眠くたってこわくない

ジェイくんは、眠るのがとても怖いのでした。

どんなに眠くても、どんなにあくびが出ても、
眠くなると、彼は怖くなるのでした。

そういうとき、ママは優しく手を握ってくれます。
そうすると、ジェイくんはママの手の温かさが
まるで体中を暖めてくれるみたいと思いました
その後、ぐっすり眠ることができたのでした。

ある日のこと、寝ようとして怖くてたまらないジェイくんに
ジェイくんにママは言いました。

ママは言いました。「夢の中だと、誰とでも遊べるよ」
ジェイくんは、ママに言われたことが少し不思議に思いました。

夢は自分でコントロールできない、
それに、寝るのが怖いのに、夢はみられない。

ジェイくんは、そう思ってママに言ったのでした。

ママは言いました。
寝る前に、みたい夢のことをいっぱい考えなきゃ。
それで、夢の中でしたいことを想像しながら寝ないと
夢だってみられないじゃない。

ジェイくんはママと一緒に試してみました。

ジェイくんの枕元にはペンギンの人形がいっぱい並んでいます。
その中のひとつをとって、ママはジェイくんに言いました。
夢の中で、このペンギンと遊んでみよう!

ジェイくんはペンギンが大好きでした。
いつも図鑑や動画でペンギンのことをみていたのでした。

ペンギンと一緒に遊べたら、どんなに楽しいだろう!

ペンギンの夢をみるために、
ママと一緒にペンギンのことをいっぱい考えたのでした。

ペンギンはゲームは好きかな?
駆けっこはするのかな?
一緒に泳げるかな?

そうしている間に、少しずつ眠くなってきたのですが、
やっぱり目をつぶるのは怖いのでした。

ママはジェイくんの手を握って言うのでした。

ペンギンと一緒に遊べるよ。
一緒にお散歩もできるし、泳げるかもしれないよ。

ママの手をぎゅっと握って、
ペンギンのことを考えているうちに、
ママの手の温かさが気持ちよくなってきて、
そのまま、彼は眠ってしまいました。

ジェイは感じました。体が少し浮いたような、
ゆっくりと沈んだような、
不思議な感覚がしました。


ペンギンがこっちをみています。

やあ。

ジェイくんは驚きました。
いつも図鑑やネットでみているペンギンがすぐそばにいるのです。
それに、話しかけてきてくれました。

なにして遊ぶ?
今日は天気がいいから、ひなたぼっこしながら
おいしい魚の話をするのが楽しいんじゃないかと思うんだ。

そういえば、氷の上にいるのにぜんぜん寒くありません。
それどころか、ぬくぬくと気持ちいいのでした。

ジェイくんは質問します、お魚ってどんな種類のを食べてるの?

ジェイくんは聞きます。
ペンギンは少し遠くを見たかと思うと、
くちばしを大きくあけて、両手をパタパタとして、
うれしそうに話し始めたのでした。

お魚もいいけど、クラゲもおいしいなあ!

クラゲもおいしいよ。
噛んだ瞬間に、ぐにゃっとした感触があるんだけど、
噛むと、プチって切れるんだ。
それで、もう一口ってやっていくうちに
大きなクラゲでもあっという間になくなっちゃうんだ!

お魚はおいしいけど、追いかけなきゃいけないしね。
僕より泳ぐのは上手だから、なかなか大変なんだ。

ペンギンは遠くを見つめてうっとりとしています。
ペンギンはジェイくんを見ると、質問してきました。

君はなにが好きなの?

ジェイくんは、少し考えました。
それで、ペンギンにこう言ったのでした。

ゼリーが好きだよ!
甘くておいしいんだ!

ペンギンは不思議そうな顔でジェイくんをみています。

ゼリー?
それは何?

ペンギンはゼリーを知らないみたいでした。
そこで、ジェイくんはゼリーのおいしさをペンギンに教えてあげました。


ゼリーというのは、甘くて、プルプルしていて、柔らかくて、おいしいんだ!

それを聞いてペンギンは、目をキラキラさせました。

それじゃ、クラゲと同じだね!
クラゲも柔らかくておいしいし、プルプルしているし、ちょっと甘いんだ!

ジェイくんとペンギンは、仲良しになりました。

それからは、日光浴をしながら、
彼らはたくさん話をしました。

上手に泳ぐ方法、
氷の上でできる遊び、
それに、おいしいクラゲがいるところなんてのも
教わりました。

たくさん、たくさん話をしていると、
遠くからお母さんの声が聞こえてきました。

ママがきたんだと思って、そっちの方を向きました。


そうすると、風景が変わって、寝ていたベッドの上になったのでした。

まだペンギンはいるのかと思って、みまわしてみました。
でも、ペンギンのぬいぐるみがあるだけです。

ママは朝になって起こしにきてくれたのでした。

ママが言うことは本当でした。

それからというもの、ジェイくんは寝る前に
どんな夢をみようかとママと話をするようになりました。

機関車に乗りたい。
自転車で海の上を走ってみるんだ!
私は小さくなって、カブトムシと力比べをしてみる!

