの食べ方
赤作りと同じように自由に食べてください。
筆者のいちばんのおすすめはそのまま塩辛として。
地元射水の居酒屋さんではクリームチーズに和えて出すところもあるそうです。
パスタなど料理に使う時は“イカスミ用肝ペースト“とイカの身を別々に使った方が勝手が良いと思います。
黒作りのつくりかた、いかがだったでしょうか。
少し手間はかかりますが、丸々太った新鮮なスルメイカを見つけたらひトライしてみてください。