そうやって、どんな夢を見たいかママと決めました。
そして、ママといっぱいそのことについてお話をするのでした。

本をみたり、動画をみたり、
ママと一緒になって考えているのでした。
そうやって目をつぶって想像していると、
だんだんと眠くなってきて、
そのまま寝ることができるのでした。

ジェイくんはママと一緒に
自由に夢をみられるようになると、
いろいろな遊びを試してみました。

アイスクリームをプールいっぱいに食べてみたり、
イルカと一緒に泳いだときは、
息継ぎもしないでずーっと泳いでいられたのでした。

ジェイくんは、眠るのがだんだんと怖くなくなってきました。

それでも、寝るときにはママに手をつないでもらわないと、寝るのが少し怖いのでした。


もう、すっかり寒くなった頃です。

ジェイくんは大きな病気にかかってしまいました。
毎日高い熱が出て、体が痛んだのでした。
ゴハンも食べられないし、
ゼリーを食べてもおいしくありません。

でも、ジェイくんはつらいと思わなかったのでした。
夢の中に行けば、好きなことができます。
それに、好きな食べ物も食べられます。
ゼリーだっていくらでも食べられるのでした。

ジェイくんは目をさましている間、ママとたくさん話をしました。
どんな夢をみようか、夢でなにをしようか。

ジェイくんの発熱は長く続きました。
でも、つらくありません。
ママがついています。
それに、ママと一緒に考えた夢で遊べます。

ジェイくんは、まだクリスマスじゃないけどサンタさんに会いたいと思いました。


サンタさんに会って、相談したいことがありました。

いつも一緒にいてくれるママに、
どんなプレゼントをあげればいいのか
サンタさんに教えてもらおうと思っていたのでした。

サンタさんに早く会いたいのだけれども、
ママにあげるプレゼントの相談なので、
ママには会いたい理由が言えませんでした。

だから、ジェイくんはママに、
サンタさんに早く会うんだ!
としか言えませんでした。


ママはジェイくんのために、サンタの夢をみるお手伝いをしました。


ジェイくんの枕元には、
ペンギンのぬいぐるみが並んでいます。
そのみんなに、おそろいのクリスマスの帽子と、
緑と赤のマフラーを作ってくれたのでした。

ジェイくんとママはサンタについて話をしたのでした。


サンタさんの乗っているそりの乗り心地。
サンタさんの赤い服のさわり心地。
サンタさんのしゃべり方。

ジェイくんはママと、サンタさんについて話をしたのでした。

その日も、ジェイくんの体調はよくありませんでした。
でも、夢の中でいっぱい遊べるから、
苦いお薬も、体の痛みも平気でした。

それに、今日はサンタさんについていっぱい話したから、
きっとサンタさんに会えそうです。

調子が悪くて長い時間起きているのがつらいのですが、
それでも、ジェイくんにとっては平気なのでした。

だって、早く寝ればサンタさんに早く会えるのですから。

眠くなるまでの少しの間、ママがサンタさんの話をしてくれました。
枕の周りも、ジェイくんの頭の中もサンタさんでいっぱいでした。

サンタさんにあったら、話を聞いてほしいこと、
それができたら、
トナカイをなでて、少しだけ角にさわらせてほしいこと、
ママの話を聞きながら、ジェイくんはそんなことを考えていたのでした。

体の調子が悪くて、瞼が重いけれども、
眠るというのには、少し違う感じでした。
それでも、ママに手を握ってもらって、
手のひらから体中が暖かく気持ちよくなっていったのでした。

そのまま、少しだけふわっとした感じがありました。

ふと、目を開くと、真っ暗の空と
その間にたくさんのキラキラのある
星と月がはっきり見えたのでした。
フカフカのクッションの上で横になっていたと思っていたのですが、
よく見てみると違います。

赤い服を着て、トナカイの手綱を引っ張る姿。
一生懸命にそりを引っ張るトナカイ。
後ろを見てみると、たくさんのプレゼントの山がありました。

ジェイくんは、どきどきしています。

もしかして。
もしかしたら?
ひょっとすると!

どきどきがもっと強くなりました。

ジェイくんは起きあがると、
手綱を引っ張るその姿をよく見ようと、
隣に座ってみたのでした。

白い髭が見えました。

やっぱりだ!
会えたんだ!

ジェイくんのどきどきは止まりません。

その姿をじっと見つめます。
そうすると、ジェイくんの頭を優しくなでてくれました。

大きい手でなでてくれて、
まるで、ジェイくんの頭がすっぽり包まれるみたいでした。

ジェイくんはサンタさんに会えました。
飛び上がりたくなるぐらいにうれしくて、
どうしていいのかわからないぐらいにどきどきしています。

ジェイくんは喜んでばかりはいられませんでした。
なぜなら、サンタさんのお手伝いをしなければならないからです。

サンタさんからお願いされたのではありませんが、
ジェイくんは知っていました。

そりに一緒に乗っているんだから、
いっぱいお手伝いしなきゃ!

ジェイくんのお仕事は、
プレゼントをサンタさんに渡していくことでした。

そりの後ろには、ジェイくんの背丈以上のプレゼントの山がありました。
それを、次から次へとサンタさんに渡していくのがお仕事でした。

たくさんのプレゼントを一つひとつサンタさんに渡していくのは、
大変なお仕事でした。

大きいの、小さいの。
軽いの、重いの。

そのぜんぶを丁寧に、包みを破かないように渡さなければなりませんでした。
だって、プレゼントですから。
もらったときに包みが破れていたり、
リボンがほどけたりしていたら、がっかりしてしまいます。

ジェイくんは、とても重要なお仕事を
とっても丁寧にお手伝いをしているのでした。

サンタさんのそりは、世界中をかけていきます。

雪のあるところやないところ、
海のそばや山の上。

どこでも、サンタさんのそりで配っていったのでした。

世界中をぐるっと巡って、
最後はジェイくんの住む街です。
そのころになると、
そりにいっぱいに乗っかっていたプレゼントも、
だいぶ少なくなってきました。

それまで、サンタさんはずーっとにこにこしながら
プレゼントを配っていたのでした。

プレゼントの残りが少なくなってくると、
サンタさんの忙しさも落ち着いてきました。

いまなら、話しかけられるかも。

ジェイくんは、
サンタさんをじゃましないように
話しかけてみました。

ねえ、サンタさん。
聞いてほしいことがあるんだ。
ママにプレゼントをあげたいんだけど、
なにをあげたら喜んでくれるかな?

サンタさんは、ジェイくんの方を向いて、
少しだけまじめな顔をしました。

そして、サンタさんはジェイくんの頭を
思いっ切りなでてくれたのでした。

そして、ジェイくんをおもいっきりハグしてくれたのでした。

ジェイくんは、プレゼントはなにがいいのか
聞きたいと思っていたので、
うれしいけれども少し困ってしまいました。

サンタさんにしてもらったハグは、
とてもあたたかくて、とてもうれしくて、
なんだか、すごく優しいきもちになれました。

サンタさんは、ジェイくんを見つめてにっこり微笑みました。

ジェイくんは、サンタさんが伝えてくれたことが
少しわかったような、
でも、これでいいのか少しわからないような、
複雑な気持ちでした。

サンタさんは、優しくジェイくんの背中をなでると、
下を見るように指さししたのでした。

そこは、ジェイくんの家の真上でした。

見慣れた道があって、木があって、
自転車があって、車もあって、
ジェイくんが見慣れた毎日があるところでした。

サンタさんは、ママにハグしてあげなさいと言っているようでした。

なんでかわからないけれども、
やさしくてうれしくて、気持ちのよいハグは、
ママにしてあげたら喜ぶだろうと思ったのでした。

でも、そりからどうやって降りるのだろう?
どうしたらいいのか、少し考えていました。

ママのことをいっぱい考えたからか、
遠くからママの声がするような気持ちがします。

ジェイ、ジェイ、ジェイ。

呼ばれている方をみると、ママがいます。
それに、ベッドの上です。

サンタさんのそりから戻ってこれたのでした。

ジェイくんは、体を起こすとママにハグをしました。
なんだか、とてもうれしい気持ちになりました。

ママもぎゅっとハグをしてくれます。

それから、ママにサンタさんに会ったお話をしました。
それで、サンタさんにママへのプレゼントはなにがいいか
相談しようとしたのだけれども、
ママにハグしたらいいと教えてくれた。
なんて話を、止めどもなくしたのでした。

ママは、その話を聞いて、
何がほしいとも言いませんでした。

ただ、また強くハグをしてくれて、
サンタさんに会えてよかったねと言ってくれました。

ジェイくんは、ママにハグしてもらいながら、
とてもあたたかい、優しい気持ちになったのでした。

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